No.92(2009年1月号から)

イスラエル軍のガザ空爆・占領糾弾!

ハマスをせん滅し、ヒズボラとの挟撃回避計る


   イスラエル軍は、12月27日にパレスチナ自治区ガザに対し大規模な空爆に踏み切った。この空爆は1週間続き、パレスチナ側の死者は500人を超えた。1月3日には地上軍約1万人と戦車・装甲車数百台でガザへの侵攻を開始した。

 報道によればイスラエル軍はガザを南北に分断・占領しハマスの武装勢力の解体を目指しているようである。空爆の標的もハマスの拠点や幹部の自宅であり、攻撃の狙いがガザを支配しているハマスのせん滅にあるのは間違いない事である。

 イスラム原理主義ハマスは、ガザ住民の根強い支持を受けており、イランの支援を受けている。ハマスは今回の空爆開始前にイスラエルと48時間の停戦協定を結んでおり、空爆時には油断して集会中に不意を衝かれて多くの死者を出している。空爆の死者530人の内4分の3がハマスの関係者であったことが、イスラエルの騙し討ちにあった事を示している。

 イスラエルは2006年夏のレバノン侵攻でのヒズボラとの戦争でNATO軍を国境に引き入れることで停戦に持ち込んだが、この時ヒズボラせん滅には失敗している。

 今回イスラエル政府がハマスせん滅を目指したのは、北のヒズボラと南のハマスという腹背に敵を受ける事態を回避し、とりわけハマスのミサイル攻撃を停止しなければ、今年2月の総選挙で与党(カディマと労働党)が勝利できないからであった。

 ハマスの戦略は、ミサイル攻撃でイスラエル軍をガザに侵攻させ、ゲリラ戦の“ドロ沼”に引きずり込み、オバマ米大統領の就任後の中東和平を失敗させる狙いがあった。イスラエルにしてみれば、中東和平を進めるオバマの就任前にハマスのガザ支配を終わらせたかったという事である。

 今回のパレスチナ戦争は、アメリカの政治空白の下で、双方の戦略のぶつかり合いの中で起きているのである。和平推進派のパレスチナ自治政府のアッバス大統領(ファタハ)の任期が今年1月9日に終わった。選挙をやればパレスチナ人民に人気のない和平派のアッバスは負けるので、選挙をやらずに大統領ポストに居座る方向であり、イスラエルにしてみれば軍事力でハマスを解体し、和平派のアッバスにパレスチナを支配させたいのである。

 ハマスがイスラエルの空爆と占領を「ガザ大虐殺」と宣伝しているのは、パレスチナ西岸とアラブ人民の支持を引き出し、とりわけイスラエル北部と接するレバノンのヒズボラ(イスラム原理主義)ならびにシリアとイランをこの戦争に引き出せば勝てるし、エジプト人民の支持拡大を計れるとの読みがある。

 イスラエル側も、ハマス側も、アメリカの新大統領が和平推進派であることを計算して、ブッシュ政権の間に戦争に打って出たということである。2006年のヒズボラとの戦争と違うのは、ハマスの後のエジプトは、親イスラエルであり、レバノン戦争の時のシリア・イランからヒズボラが補給を受けたような支援が、ハマスには望めない事である。しかしイスラエルのパレスチナ住民に対する無慈悲な攻撃がアラブの人々の怒りを掻き立てて、イスラエルと国交を結ぶエジプト政府やヨルダン政府に人民の攻撃の矛先が向かう可能性を見ておかなければならない。

 戦争というものは、それを企てる者の計算通りには運ぶものではない。むしろ企てた者の意図とは逆の方向に展開することが多いのである。

 ブッシュ共和党政権が、民主党のオバマ新大統領に外交面で難題を押し付け、和平路線を頓挫させるためにイスラエルをそそのかした可能性もある。アメリカは政権移行期の政治空白なので陰謀がやられやすい局面ではある。

 ガザ戦争と関連して北部戦線のヒズボラやシリア、イランの動向、とりわけエジプト国内の動向が注目される。

 インド・ムンバイのテロにパキスタンが関与していたとするインド政府と、テロ犯の引渡しを拒否しているパキスタン政府の間の対立も、戦争に発展する可能性があり、またアフガニスタンへの米軍3万人増強に対抗して、原理主義勢力(タリバン)がパキスタン北部への浸透を強めて争乱が激化しかねない状況にある。イスラエルがイランの核開発を空爆で阻止する可能性もあり、中東(=イスラム圏)は2009年も“世界の火薬庫”であり続けることは間違いないであろう。

 中東の不安定化は、原油価格の上昇に利益を持つ者にとっては歓迎すべき事である。パレスチナ紛争の激化の背景には、アメリカの政治空白の下で、様々な利害が関係していることを見ておくべきである。

 糾弾されるべきは、口実さえあれば、無力なパレスチナ人民を空爆し、戦車で踏みにじり、彼らを難民化し、併合によって領土を拡大するユダヤ人のシオニズム=大イスラエル主義である。

 ユダヤ人は、自分達がかつてのヒトラーのように、空爆と戦車で虐殺に手を染めていることが、イスラエルの国際的孤立を招き、国家を危うくすることを自覚すべきである。