No.94(2009年3月号から)

在日米軍の存在意義を認識させる北の役割

北朝鮮テポドン2発射準備の狙い


   北朝鮮が長距離弾道ミサイル「テポドン2」発射準備を進めている。北朝鮮は「準備を進めているのは人工衛星打ち上げのロケットだ」と主張している。

 北朝鮮は、アメリカが深刻な金融危機にあること、民主党政権に変わってアメリカの戦略が「息継ぎの和平」に転換したことに期待して、アメリカとの国交正常化のチャンスと見ている。一方アメリカは、2月13日にヒラリー・クリントン国務長官が講演で「北朝鮮が完全かつ検証可能な形で核兵器計画を放棄する用意があるなら、アメリカは北朝鮮との関係正常化と経済支援・朝鮮半島の休戦協定に代わる平和条約締結に前向きに取り組む」ことを表明した。

 オバマ政権にとって外交の中心は中東、とくにイラン・アフガンであり、北朝鮮とは話し合いで解決したいと思っている。こうした中で北朝鮮があえてテポドン2の発射準備を進めている狙いは、アメリカとの交渉カードであり、最高指導者の世代交代が近いので国威発揚も狙っている。

 さらにもう1つ重要な狙いを見ておかなければならない。これまで北朝鮮がミサイル発射をする時は、アメリカが対日要求を実現したい時であった。例えば、かつてアメリカが日本にミサイル防衛の導入を求めていた時、北朝鮮がテポドン1号を発射し、ミサイルは日本領空を通過し日本の太平洋岸近くに落下した。日本政府は驚いて1兆円以上するミサイル防衛の導入を決めたことがある。またアメリカが在日米軍再編の費用3兆円の負担を日本に求めていた時も北朝鮮はミサイル7発を発射した。この時も日本政府がアメリカの要求を受け入れると北朝鮮はごほうびとして、エネルギー支援や経済支援、食糧支援をアメリカから受け取ることになった。

 現在アメリカは金融・経済危機にあり、10会計年度の財政赤字は約1兆7520億ドル(約172兆円)に達し、日本政府に米国債を少なくとも数十兆円を買わせようとしている時である。つまりアメリカは日本を従属下に置き、国家予算を略奪するため、北朝鮮の核保有とミサイル発射を利用して日本に対して在日米軍を必要なものと認識させるとともに、中国などアジア諸国には、在日米軍が日本軍国主義を抑える“ビンのふた”として必要と思わせてきたのである。

 北朝鮮はこの米日の支配・従属関係を利用して、その戦略の「敵」として協力し、アメリカから援助を引き出してきたのである。

 ブッシュ前政権が北朝鮮の核施設の多くが未申告であったのに、テロ国家指定解除をしたことを日本国民は忘れてはいけない。「拉致はテロである」「拉致を忘れない」と語りながら、拉致を忘れたのはアメリカであった。

 今回の北朝鮮のテポドン2の発射準備の狙いが、日本の米国債購入やアフガン貢献を引き出すためであり、それが実現すれば北朝鮮は三度アメリカから援助を手に入れることになる。

 北朝鮮の多くの未申告核施設の検証をせずして、どうして「核の無能力化」と言えるだろうか? 6ヵ国協議は茶番劇なのである。アメリカにとって、反日の北朝鮮の延命は、米軍が日本に居座る上での必要条件なのである。したがってアメリカは北朝鮮の非核化を本気で進める気はなく、北朝鮮も核を自ら捨てる気はまったくないのである。

 こうした米・日の支配従属同盟と北朝鮮との相関関係の下では拉致問題の解決は難しいのである。日本国民は、国と国との約束を都合よく忘れる国との同盟など役に立たないことを肝に銘じなければならないのである。対米自立なくして拉致問題の解決はないと見ておくべきなのである。