No.95(2009年4月号から)

ドル基軸通貨に異議出たが展望なし!?

国際金融サミットG20


   4月1日からイギリスのロンドンで開かれたG20で、多額の借金を抱えるアメリカのドルに対する懸念が表面化した。同会議の議長であるブラウン英首相は、記者会見で「古いワシントンコンセンサスは終わった」と述べ、アメリカ主導の国際金融支配が幕を閉じたとの見解を表明した。

 ロシアは、2日に発表した声明で地域通貨を強化する目的で、新たな準備通貨の創設の検討を提案した。また中国の胡錦濤国家主席は「主要準備通貨の為替相場の安定性維持と、多様な国際通貨制度の開発が必要」と発言し、ドル依存への見直しを訴えた。これに対しオバマ米大統領は「ドルは現時点で極めて強い(通貨だ)」と強弁した。

 しかし実際にはドルは危ういのである。アメリカ政府は自国の銀行・保険会社を救うために連銀にドルを印刷させ、交換に国債を引き取らせて資金を調達している。これはインフレ政策であり、やがてドル暴落を招くことになりかねない。しかもアメリカ政府が巨額の税金を注入して金融機関を救済していることに、アメリカ国民は怒っており、全米で「連邦政府に税金を払わない」との納税拒否の運動まで広がっている。

 ドルは今のところ唯一の基軸通貨であり、大量のドル資産を保有している中国・日本・中東産油国は、いずれもドル暴落を心配している。もしもアメリカ国民の納税拒否が広がるなら、アメリカ国債の償還が危うくなり、国債を誰も買わなくなり、財政破綻する可能性がある。

 アメリカがG20で各国に計5兆ドル(約500兆円)の財政出動を求めたのは「景気対策」だが、同時にドル暴落を避けるためでもある。G20では世界経済を回復させる時期について「遅くても2010年まで」としたが、これはいわば願望であり、根拠があるわけではない。

 ドイツやフランスが財政出動に当初反対したのは、ユーロの下落を心配したためである。今のところ日本経済が輸出依存であったため今年度の成長率がマイナス5.8%と深刻で、ユーロも弱いままであり、ドルと基軸通貨を競う力はどこにもない。つまりドルは崩壊しつつあるが、それに代わる基軸通貨がないのである。つまりは、ドルがいつ暴落するかわからない状況で世界貿易が拡大に向かうわけがないのである。

 G20の各国が国債を発行しておこなう総額500兆円の財政出動は、大恐慌の危機を一時的に先送りできても、金融危機の根本的解決にはならない。これは、まるでタコが自分の足を食べているようなものである。しかもヘッジファンドの規制も決まっていないし、米金融資本の不良債権は今も拡大し続けており、失業率はすでに13.5%にまで増えている。

 オバマは財政危機の中で最新鋭ステルス戦闘機F22の調達中止やミサイル防衛(MD)経費などの削減を発表している。産軍複合体の経済も冬の時代に入ったようだ。

 アメリカは“失われた10年の道”に入りつつあり、世界経済は機関車役不在の中で貿易縮小の道に入りつつある。

 アメリカもEUも日本も、政治が硬直化しており、ヘッジファンドの規制もできず、既得利益集団のための救済策であり、国民がカジノ経済で大儲けした連中の救済に反対する状況が生まれている。アメリカ自動車大手のGMやフォードのように倒産や合併以外に再生の道がないほどにアメリカ経済は矛盾を蓄積している。

 世界経済の見通しは混迷の可能性が強く、経済不況の長期化は政治危機を招く例が多く、内乱や紛争につながる可能性がある。したがって現状では新世界秩序など望めず、当分の間は混迷が続くと見ておくべきである。