No.96(2009年5月号から)

海賊対処法案による海外派兵の企み反対!

米軍との集団的戦争狙う自公政権


   4月23日海賊対処法案が衆院本会議で自民・公明両党の賛成で可決された。民主党は今後の参院審議を引き延ばさない方針で、海賊対処法は今国会で成立する見通しとなった。イラク派兵に続いて口実さえあれば自衛隊を海外派兵しようとする政府・与党の既成事実作りがあからさまになってきたことに注目しなければならない。

 東アフリカ・ソマリア沖の海賊対策は本来警察活動であり、海上保安庁の大型巡視船で十分対応可能なものである。

 北朝鮮の不審船ですら巡視船で対応してきたのであり、ソマリアの海賊は武装した漁民であり、自衛艦の重装備よりは巡視船の軽装備の方が対応しやすいであろう。

 浜田防衛大臣は4月17日海上警備行動に基づくアフリカ・ソマリア沖の海賊対策のため海上自衛隊のP3C哨戒機2機のジブチへの派遣を指示した。このP3Cは本来潜水艦対策の機体であり、漁船にP3Cとはいささか疑問に思われる人も多いだろう。しかもこのP3Cの警備として陸上自衛隊員約150人も派兵される。すでにソマリア沖には護衛艦2隻、近くには給油活動中の護衛艦と補給艦がいる。

 「鶏を割(さ)くにいずくんぞ牛刀を用いん」との言葉もある。小さな漁船の海賊対策に、ミサイル護衛艦やP3Cが必要とも思えない。

 海賊を口実にとにかく海外派兵の実績をつくろうとの意図が露骨であり、自公政権の海外派兵重視の政策はアメリカの意向に沿うものであり、国家戦略も無く日本を危険な戦争国家へと導く可能性が強く、とても支持できるものではない。

 日本の巡視船はヘリコプターを搭載した3500tクラスの外洋型大型船が多数あり、ソマリアへの派遣に十分対応可能なのである。したがって今回の派兵は海賊対策を口実にした自衛隊の海外派兵の既成事実作りが狙いであることは明らかだ。護衛艦に海上保安官を乗せるなら、巡視船の派遣で事足りたのである。

 アメリカの一極支配が揺らぎ、「同盟国」日本の軍事力を使おうとの意図が出てきている時に、対米追随一辺倒の自公政権は、自衛隊の海外派兵に躍起となっている。

 対米自立の無いまま、海外派兵を進めることは、将来自衛隊はアメリカの先兵とされかねないであろう。ましてやオバマ米政権は「息継ぎの和平」へ舵を切り、和平のための話し合い路線を進めている。

 自公政権はアメリカの共和党政権時のままの外交を進めている。自己の戦略も無ければ、アメリカの変化にさえ対応できない愚かさである。

 今回の海賊対処法案の重要な点は、海上警備行動の対象を日本の船から「すべての船舶」に拡大したこと、海賊船への「射撃」を容認していること、国会への事後報告でよいこと、この3点が特徴である。

海賊に名を借りて海外派兵の既成事実を一歩一歩拡大しようとする政府の意図はどこにあるのだろうか?麻生首相は4月23日、安倍政権下で設置されていた「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の座長だった柳井俊二元駐米大使と首相官邸で会談し、同懇談会が昨年まとめた集団的自衛権の行使容認を求める提言について説明を受けている。

 この提言は福田首相(当時)に提出されていたが棚上げされていたものである。このことは麻生首相が政府の憲法解釈で禁じられている集団的自衛権の行使を容認することに前向きの姿勢を示したものである。そしてこの集団的自衛権の解釈改憲はアメリカ政府から一貫して要求されてきたものである。政府が集団的自衛権の行使を合憲との立場に変える事は、自衛隊が米軍と共同軍事介入に踏み出す事なのである。こうした政府の動きの背景には、日本企業が近年海外進出に力を入れ、海外市場における経済権益を拡大してきたことがあり、この権益を動乱や政変から保護したいとの要求と、そのためにはいつでも海外派兵できる体制を作りたいとの願望の高まりがある。

 対米追随一辺倒の自公政府は、明らかにアメリカの手先として自衛隊を米戦略に差し出す方向に進んでおり、この道はアメリカとの集団的戦争路線そのものなのである。したがって日本の平和主義の立場から対米自立を求める我々は、絶対に認めることはできないものである。