No.93(2009年2月号から)

貢献の名で日本の国家予算の略奪狙う!

日本重視のオバマ米政権


   オバマ大統領は、就任演説でアメリカに敵対的な国家に対して「こぶしを開くなら、手を差し伸べる」と語った。またヒラリー・クリントン国務長官は、2月13日の演説で「ここ数年、我が国の政府はしばしば、現実を吟味し他者の意見を聞かずに、反射神経的に行動してきた。オバマ大統領と私が約束する外交は、衝動的なイデオロギー色には基づかない」と語った。

 要するにオバマ政権は、反テロ戦争とイラク戦争さらには信用バブルの崩壊で傷ついたアメリカの国力を回復する「息継ぎのための和平」を追求する政権なのである。それゆえに「多国間協調」がオバマ政権の基調なのである。

 2月16日に訪日したヒラリー・クリントン国務長官の目的は(1)2月24日のワシントンでの日米首脳会談の発表(2)沖縄駐留海兵隊のグアム移転に関する協定に署名(3)アフガン・パキスタン・北朝鮮・中国など外交での日米協調(4)国際的な経済危機に協調して取り組むこと等である。

 クリントン国務長官は、中曽根外相と会談後の共同会見で「外国の首脳として最初にホワイトハウスを訪れるのが麻生首相になる」と述べた。アメリカ政府が麻生首相を重視するのは、アメリカが2月10日に発表した最大2兆ドル規模に上る金融安定化策が、「具体性に乏しい」ことから市場の失望を買ったことと無関係ではない。

 FRBが資産担保証券の購入を通じて最大1兆ドルの資金を供給するのはインフレ政策であり、ドルの信認の低下は避けられない。しかも公的資金の残りを使い果たすのは時間の問題で、次の資金は日本や中国やサウジに米国債を売却するしかない。しかし紙切れに等しい米国債を買いそうな国は、日本ぐらいしかないのも事実であり、したがってアメリカ政府はホワイトハウスへの1番の客として麻生を選んだのである。つまり麻生の24日の訪米は日本にとって極めて高く付くことになる。

 つまりオバマ米政権が新しい金融安定化策を実施にうつすには、日本に米国債を押し売りするしかないのである。日本はドル崩壊が避けられないと分かっているのに米国債を大量に買えば、それはアメリカと“心中”する路線であり、さりとてアメリカの危機を放置すれば巨額のドル資産を失うことになる。

 これは究極の選択だが対米追随一辺倒の自民党政権では、オバマの言いなりで日本の国家財産を略奪されることになるのは確実である。

 クリントン国務長官と中曽根外相との間では「沖縄駐留海兵隊のグアム移転に関する協定」が署名された。09年度の政府予算案に計上された日本の経費負担346億円のうち、202億円が米海・空軍の施設の整備にあてられる。沖縄と関係のない施設に日本の資金が使われるのだから、今後日本の財政支出は拡大する可能性がある。

 元々沖縄の米海兵隊司令部のグアム移転は、中国の対地ミサイルを回避するためであり、日本が移転費を出すべきものではないのである。また、たとえ日本の提供する資金の目的外の使用を禁止する協定を結んでも、日本にはその使途を検証できないのであるから、これは日本の国家予算のアメリカによる略奪と言うしかないのである。

 北朝鮮問題を日米間の関係から見ると、アメリカが日本から資金を引き出す時に限って、北朝鮮がミサイルの発射をする。これは決して偶然ではない。今回も北朝鮮がミサイル発射の動きを見せている。

 アメリカは国債の購入、グアムの米軍基地建設費、アフガンへの貢献で日本の国家予算を狙っているのである。

 麻生訪米に向けて鮮明にさせておくべきは、1990年代のアジア金融危機の時と違って、今回はアメリカが金融危機であり、したがって日米の立場は逆転している。しかも信用恐慌によって、アメリカは巨大な軍事力を支える金融的基礎を失いつつある。アメリカの軍事対応能力も衰退を免れない状況にある。

 すでに世界の主要産油国の多くが反米国家となっている。イラク戦争とヘッジファンドの投機によって高騰した原油価格は、皮肉にもイランやロシアやベネズエラなどの反米国家を強化したのである。

 注目すべきは、オバマに対する米国民の期待の大きさと比べ、実際にオバマ政権の直面する危機対応能力の低さを見れば、早晩米国民の期待は失望へと変わる事になる。日本は対米追随を見直すべき時が来ているのである。