No.86(2008年7月号から)

揺らぐ厚労省・政府への国民の信頼

年金入力ミス560万件と年金運用損5.8兆円


   社会保険庁がコンピューターで管理している厚生年金の加入記録と原簿(紙台帳)を照合したところ、入力ミスが1.4%あったことが6月27日に分かった。それによれば単純計算で受給漏れの恐れがある入力ミスは約560万件に上ると推計されている。これは宙に浮いた年金記録5000万件とは別の話なのである。

 今回の調査は、記録約4億件のうち2万件を抽出して調べた結果だが、年金支給額を決めるための加入期間や過去の収入などが間違っていたのが1.1%あった。

 社保庁は「カネがかかる」としてすべての記録の照合は当面しないと言う、しかし受給漏れにつながる恐れのある間違いをそのままにしておいて、社保庁や政府への信頼性が高まるわけがないのである。(後に国民の批判を受けて社保庁は1500億円を投入して、すべての記録の照合をすることになった)  それにしても社会保険庁の年金管理の御粗末さは相変わらずである。

 7月4日付新聞で厚生年金と国民年金の積立金の07年度の運用損が過去最悪の5.8兆円だったことが報じられた。年金積立金は01年度から市場での運用が始まり、07年度は積立金150兆円のうち91.3兆円を運用している。

 内訳は国内債券56.9兆円、国内株式13.8兆円、外国債券9.7兆円、外国株式10.9兆円となっている。

 今回はアメリカのサブプライム問題に端を発する世界的株安が公的年金資金の5.8兆円の運用損となって波及した。年金の積立金をリスクの高い株や債券投資に使うことは問題がある。株や債券への投機は、いわば“バクチ”であり、ましてや為替差損の可能性のある海外での運用はするべきではない。

 年金資金の運用損が巨額になれば、将来の年金の給付水準低下につながる可能性がある。

 国民が支払った年金が運用で5.8兆円も損失を出し、しかも今後も世界的に株価は下がり続ける可能性は高いので、損失は一層拡大する可能性がある。

 年金資金で株投機をすることに国民の不信が高まるのはさけられない。ましてや年金記録や年金資金の管理が御粗末なままに、年金財源を「全額消費税方式」にするなどと言われても、それは企業の保険料負担を減少させるのが狙いであり、現状の年金記録や年金資金の管理に“大穴”が開いている状況では、消費税方式など話にならないことである。

 政府の年金業務・組織再生会議(座長・本田勝彦日本たばこ産業相談役)が社会保険庁の「組織改革」の最終報告書案を6月27日に発表した。それによると、新しく発足する「日本年金機構」は、社保庁から正規職員として9910人が移行する。つまりまともに年金記録を管理できなかった職員が、新組織に移行して仕事をするのである。うまく年金を管理できるとも思えない。

 この不安感は政府も同じように持っていると見えて、政府は6月24日、厚生労働相を「副首相」に任命し、現在2人の厚生労働副大臣を閣僚として扱い、実質3人の大臣で信用が失墜した厚生労働行政を立て直す(サンケイ新聞)との信頼回復策を発表した。

 福田首相も相次ぐ不祥事で国民の信用がなくなっている厚生労働行政を立て直さないと、支持率アップは望めないことを認識したのであろう。

 医師不足を招き、ベッド数削減等の医療破壊、日雇い派遣や違法な二重派遣や請負やサービス残業で雇用を破壊し、さらには「労災かくし」まである。その上に年金記録のズサン管理だ。ズサンな仕事内容を隠蔽するために社保庁を「日本年金機構」に作り変えるのか!と言いたくなる。

 この厚労省のいいかげんさは、自民党政権が生み出したものである。厚労省に一貫して企業の利益を優先した結果が不祥事の続出となったのである。

 厚労省は薬害エイズや薬害肝炎では製薬会社の利益を代表して患者を犠牲にした。労働行政では企業の利益を代表して労働者を踏みつけにし、年金のズサン管理、救急医療を始めとする医療体制を医師不足でガタガタにして、極めつけが後期高齢者医療保険制度であった。

 国民の福祉と生活をボロボロにしたのが厚労省のやったことである。福田首相は、厚労省の大臣を3人にしたら、これらの問題が解決すると、本当に信じているのであろうか?二代目政治家の“甘さ”を指摘しなければならない。