No.88(2008年9月号から)

初の黒人大統領は誕生するか?

アメリカ大統領選


   民主党の大統領候補に「変革」を掲げたオバマが指名された。共和党の大統領候補マケインも「変革」を掲げている。

   民主党のオバマの政策は、内政重視で、風力や太陽光発電等の次世代の代替エネルギーの開発などに総額1500億ドル(約16兆円)を投資、新たな産業と500万人の「グリーン雇用」を生み出すとしている。

 これに対し共和党マケインの政策は、安保政策重視であり、ブッシュの戦争路線を継続する内容となっている。マケインは対ロシア強硬論を強めたことで支持率が上昇したこともあり、安保・外交重視が際立っている。減税政策ではマケインは「法人税の大幅下げ」であり、オバマは労働者層に減税を掲げている。

 大統領選の形勢は当初オバマが支持率でリードしていたが、マケインが女性のペイリンを副大統領候補に選んだことで支持率を回復し、現在は全くの互角と報道されている。

 アメリカ経済は、サブプライム問題の波及で景気後退局面に入っており、金融危機も深刻化し、政府は公的資金の注入で危機の先送りをおこなっているが、このことが財政危機を一層深刻化し、ドル安を引き起こす可能性も心配されている。つまり共和党政権の戦争路線を続けることは経済的に無理があり、その点をアメリカ人民がどう判断するか注目される。

 民主党の政策はいわば“息つぎの平和”へ舵を切り、内政重視で経済を建てなおすため、環境問題で新しい産業を発展させようとするもので、オバマが黒人初の大統領に選出される可能性は強い。

 オバマにとっての心配は、白人層に残る、黒人大統領を回避したいという気持ち(数%はあると言われている)であり、また第3の候補としてネーダー氏が出馬するため、左右から票を奪われる可能性があることだ。つまりネーダーの出馬は前回も共和党に有利に働いたので、今回も共和党が巻き返す可能性も残っている。

 戦争の重点がイラクからアフガン・パキスタンにうつっており、このことが選挙にどう反映するか?またアメリカの失業率が6.1%となり、雇用情勢が深刻化しているため、内政重視のオバマ支持が強まる可能性もある。

 アメリカ経済の減速と、金融危機が、大統領選を左右する可能性は強く、内政で“決定打”をはなてないマケインは苦戦をまぬかれない。    またアメリカ世論とりわけ保守派が黒人大統領を容認するのか、暗殺などの動きが白人過激派の中から出る可能性もあり、すべての点で予断を許さない選挙戦となっている。

 日米関係からアメリカ大統領選を見ると、民主・共和のどちらが勝っても、日本に対する要求は厳しさを増すことになる。それほどアメリカ経済は深刻であり、とりわけ民主党のオバマが勝利した場合は、日米間のまさつは激化することは避けられないであろう。

 戦略的な側面から見ると、イラクもアフガンもアメリカは最終的に勝利できず、巨額の戦費を引き続き支出することは、アメリカ経済のリスクが大きいので、民主党のオバマによる「息継ぎの平和」によって力を温存する方が戦略的にはすぐれている。

 しかしアメリカは産軍複合体の経済が特徴であり、不況だからこそ軍需産業への発注を増やすべきだとする圧力も増しているのである。

 経済危機克服を主とするオバマの内政重視か、マケインの戦争継続かが問われる選挙となっている。