No.90(2008年11月号から)

総選挙目当てのバラマキ政治の無責任

麻生首相の新総合経済対策


   政府・与党は10月30日、総事業規模26兆9000億円の追加経済対策を決定した。麻生首相はこれを受けて記者会見し、財政健全化に向け3年後に消費税率を引き上げる意向を明らかにした。

 経済対策の柱は「家計緊急支援のため」と称した総額2兆円の給付金で、全世帯に4人家族で6万円程度になる。(この件は後に金持ちには支給しない事になった)

 このほか住宅ローン減税や中小企業向けの融資や保証枠を21兆8000億円追加、さらには高速道路料金を大幅に下げ、地方では休日の「1000円乗り放題」を導入するというものである。

 3年後に大増税が待っているのに一所帯当り数万円のバラマキが消費に回るとも思えない。高速道路料金の値下げは民主党の政策のパクリだし、不況で雇用不安が広がり、不動産価格が下落していくのに住宅ローンを組んで家を買う人がいるとも思えない。

 麻生首相は、バラマキ批判を回避するために財源として3年後の消費税増税を言ったのだが、そもそも最近の首相は約1年で首相ポストを投げ出している。麻生首相が3年も首相でいられる訳がない。

 ましてや世界同時不況がこれから深刻化するのだから、3年後に景気が回復している保証はない。したがって麻生の追加経済対策は、選挙対策のバラマキであり、無責任政治と言うほかない。

 そもそも今回の円高は、自民党の対米追随の結果であり、政府が日本の経済を外需中心の経済(=アメリカ依存の経済)にした結果であり、内需中心の国民経済を発展させる政策を取らなかった自公政権が招いたものである。

 麻生首相は、金をバラマキさえすれば支持率が回復すると思っているのだから、国民もバカにされたものである。

 ガソリンが高くて、車を手放す人が多いのに、高速道路の料金を引き下げることが経済対策になるとも思えない。しかも日本はCO2削減を目的とした京都議定書を守る立場にある。どう見てもチグハグな政策と言うしかない。

 経済対策にならず、しかも財政は悪化する、それでもやるなら、それは選挙狙いである。わずか1回数万円で消費税を10%にされたのではたまらない。個人消費は縮小し「失われた10年」の再来になりかねない。しかも麻生の新経済対策には、新産業政策やエネルギー革命の視点に欠けている。

 かつてエネルギーを石炭から石油に転換して重化学工業が発展したように、エネルギーを太陽光発電や風力発電やバイオエネルギーに切り換えることで、新しい産業を育て、雇用を増やし、国民経済を活性化することが重要なのだが、麻生自身がセメント屋の出身であり、公共事業の“土木資本主義”では、少数の既得利益集団が今まで通り潤うだけなのである。

 アメリカとEUが金融危機で不況に突入している今こそ、日本は対米自立の戦略を打ち出すべきであり、内需拡大のエネルギー革命と対外的にはアジアとロシア・中南米重視の多極外交に重点をうつすべきである。

 対米追随一辺倒の自民党には多くを期待できない。日本は政権交代によって経済的行き詰まりを打破する局面がきているのである。

 重要な事は、自民と民主を「双方とも保守だ」と批判することではなく、政権交代で既得利益集団の予算配分権を奪い取ることである。政権交代で自民と民主の反目が強まり、保守大連合の可能性がなくなるのはいい事である。したがって今は自民と民主の同一性を強調するのではなく、相違点に着目し、政権交代をうながすのが正しい対応なのである。

 麻生首相は、どう見ても解散の時期を逸したようである。支持率が低いからと解散を先延ばしすれば、景気はますます悪くなり、支持率は下がりこそすれ、上がる可能性は無くなるのである。

 官僚も政府もボロボロであり、麻生が政権にしがみつけば、解散は先延ばしになる。現状維持の政権にエネルギー戦略や環境経済戦略など出そうにもない。

 自公政権では日本を救うことはできないことは明らかだ。

 共産党は政権交代のリーダーシップを取るべきだ。民主への政権交代は、民主の力量が試され、ダメなら次は共産党の出番が来る。

 日本の人々が政権交代に期待している時は、それをうながす戦略を出すことが政権への近道なのである。今は路線の違いを荒立てるのではなく、政権交代のための全野党共闘を成立させる時である。