No.87(2008年8月号から)

野垂れ死にの可能性強まった福田政権

禅譲で麻生取り込むも支持率上がらず


   何をやりたいのか? どんな日本を造るのか? さっぱり分からないのが福田政権の特徴である。その福田首相が「5つの安心プラン」なるものを発表した上で、8月1日に内閣改造に打って出た。

 この内閣改造でサプライズ人事を期待したマスコミの願望ははずれ、各派閥のボスが内閣と党役員に顔を並べる“古臭い挙党一致内閣”となった。この事実が意味するのは“泥船”には乗り手が無かったと言うことである。

 改造の目玉といえるのは自民党幹事長に麻生を起用したことである。国民の人気が高いと言われる麻生を取り込んで、支持率を上げ福田の手で解散・総選挙を狙うものだが、一方の麻生にすれば「解散はあなたの手で」と政権禅譲の口約束を信じた上の決断だった。政治家の口約束ほど当てにならないものはない。しかし麻生は“福田政権の支持率は上がらず、野垂れ死にする”と読んでの幹事長就任なのである。

 福田首相が打ち出した「5つの安心プラン」は、高齢者、医療、子育て支援、非正規雇用、厚労行政の信頼回復の5点、150項目以上のプランの中身は、これから「検討」するものがほとんどで、概算要求の内容を前倒ししたものにすぎない。厚労省の改革にいたっては、これを同省内の懇談会に委ねるという、およそ実現しそうにない内容となっている。

 政府はこの「安心プラン」の財源に概算要求基準(シーリング)の重点化枠約3300億円の相当部分を充てる方針と報道されている。しかし、7月29日には社会保障費の2200億円抑制を09年度予算でも続けることが決まっている。つまり“右手で出して左手で奪い取る”という、なんとも中途半端な政策である。この福田の「安心プラン」は総選挙向けの“目くらまし”と見るべきである。

 自民党内及び自公の間には、解散時期と選挙を誰(福田か次の首相か)で闘うかで亀裂が生まれている。公明党は来年夏には重要な都議選がある。同党の支持団体の創価学会の本拠が東京にある関係から都議選に総力を挙げなければならない。それには衆院解散は早い方がいいのである。

 福田改造内閣には与謝野経済財政相など消費税増税派がたくさん入った。しかし福田首相は消費税について「2、3年の長い範囲で考える」と語っている。つまり福田は衆院選で消費税は争点とせず、選挙の後に消費税増税をやる腹なのである。

 福田首相の残る重要課題は、インド洋での補給支援特別措置法の延長問題である。同法は、来年1月に期限切れとなる。福田は前回と同様に衆院の3分の2で再可決して延長する考えだが、公明党が同法の延長に慎重になっている。

 「ガソリン代がこれほど上がっているときに、タダで給油するのかという国民の反発は大きいはずだ。」(閣僚経験者・朝日新聞)という声もある。福田が特措法の延長を優先するなら解散含みの国会となる可能性がある。

 政財官のゆ着の上にあぐらをかいている自民党には、官僚が蓄えている「準備金」等のいわゆる“埋蔵金”に手を付けることはできない。選挙前に消費税増税も言えない、となると一方で福祉財源を削除しながら、他方で欺瞞的なバラマキで選挙対策をする、いわゆるブレーキとアクセルを同時に踏むような政策しか取れないことになる。

 小泉元首相のように郵政民営化だけで衆院解散・総選挙をいどみ、刺客候補で“小泉劇場”を演出するようなことは福田にはできない。また“軍師”もいない。となると福田首相が辞任に追い込まれて新首相就任と同時に解散総選挙という筋書きもありうる情勢である。

 公明党は衆院選で民主党が勝利すれば、政権から転落もありうるわけで、したがって支持率の低い福田首相で総選挙を闘うのは回避したいと言うのが本音であろう。

 したがって福田首相が解散総選挙に踏み切ることは、支持率の急激な回復がない限り難しいと見なければならない。

 内閣改造で支持率の回復を狙って失敗した福田首相が、他に支持率回復の“切り札”を持っているようには見えない。

 たとえ“解散準備内閣”といえども勝てる見通しがなければ福田は解散できず、結局は野垂れ死にとなり、新首相での解散が自民の大勢となる可能性が強い。

 古臭い挙党一致内閣で今の自民の支持率回復ができるとも思えないし、福田首相に解散する力があるとも思えない。

 次期総選挙で政権交代の可能性は強まったと言える。自民党は野党の票を割るため共産党が多くの選挙区で候補を出すことに期待するしかないであろう。

 総選挙で小沢民主党が第一党になれなければ、政界大再編になる可能性もありうるシナリオである。

 日本の政治の大激動が近づいている。 0