No.88(2008年9月号から)

避けられない大恐慌への突入!

資本主義の質的変化を根源とする金融危機


   9月15日、アメリカの大手証券会社リーマン・ブラザーズが経営破綻した。負債総額は6000億ドル(約63兆円)を超える史上最大の倒産となった。金融不信の広がりは業界に連鎖破綻のおびえを拡大し、証券会社や銀行の身売り交渉が進んでいる。

 この連鎖危機の“震度”は1930年代の大恐慌以来と言われるほど大きい。日本の銀行などのリーマン向け債権は4400億円を超えている。

 金融危機の負の連鎖は、世界同時株安となって波及し、世界経済を危機に陥れている。今年に入ってアメリカの銀行の破綻は9月5日までに11行に達している。

 昨年からのサブプライム問題で世界の金融機関の不良債権は膨張を続けている。その原因となっているアメリカの不動産価格の下落はまだ続いているのである。

 欧州の住宅バブルも崩壊しつつあり、危機はアメリカから欧州へと広がる可能性がある。したがって米欧の市場に依存する中国経済の先行きも暗い。EUも日本もマイナス成長に陥りつつあり、世界資本主義はアメリカ発の大恐慌へと突き進んでいる。

 今回のアメリカ発の金融危機とその全世界への波及は、冷戦後のアメリカ覇権主義のおごりに基づくグローバリズムの結果なのである。資本主義は1つの市場となり、その下で、信用制度はアメリカ金融資本に絶対的な支配力を与え、生産力の発展と世界市場の形成を促進し、同時に信用制度は恐慌を促進する。巨額の投資マネーが全世界の市場を混乱させるまでになった。

 アメリカのサブプライム問題で投資マネーは、原油・原材料・食料へと向かい、これらの価格高騰は実体経済への打撃となり、世界が同時不況の様相を示しているのである。

 アメリカ政府は、政府系住宅金融機関2社を管理下に置くとともに、両社に公的資金注入枠を設定し、今またAIGに公的資金9兆円を注入した。しかしこれでアメリカの金融危機が解決するわけではなく、住宅ローンの焦げ付きは一層深刻化している。

 アメリカの銀行全体の不良債権額は膨らみ続けており、さらには商業用不動産など新たな損失のリスクも抱えており、政府の対策は危機の一時しのぎにすぎないのである。つまりアメリカの金融危機は一層悪化する可能性がある。

 公的資金の注入によってアメリカの財政赤字が、戦費の浪費も重なって一層深刻化し、ドル安への不安を拡大する側面も見ておくべきである。

 アメリカのビッグ3(三大自動車メーカー)が政府の支援を仰がざるを得ない厳しい経営状態に陥っていることを見てもアメリカの経済危機の深刻さが分かる。

 高騰していた原油価格が下落し始めたのは、世界的不況の中で需要が減少していることを反映したものであるが、今後も巨大な投資ファンドの資金が世界経済のかく乱要因となるであろう。

 深刻なのはアメリカ政府が“テロ戦争”の浪費の中で、深刻な金融危機から脱出する経済戦略を持っていないことである。

 欧州(EU)は、環境問題で新しい産業を興し、雇用を生む戦略を持っているがアメリカは戦争路線を引き続き追及しようとしている。経済戦略を示しえていないのは日本も同じである。公共事業を続けるだけの土木資本主義では次の産業を発展させられないし、したがって展望がない。

 日本はアメリカの言いなりになって金融の自由化を進め円安と株安と低金利を政策としたために、日本から100兆円以上の資金が流出した。そしてこれらの資金が投機資金となって原油高・原材料高を招いているのだ。

 世界資本主義がグローバリズムの中で質的変化を遂げた。金融の自由化によって巨額のコントロールできない投機資金が国境を越えて移動し、実体経済に打撃を与える中で金融危機の連鎖が広がっている。

 アメリカ発の金融危機の全世界への波及が深刻であればあるほど、全世界の人々に資本主義が絶対の制度では無いことを強く認識させるであろう。

 人類が史上2度目の大恐慌を克服できるのか?試練の時を迎えている。経済危機は、倒産・リストラとなって労働者の上に襲いかかる。全世界で階級闘争を激化させずにはおかない。欲望による資本主義の崩壊の危機は、真の社会主義が求められる時代でもあるのだ。