No.95(2009年4月号から)

オバマのアフガン新戦略

出口見えない折衷主義的侵略継続案


 オバマ米大統領は3月27日に、アフガニスタン包括的新戦略を発表した。同戦略はその目的を「国際テロ組織アルカイダなどの排除」におき、ブッシュ前政権の軍事中心の戦略から、民生支援に重点を置いた現実路線に転じたものとなった。

 これまでのアフガン派兵米軍は約38000人だったが、オバマは今年2月にアフガンへの約1万7千人の戦闘部隊を増強することを発表しているが、今回それとは別にアフガン政府軍や警察の訓練要員として米兵4000人の追加派兵を発表した。

 またアルカイダやタリバンが根拠地としているパキスタンを重視し、無人攻撃機の増強とパキスタン政府の統治能力を高めるため、少なくとも年間15億ドル(約1500億円)の経済支援を打ち出している。

 アメリカと同じようにアフガンに派兵しているNATOの欧州諸国は、アフガンから早期撤収の道筋をつけたいと考えており、なお勝利を追求するアメリカとの認識の違いが表面化している。当面NATOは8月のアフガン大統領選に約5000人の増派で合意したが、これはアメリカが求めた恒常的な増派ではない。

 オバマはアフガニスタンとパキスタンを担当範囲とする特別代表にリチャード・ホルブルック元国連大使を任命し、タリバンとの交渉をも考慮しているようだ。ホルブルックは「アフガニスタンでの戦闘がうまくいっていると言える者は誰一人いない」と語っており、パキスタンの安定や、もう1つのアフガンへの補給路としてのロシアや中央アジア諸国との外交に当たると見られている。

 このように見るとオバマ政権のアフガンへの兵力増強はタリバン穏健派との「和解」を展望したものであり、同時に8月の大統領選に向けて民生支援と、国軍と警察の育成で治安を安定させようとするものである。これはベトナム戦争で失敗した、いわゆる戦争のアフガン化を狙うものである。

 経済危機に直面しているアメリカにとって本来の「息継ぎのための和平」とは、イラクとアフガンからの全面撤兵が望ましい、ところが折衷主義的思考のオバマは軍事一辺倒のブッシュと全面撤兵の中間の政策を選んでいる。

 オバマは、イラク撤兵と言っても、今後もイラクに最大5万人の兵力を長期に駐留させるように、中途半端なものであり、とても成功するとは言えず、イラクのカイライ政権の展望も明るいとは言えないのである。

 このアフガンへの増派のためにアメリカの国防費は前年度4%増となっており、巨額の軍事費の削減が必要な時だけに、いかにも中途半端な戦略と言えるのである。

 イラクにおいても、アフガンにおいても「武装勢力の掃討」と称して地元の住民を空爆し続け、現地の住民に米軍への憎しみと怒りを強め、結果的に反米勢力を強化し戦争の泥沼化を招く結果となっているのである。それなのにオバマ政権は誤爆の多い無人攻撃機の増派を発表している。これではいかに民生を重視しても失敗する可能性は高いと見なければならない。

 尊重されなければならないのはアフガンの民族自決権であり、それを踏みにじる米軍はアフガン人民とパキスタン人民の強い怒りを巻き起こしている。米軍がアフガンに留まる限り、パキスタンの安定はなく、イスラム過激派の力を増大させる。紛争の泥沼化は現地人民の武装勢力化を促すだけと知るべきだ。ゲリラ戦においては、地域住民とゲリラとの区別は付かず、必然的に皆殺しの掃討戦となるのであり、したがって反米の民意は日ごとに強まることになる。

 日本政府はアメリカに追随してカイライ警察の半年分の給料の援助を申し出て、対米従属の姿をさらけ出している。

 オバマの描く掃討作戦とタリバンの懐柔策は両立せず、タリバンの取り込みは困難と言わざるを得ないのである。つまるところオバマのアフガン新戦略は、ブッシュの戦略に外交と援助を加えただけの中途半端な戦争のアフガン化であり、勝利の展望も、出口戦略も見えないままなのである。

 アメリカの深刻な金融危機に対する軽視がオバマ政権の折衷主義的戦争継続の戦略に反映していると見るべきかも知れない。今のアメリカに必要なのは、徹底した「息継ぎのための」和平戦略であり、アメリカ経済の局面は軍事的消耗が許されるような事態ではないのであり、オバマの折衷主義的思考がアメリカの経済再建の失敗を招く可能性を見ておくべきである。