No.97(2009年6月号から)

不祥事の経営責任は誰がとるのか?!

日本郵政社長人事めぐる確執


   日本郵政は「民営化」されたとはいえ、今も政府が全株式を保有する特殊な会社である。したがって不祥事があれば政府が介入するのは当然である。

 日本郵政の西川善文社長は、三井住友銀行頭取から社長に就任した。この社長再任をめぐって鳩山総務相が反対姿勢を強め波紋を広げていた。中川元幹事長は鳩山総務相に対し「内閣を去るべきだ」と批判している。鳩山総務相は「私は認可権限を行使して(社長再任を)認可しない」と明言、一方西川は「一定のところまでやらせていただくという責任感だけだ」と一歩も引いていない。

 日本郵政グループは09年度3月期連結決算で4227億円の最終黒字だ、しかしこれは各種手数料を大幅に値上げし、国民に付けを回した結果であり、また約20万人を超える非正規労働者の賃金を最低賃金ぎりぎりまで下げた結果にほかならない。

 これに対し、「かんぽの宿」をオリックスに売却しようとした手続きと価格の不明朗さや、障害者団体向け第3種郵便のダイレクトメール悪用を許し、さらにはかんぽ生命の保険金未払い(約23万件)など数多くの不祥事が表面化している。

 ゆうちょ銀行のカード事業で三井住友とゆ着して社長が出身企業の三井住友に便宜を図った問題もある。これらの責任は誰が取るのか?社長再任を認可しないとする鳩山総務相の判断は当然と言うべきだ。

 読売新聞によれば日本郵政は業務改善命令にも回答していないという。それなのに西川社長再任の人事案を早々と決めたのは手順としておかしい(読売新聞)という主張もある。

 波紋が広がったのは、西川おろしが民営化つぶしではないのか?と小泉元首相等民営化推進派政治家の警戒感を強めたからである。

 麻生内閣を揺さ振って兄の政権取りを応援する鳩山兄弟の戦略説から、総選挙後の「兄弟再編」説まで出ている。

 鳩山総務相があえて強硬な態度を取る狙いに注目が集まっているのである。しかしそうした政治的狙いがあったとしても西川社長の下で数々の不祥事が発生したことは事実であり、その責任を問う鳩山総務相の態度は評価されるべきである。

 財界出の社長であるからと言って、私的利益誘導と取られかねない数々の不祥事は責任をあいまいにしてはいけないのである。

 今の財界はキヤノン出身の御手洗経団連会長の私的な巨額の裏金作りの発覚など、拝金思想に取りつかれた人物が多すぎる。財界人であるなら刑事事件も逃れられるのなら、民主国家の名がすたるというものだ。財界出身者であろうと不正は不正と咎めることができなければならない。

 ダイレクトメールの郵便不正事件では逮捕者も出しているのである。日本郵政が多くの不祥事の責任をあいまいにして西川社長の再任を決める事に国民がいかがわしさを感じるのは当然で、政府はこの人事問題の処理を誤ると夏の総選挙で国民の手強い反発を受けることになるであろう。消えた年金問題においても誰も責任を取っていないのであるから、自公政権のこれ以上の中途半端な処理は許されないのである。

 ところが6月12日麻生首相と会談した鳩山総務相は、日本郵政の西川社長の更迭要求を受け入れなかったとして辞表を提出した。麻生首相は西川社長の謝罪を条件に続投を受け入れるように鳩山総務相に求めたが拒否されたのである。

 鳩山の言い分は「西川氏は国民の財産をかすめ取ろうとしたのだから、国民に謝罪すべきだ」と言うものであり、日本郵政の不祥事の経営責任は誰がとるのか注目している国民の目には、鳩山の言い分の方がわかりやすい。鳩山によれば麻生は最近まで西川更迭で一致していたという、ところが財界の圧力でブレたのである。

 財界の人間は犯罪の罪は問われないのか?と国民は思うだろう。西川の「自己処分」にだまされてはいけない。

 これではキヤノンの御手洗(日本経団連会長)の裏金作りの犯罪が不問となったことと同じではないか?!  麻生は、一度は「民営化反対だった」などと言ったが、結局民営化推進の西川社長を支持したことで、郵政民営化は国民の財産を財界が奪い取ることだということがより鮮明になり、多くの国民の不信を買うはめとなった。

 鳩山は筋を通して男を上げ、総選挙前にフリーな立場を確保したことになる。つまり政局の流動化がまた一歩進んだと言うべきだ。