No.91(2008年12月号から)

対米追随一辺倒を転換する好機!!

欧米襲う大景気後退


 世界の金融損失が約550兆円に達するとの試算が発表されている。

 11月15日のG20の緊急首脳会合では「より緊密で広範な政策対応」の必要性で合意したが具体化は今後の課題である。

 12月3日に米連邦準備理事会(FRB)が発表した地区連銀経済報告は「家具や家電など高額商品の売り上げが落ち込んだ」として全米での景気悪化を指摘した。

 金融危機による信用収縮で自動車ローンや消費者ローンが機能しなくなり、雇用不安も広がって内需の柱である個人消費の不振が決定的になった。

 アメリカ経済は2007年12月から景気後退局面に入り、現在二番底に沈みつつあると言われている。地区連銀の総括判断は「経済活動は全域で弱まった」と指摘しており、金融危機の影響が実体経済全体に波及しつつあり、景気後退の深刻化は避けられない情勢となった。

 このため10月のアメリカの失業率は6.5%と悪化し、今後8%から10%台まで上昇すると見られる。

 オバマ次期政権で国家経済会議(NEC)委員長に就任するサマーズ元財務長官は、12月1日声明を発表し「景気後退は一段と加速している」と述べた。(日経新聞)  全米経済研究所のジェフリー・フランケル米ハーバード大教授は12月1日にテレビ出演し、今回の景気後退について「おそらく深く長いものになるだろう。戦後最長となる可能性もある」との厳しい見通しを語った。(読売新聞)  欧州連合(EU)統計局は11月14日に発表した08年7〜9月期の域内GDP速報が前期比マイナス0.2%だったことを発表し、99年のEU通貨統合以降初めてユーロ圏が景気後退入りしたことを明らかにした。

 アメリカでは全米のホームレス避難所が多くの家族であふれている。欧米全域でリストラの嵐が吹き荒れ、失業者が急増している。

 フランスでは金庫の売り上げが急増し、ドイツではマルクスの「資本論」が大人気となり、スペインでは借金の取り立て業者が引っ張りだこになっている。

 欧米の各国政府は追加景気対策に追われているが、景気回復の兆しはまったく見えていない状況にある。労働者のリストラへの抗議デモやストライキなど労働運動が高揚しつつある。

 アメリカ政府は公的資金の金融機関への注入を続けており、総額7000億ドル(約66兆円)が資本注入されるため、財政収支の急速な悪化は免れない情勢となっている。

 オバマ次期アメリカ大統領は、大規模な財政出動で追加景気対策を取ろうとしているが、政権発足までの政治空白の間にアメリカ経済が一段と景気悪化へと追い込まれる可能性がある。

 アメリカ経済の深刻化は、新自由主義と米一極支配の終えんを示しており、世界は多極化の時代にすでに移行し始めている。これはグローバル化による世界資本主義の不均等発展の結果なのである。

 NATOがグルジアとウクライナの加盟を見送り、ロシアとの和解に向かって動いているのは、当面“新冷戦”を回避し、経済再建を優先しなければならないからである。オバマ次期米政権は、イラクからの撤兵を進めながら国内経済危機の対応に追われることになる。世界の主要国が大恐慌の恐怖に怯え、“内向き”を余儀なくされる局面を迎えているのである。

 比較的余裕があるのが日本である。この余裕を自己の戦略に活かすべきなのだが…。

 日本政府は11月のG20の会議で気前よくIMFに10兆円を拠出することを申し出た。この分ではオバマ新政権からアメリカ国債の大量購入を要求されると、シッポを振って受け入れることが必至となった。ドル崩壊の可能性が高い中での米国債の大量購入は、支払い不能の借金の肩代わりなのである。

 日本はアメリカにNOと言える政府を作らねばならない。日本は欧米の大金融危機を、対米自立の好機としなければならない。早急に経済のアメリカ依存を一層軽減しつつ、ロシア・インド・中南米への多極外交を進めて、対米自立の必要条件を整えるべきである。

 少なくともアメリカの借金の肩代わりは断るべきである。そうしないとアメリカと“心中”することになる。

 今回の大恐慌でアメリカと欧州が疲弊する間に、日本は投資補助金を太陽光発電と風力発電、バイオエネルギー等の分野に集中投下して、新しい環境産業を発展させ、新しい雇用を生み、エネルギーの自給率を高め、内需を拡大して農村・地方に活気を生み、国民経済の活性化を計らねばならない。

 日本が対米自立に向けた国家戦略を持つべき時がきた。その日本の障害は、自民党道路族などの土木資本主義派が握る麻生政権である。この対米追随一辺倒の政権を打倒しないかぎり、日本の対米自立は望むべくもない。“麻生政治空白政権”の打倒を急ぐべきである。