No.86(2008年7月号から)

組織の硬直化と腐敗の反映か!?

損保業界・保険料取り過ぎ問題


 火災保険や自動車保険などで、保険料を取り過ぎていた問題で損害保険17社は7月4日調査結果を発表した。それによると取り過ぎの契約は、17社合計で約150万件金額にすると約364億円に上った。内大手6社では約310億円に上り、昨年3月の中間報告と比べ金額で約6倍に膨らんだ。

 損保各社では、いまだ調査中で確認が取れないものが、それぞれ4〜5割あり、保険料取り過ぎはさらに増える可能性がある。

 信用が“命”の保険会社がなぜこのような詐欺まがいの事態を招いたのか不思議だが、この点について損保業界は、金融自由化を機に外資の進出に対応するため保険料の割引特約を増やしたが、この事が商品を複雑にし、営業担当者が商品知識を持たないまま契約し、契約者は割引を知らないため、保険料の取り過ぎが発生したと説明している。

 しかし損保業界はサブプライムなどの海外への投資で合計1836億円もの損失を出している。また同業界は総額400億円もの保険金不払い問題も起こしており、したがって利潤を追求するあまり、意識的に保険料不払いと保険料の取り過ぎを狙った、と言われても仕方がない面がある。

 報道によれば東京海上日動では、社長など役員31人に対して月額報酬の一部を返上する社内処分を実施したそうで、他の保険会社でも調査のメドがついた時点で社内処分を検討すると言われている。

 注目されるのは損保業界に対する行政処分である。違法な二重派遣で廃業に追い込まれたグッドウィルや、強制捜査の入ったウナギの産地偽装や、牛肉の偽装と比べて金額でケタ違いに大きい問題であり、損保業界に対する行政の処分が注目されるところである。

 巨大な損保業界だから詐欺行為であっても“自主調査・自主処分”で終わるという事なら、損保業界に対する国民の信用の回復は難しいと言うべきだ。

 気になるのは、年金資金を扱う社保庁といい、巨額の政府補助金を受けている官庁などの外郭団体といい、損保業界といい、官民を問わず国民の金を預かる組織の無責任な“ズサン管理”である。

 日本の政財官の既得利益集団が、永年の権益の上にあぐらをかき、腐敗して自浄能力を失っているのではないか?という点である。

 巨額の道路財源を、一般財源化することすら簡単でない、この国の政治の硬直性は、60年以上続いた自民党の一党支配の産物と言えるものである。この基盤の上に日本の現存するあらゆる組織の上層が“腐臭”を放っていることを見逃してはならないのである。

 聖職と言われた教員への採用ですら“手づる”と“金”が必要なのがこの国の腐敗の現状なのである。大学の研究者で著しい成果を上げつつある人が、同僚の“ねたみ”や足の引っ張り合いで、研究を妨害され、不当な処分で弾圧を受けている現状を見ても、日本の各組織の腐敗の深刻さが分かるのである。

 世間で一番信用を必要とする損保業界が約400億円もの保険金の不払いと、約364億円もの保険料の取り過ぎをやっていた事実が示しているのは、日本の各組織の上層の腐敗なのである。

 その組織の信用回復は、いかに腐敗を“抉(えぐ)り出す”か、自浄能力を回復できるかであるが、病根は往々にして第三者の手による“外科手術”を必要とする。

 日本の政治が損保業界にどのような“手術”をするのか注目したい。