No.98(2009年7月号から)

経済危機がサミットの意義を回復した!

ラクイラ・サミットの特徴点


   イタリア中部のラクイラで7月8日午後開幕した主要国首脳会議(G8サミット)は初日に世界経済の現状が議論され首脳宣言が採択された。

 サミットはブッシュの単独行動主義でその役割が低下し意義を失っていたが、昨年秋のリーマンショック以後の世界同時不況の中でサミットの意義が回復することとなった。

 G8サミット首脳宣言の世界経済に関する骨子は以下の通り

(1)世界経済に安定化の兆しはあるが状況は依然として不確実で大きなリスクが引き続き存在している。
(2)需要を支え、成長の回復、金融安定のために必要な措置をとる。
(3)景気回復が確実になった際、危機対応の例外措置(財政政策・金融政策)を元に戻す「出口戦略」の必要性で合意。
(4)多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)の早期妥結に向けた決意を表明。

 首脳宣言が世界経済の現状を「株式市場の回復など安定化の兆しが見られる」としているが、これは時価会計の見直しなど会計上の策術の結果で、実体経済が回復しているわけではない。だからこそ「不確実で大きなリスク」を認めたのである。特に世界同時不況で雇用情勢が悪化し、各国で保護主義的動きが相次いでいる中で「保護主義を防ぐ」姿勢を改めて確認したことは重要だが実行が伴うかがカギとなる。

 ドーハ・ラウンドの早期妥結に向けた動きが現実のものにならないなら、世界貿易は減少し、世界同時不況が一段と深刻化する可能性がある。しかし農業問題の市場開放は、各国の階級矛盾を激化させかねない問題であり簡単ではない。

 北朝鮮の核・ミサイル実験や気候変動、テロ、「核なき世界」等の問題は、解決は難しく、いわばサミットの副題といった位置付けであり、サミットの中心課題が世界経済の安定にあったことは間違いない。

 アメリカの一極支配が衰退したとはいえ、サミットでは今回の信用危機を招くことになった問題、すなわちアメリカの新自由主義が投機を横行させ、マネーゲームを空前の規模としたこと、ドル支配を基盤とした国際通貨体制が一国だけがドル発行益を手にする秩序であり、アメリカが米国債を外貨保有国に売りつけドルを還流させる。つまり中国や日本が生産し、アメリカが消費する経済構造を変えなければ、通貨危機や信用不安は再び世界経済危機となって世界中の人々を苦しめることになる。

 アメリカが招いたマネーゲーム(投機)が原油や食糧の高騰を招き途上国に深刻な経済的打撃を与えたこと、また温暖化対策にしても発展途上国はこの問題を冷ややかに見ており、目標達成への調整は困難と言える。「2050年までに先進国全体で温室効果ガス80%かそれ以上を削減する」との目標値は空手形と見られかねないものである。

 世界経済が「不確実で大きなリスクを抱えている」にもかかわらず、アメリカ金融大手は、経営者に高額のボーナスを支給するために公的資金を返済した。したがって再び信用危機が悪化した時、アメリカは危機回避のために公的資金を注入できない可能性がある。

 つまりアメリカにおける信用恐慌が再発し、深刻化する可能性とその世界への波及、とりわけ日本経済の受ける打撃を見ておかなければならない。

 株価が回復したと言われるのと対照的に、失業者が増え続けていることの意味を見なければならないのである。つまり現在の株価は実体経済を反映していないのである。巨額の公的資金の注入で一時的に上昇しているにすぎない。

 アメリカが、他国に生産させ自国が消費するドル支配の身勝手な国際通貨体制の仕組みが終わり、投機が規制された修正資本主義の制度が整えられない限り信用危機は再発するのは必至である。

 今日の世界資本主義の危機は、ソ連崩壊後のサミットが「平和の配当」を合言葉に、福祉を削り、賃下げ進め、企業の高収益体制をグローバル化の名で追求し、結果マネーゲームを肥大化させ、バブル経済が大破綻したのである。

 我々は今、死滅しつつある資本主義の姿を目にしているのである。

 投機を引き続き容認するのか? 規制された資本主義を目指すのか? それとも真の社会主義へと進むのか? 人類の選択の時を迎えている。