No.97(2009年6月号から)

死滅しつつあるアメリカ資本主義の姿示す!!

GM破綻の意味するもの


   世界最大の自動車会社ゼネラル・モーターズ(GM)は、全世界に従業員24万3000人を雇用し、アメリカ国内の工場数は47も持っている巨大企業である。このGMが6月1日米連邦破産法11条の適用を申請し経営破綻した。米政府はすでに支援した約2兆円に加え、約3兆円近い追加支援をして、新生GMの株式の約6割を取得し、国有企業として立て直しを目指すことになった。

 GMの倒産は、巨大化して滅亡した恐竜に似ている。08年にトヨタに抜かれるまでGMは77年間も毎年世界最大の自動車販売台数を達成してきた。まさにアメリカのトップ企業である。

 GMは、日本車の輸出攻勢に直面した時に、なぜ消費者が日本車を好むか徹底的に研究すべきだった。彼らが取った手は米政府を使って日本政府に圧力を加え、日本の自動車業界にアメリカへの輸出を「自主規制」させたのである。彼らの自由競争は自分が競争に勝つ場合だけなのである。

 ソ連が崩壊したことで西側各国は「小さな政府」をスローガンにこぞって福祉を削減した。もはや社会主義の脅威は去ったと考えたのである。アメリカでは国家が福祉を負担しなくなり、GMは国家に変わって退職者の年金や医療費まで負担することになった。

 こうしてGMは製造業で赤字を抱え、これをカバーするための金融部門を拡大することになった。このことがサブプライム債権を発端とする金融危機(信用恐慌)の直撃をGMが受けることになるのである。

 今やアメリカは、銀行も証券も自動車会社も政府の救済を受けることになった。「小さな政府」は結果として「大きな政府」を招くことになった。アメリカの製造業は衰退を続け、ドル支配を基礎にした金融国家としてアメリカは変化し、国家も家計も借金で消費する寄生的な国家となった。

 アメリカは財務省証券(国債)を中国や日本やサウジに買ってもらわないと消費を続けることができない寄生的な経済となっている。つまり債務を覇権の武器とする歴史上まれなゆがんだ国家、それがアメリカの正体なのである。

 アメリカ経済は経済の50%以上を金融が占めるなど死滅しつつある資本主義の経済的特徴を示しており、その危機の深刻さはGMの国営化に示されている。

 「社会主義」の中国が民営化を進め、幹部が国の資産の横領を進めている。資本主義のアメリカは国営化によって負債を国民に押し付けている。どちらも私的利益のために経営形態を変更しているのである。アメリカ国民が連邦税の不払い運動に決起するのは当然の権利であるというべきだ。

 アメリカ経済は未だ回復しておらず、失業者は増加を続け、米企業は時価会計の見直しや、会計上の策術で経営の「回復」を演出している。アメリカの失業率は現在9.4%であり、これが10%を超えるのは避けられないとの見方が大勢となっている。

 アメリカ政府は5年以内にGMの投資を回収したいとしているが、世界で国有化により自動車メーカーの再建に成功した例は無いのであり、逆に国有化で公的資金の投入が膨らみ、泥沼化する可能性の方が高いといえるのである。

 新GMがめざす低燃費車で競争に勝てる保障は一つもないのである。特にGMは労組の力が強く、経営に介入する力を持っている。競争力の強化は労働条件の切り下げと不可分であり、労組の力が強いGMが競争力を強化するために賃下げや社会保障の切り下げを受け入れられるのか疑問が残る。

 GMの負債総額は1728億ドル(約16兆4000億円)である。破綻によって負債を削減しても、次世代の低燃費車が売れなければ、再び負債が膨らむだけとなるかも知れない。

 イギリスのロールス・ロイスが経営危機に陥って国有化したが再建に失敗して外国資本に買収され、イギリスの自動車産業は滅びた事実はGMの将来を暗示している。

 アメリカ経済は軍需産業の比率が高く、したがって戦争を継続することが命題となる。オバマがイラクとアフガン、パキスタンで戦争を継続しているのは、不況ゆえに戦争をやめられないのである。したがってアメリカ経済は、死滅しつつある資本主義の過程を脱することは不可能であることを指摘しなければならない。

 国家による巨額の公的資金の投入は、ドル崩壊を招く可能性を高めており、ドル安はアメリカの輸入物価の上昇を招き、アメリカ経済は長期不況のスパイラルに突入する可能性が強まっている。