No.96(2009年5月号から)

主戦場になりつつあるパキスタン

失敗しつつあるオバマの反テロ戦争


   昨年ブッシュ米政権がイラクに増派したことで、アメリカの戦局の焦点はアフガンに移った。そのアフガンでタリバンが勢力を回復するや、オバマ政権はアフガンの米兵を増強し、ザルカイ・カイライ政府を支援して、戦争のアフガン化を進めていたのである。ところが今度は、アフガンへの補給路であるパキスタンが混迷を深めている。

 パキスタン北西部の部族地域はイスラム原理主義の力が強く、同地域へのイスラム法導入を条件に一度はパキスタン政府との間で和平協定が成立した。しかしアメリカ政府がパキスタン北部がタリバンなどの拠点化にすることを恐れ、「失望した」「一つの国に二つの司法制度は容認できない」(米政府)と非難し、強硬策を要求した。その見返りとしてアメリカは日本政府と共にそれぞれ50億ドル(約5000億円)ずつ資金を出し、パキスタン政府を支援し、和平を放棄させたのである。この結果武装勢力の軍事攻勢が強まったのである。

 パキスタンでは、すでに北西部戦闘地域から避難民45万人超が脱出し難民となっている。パキスタン政府は援助ほしさに原理主義勢力との内戦に出たが、アルカイダとタリバンは戦線の拡大をむしろ歓迎しているであろう。

 パキスタンでは、先にムシャラク大統領が、アメリカへの協力で大衆の信頼を失い、政権が崩壊している。ザルカリ大統領はそれを知るゆえに和平協定に署名したのだが、大国の介入が原理主義勢力との戦闘へと進ませることとなった。

 アフガンでは米軍機が5月5日に住民120人以上を誤爆で殺し、人々の反米感情を強めている。まるでアメリカがゲリラ戦士を創出しているようなものである。今後の戦争の展開しだいでは核保有国のパキスタンが原理主義に支配される可能性すら心配しなければならなくなるであろう。

 パキスタン北西部の部族地域はパキスタン政府の統治が及ばない山岳地帯であり、この旧来の部族の長老による部族社会は武装勢力の拠点化によって変化しているであろう。

 パキスタンは昨年秋の世界的金融危機の影響で債務不履行の危機に直面し、IMFやアメリカ、日本の支援が頼りであり、それゆえ武装勢力との戦闘を選んだのである。

 オバマ政権がアフガンへの米軍の増派で、アルカイダとタリバンをせん滅しようとしているのに対し、逆にその補給ルートのパキスタンが内戦化しつつあるのだから皮肉であり、ちょうどベトナム戦争時のカンボジアとよく似た状況が、今のパキスタン情勢と言える。

 オバマのアフガン戦略は、イスラム原理主義の柔軟な戦略の前に失敗が現実のものとなりつつあることを知るべきである。

 アメリカと日本は、パキスタンにも派兵するのだろうか?