No.95(2009年4月号から)

北朝鮮のミサイル発射の馬鹿騒ぎ

軍事的脅威で日米の支配・従属関係の維持計る。


   北朝鮮政府は3月12日人工衛星「光明星2号」を運ぶロケット「銀河2号」を打ち上げると国際民間航空機関(ICAO)や国際海事機関(IMO)などに対し通知したことを公表した。北朝鮮はミサイル実験が国際的批難を招くことを承知しているため、人工衛星と発表することで批難を回避したのである。

 新聞報道では、北朝鮮にはイラン代表団が訪問中であったという、このことは北朝鮮がイランなど中東諸国にミサイル売却や核技術の売却を考えていることを示している。アメリカのオバマ政権の危惧も中東諸国に核とミサイルが拡散することにある。

 4月5日に北朝鮮はロケット発射準備に入ることを発表し、翌6日午前11時30分太平洋に向けて発射した。日本政府の北朝鮮のミサイル発射に対する反応は過剰なものであった。情報を全国の自治体に流し、日本の国民を脅し、ありもしない脅威を演出し、まるで有事の大軍事訓練と言えるものとなった。

 東京や秋田などにミサイル防衛のPAC3の発射台まで展開し、てまるで“北朝鮮ミサイル発射狂想曲”とでも表現すべき馬鹿騒ぎであった。それは支持率の低迷する麻生政権が国の安保体制における危機管理を演出することで支持率アップを狙ったものであった。ところが誤探知の失敗をしたことで逆に御粗末さを露呈したのである。

 アメリカの発表によれば北朝鮮の「人工衛星」は軌道には乗らず失敗した。しかしテポドン2ミサイル自体は、前回の飛距離を大幅に上回った。金正日将軍の狙いは、自国の核能力とミサイルを見せることで、オバマ米政権との直接対話に道を開くことにある。しかしこの交渉カードは逆に制裁を招きかねない瀬戸際外交であるが、北朝鮮は、二正面作戦を回避したいアメリカの弱みを計算ずくで行動しているのである。また北朝鮮は最高指導者の世代交代の時を迎えており後継の世襲に向けて国威を発揚する狙いもあった。

 北朝鮮のミサイル発射は、日米安保体制の必要性を日本国民に見せつけることになるので日米両政府にとっても悪いことではなかった。在日米軍を「日本軍国主義のビンのふた」と位置付けるアメリカや中国にとっても北朝鮮の反日姿勢は好ましいのである。

 オバマ政権は中東・アフガン重視であり、イスラエルの安全のためには北朝鮮が核とミサイルの拡散さえしなければ援助を与えてもよいと考えている。北朝鮮の核とミサイルはアメリカが日本を従属下におく上で口実となるものである。

 麻生政権にしてみれば、西松建設の政治献金問題の陰謀で小沢民主党の解体をめざしたが、十分な成果を挙げられず、自民の支持率回復も十分ではなかった。そのような時に北朝鮮のミサイル発射問題であり、麻生は危機管理能力を示すことで支持率回復を計ろうとしたのである。その結果日本列島全体がミサイル警戒の戦時体制となった。ミサイルが上空を通過する東北地方ならまだ理解できるが、関西や中国地方まで大騒ぎするのは過剰反応である。しかしその馬鹿騒ぎも、周辺国の関心の低さから日本の空回りとなり、北朝鮮への制裁も、日本だけの1年延長では効果は期待できない。

 北朝鮮は核保有の上に運搬手段をある程度持つことを示したことで戦略的地位を高めることとなった。今後北朝鮮はアメリカとの交渉で有利なカードを保持したのである。これと対照的なのが日本の外交的無力である。国連の安保理で北朝鮮に対する新決議どころか、中国・ロシアの反対で議長声明となり、何ら成果がなかったのである。拉致問題も未だに解決の糸口もつかめずにいる。これは対米従属という日本の弱い立場が反映したものでアメリカ追随一辺倒の従属外交の結果というべきである。

 北朝鮮はこれまでミサイル発射や核実験の度にアメリカから譲歩を引き出し、「成果」を得てきた。半島国家特有の巧みな外交は時に「瀬戸際外交」と評されてきたのである。

 北朝鮮の軍事的脅威とりわけ核とミサイルの脅威は、日本に対するアメリカの核の傘を正当化し、日本の対米従属を当然のように人々に受け止めさせてきたのである。

 アメリカは在日米軍基地の維持のために北朝鮮の反日姿勢と核とミサイルを最大限利用してきたのである。つまり北朝鮮のならず者のような武力外交とアメリカの日本属国化は、表裏の関係にあるのである。

 北朝鮮の孤立化による半島の現状固定化は、アメリカと中国の暗黙の合意なのである。その目的は世界第2位の経済力を持つ日本を自立させない事である。つまり拉致問題の解決を引き延ばしているのは、日米の支配・従属関係であり、そのための北朝鮮の現状固定化であることを指摘しなければならない。対米自立こそ拉致問題解決の近道であることを知るべきである。