No.89(2008年10月号から)

米の北朝鮮テロ指定解除を糾弾する!

ブッシュ政権高官の「成果」作り演出


   10月11日米国務省のマコーマック報道官は緊急記者会見を開き、北朝鮮に対するテロ支援国家指定を解除したと発表した。北朝鮮が未申告核施設の検証を拒み、これに米政府が譲歩し、検証対象を申告した寧辺の施設に限った検証計画を受け入れ、見返りにテロ国家指定解除を決めたのである。

 核無能力化と言っても、北朝鮮が建設中といわれる2基の黒鉛減速炉やウラン核計画が対象外となっていては実効性は無いのである。

 政権末期のブッシュ政権は、一方的に北朝鮮に譲歩して、何としても「朝鮮戦争に終止符を打った」との歴史的成果を演出しようとしているように見える。

 イラク戦争もアフガンへの「反テロ戦争」も失敗し、大金融危機に直面しているブッシュ大統領には、このままでは8年間の政権の成果が何もない大統領になってしまうのである。アメリカは北朝鮮に政権末期のあせりを見透かされて一方的に譲歩させられたことになる。

 麻生首相のところにブッシュの電話が入ったのはテロ指定解除発表のわずか30分ほど前だったという。日本政府は完全に「蚊帳の外」に置かれ、日米同盟の信頼関係がいかに頼りにならないかを思い知ることになった。

 アメリカが北朝鮮の核保有を本気で無能力化する気が無いことは明らかである。「北朝鮮の核の脅威を最も受ける国」は日本であるのに、その日本を無視して、未申告核施設の検証もせずして、どうして「核の無能力化」と言えるだろうか。

 拉致問題を抱える日本を無視して、アメリカは北朝鮮のテロ国家指定を解除したが「拉致はテロである」と語ったのは、どこの大統領だったのか!その同じ大統領が「拉致を忘れない」と言っても、それは気休めであり、もはや日本国民は誰もアメリカを信用しないであろう。

 米国務省は「合意した検証措置が適用される」と説明したが、北朝鮮は核施設の多くを申告しておらず、米政府は北朝鮮の核開発の全容を把握していないのに、どうして検証できるだろうか!  北朝鮮が安全保障の“切り札”としての核兵器を捨てる可能性は低く、ただ古い核施設を解体して“見返り援助”を引き出したにすぎないのである。

 北朝鮮は、アメリカのテロ支援国家指定が解除されると、国際金融機関の援助を得ることが可能になるし、自国への国際投資を呼び込む環境が整うことになる。したがって“金正日王朝”は延命することになる。

 見逃せないのは、アメリカにとって反日の北朝鮮の延命は、アメリカ軍が日本に居座る上で必要条件だという点である。世界第2位の経済力を持つ日本を自立させず、在日米軍を日本の軍事的脅威を押さえる“ビンのふた”として置くには、北朝鮮の核保有はアメリカにとって必要なことである。

 日本を自立させないという点では、アメリカ・中国・韓国・北朝鮮は、暗黙の合意があると見なければならない。

 かつて日本政府がミサイル防衛の導入をアメリカにせまられていた時、それを促すかのように北朝鮮がテポドン1号を発射し、同ミサイルは日本領空を通過した。またアメリカが在日米軍再編の費用3兆円の負担を日本に求めた時も、北朝鮮はミサイル7発を発射し、日本は、3兆円の負担を受け入れた経緯がある。

 日本の国民は、“北と米の結託”を見ておくべきであり、北朝鮮の反日姿勢は、日本の対米従属のテコの役割を担っているのである。それゆえに、日米の従属同盟の下では拉致問題の解決は難しいのである。問題にしなければならないのは歴代自民党政権の外交的無能であり、従属姿勢である。

 6カ国協議に参加しているアメリカ・中国・ロシアは、自国の核保有は問題にせず、北朝鮮に核放棄をせまっている。つまり大国の身勝手に対し、北朝鮮が屈服して核を放棄するわけが無いのである。

 アメリカの「テロ国家指定解除」はブッシュ政権の外交的成果演出以外の意味を持たないと知るべきである。拉致問題をアメリカの力に期待してもムダなのである。

 拉致問題の解決は、日本が対米自立し、北朝鮮との間の懸案となっている戦争賠償の交渉に応じる以外ないと思われる。

 日本は、半島国家としての北朝鮮の外交的したたかさに学ばねばならない。