No.86(2008年7月号から)

役割終えた日米安保と在日米軍

対米自立の時がきた


   在日米軍の存在によって、日本は防衛費を安上がりにしたことで戦後の経済復興を早めたことは事実である。しかし日本経済が世界第2位の経済大国になって以後の在日米軍の存在は、日本が軍事大国になることを防止するための“ビンのフタ”と表現されてきたようにアメリカの従属国として米戦略に奉仕させられてきたのである。

 それは、多額の“思いやり予算”であり、1兆2400億円もの湾岸戦争の戦費負担であり、現在計画が進んでいる3兆円もの米軍の再配置の費用負担であり、ミサイル防衛(MD)計画のように今後10兆円もの負担となるアメリカ製兵器の購入であったし、今も続いているインド洋での給油と、イラク戦争への協力である。

 アメリカの覇権が強力な内は、それもやむを得ない側面があったかも知れない。しかし今やアメリカ経済は崩壊に直面し、ドル急落は避けられず、軍事的には小国のイラク占領統治すらおぼつかない状況になっている。

 世界はアメリカの凋落、ロシアの復活、中国、インド、ブラジル等の経済成長によって、またEUのユーロ圏の形成によって多極化の時代に入っている。

 したがって日本はいつまでもアメリカの顔色をうかがう時代ではなく、多極外交によって、対米自立の必要条件を整える事が重要となっている。とりわけ中国とロシアとのバランスのとれた相互依存関係を深めることと、アジア諸国との友好関係を強化することで、日本の平和主義を堅持することが重要である。

 日本は反日教育の中国や北朝鮮を牽制する意味でもプーチンのロシアとの関係を戦略的視点から強化すべきである。プーチン政権が国民の強い支持がある内に北方領土の返還で妥協し、日ロ経済関係を強化する必要がある。

 アメリカは、北朝鮮の金正日政権を延命させ、核兵器の保持を容認することで、在日米軍が日本に長期に居座ることを策しており、日本をアメリカの従属国に引き続きしておく事では中国と北朝鮮はアメリカに同調している。

 中国はアメリカがいずれ巨大な軍事力を維持できなくなり、アジアから撤退せざるを得ないと見ており、その時中国がアジアの覇権を握ることを狙っている。

 中国経済に日本が今以上肩入れすることは危険であり、中国への高度技術の供与はなによりも制限を加えるべきである。すでに日中の貿易高が日米の貿易高を超えるまでになり、中国は日本にとって重要な国になっているが、しかし反日教育を続ける中国に日本はこれ以上依存を深めるべきではない。

 ロシアはエネルギー(石油、天然ガス)の輸出で経済的に復興し、シベリアに浸透しようとする中国を警戒しており、高い生産技術を持つ日本との経済関係構築のためには北方領土問題で譲歩することも考慮している。

 シベリアの資源開発には日本の資本と技術が必要であり、日本は資源供給先の多角化を必要としている。日本とロシアの経済面での相互依存関係を深めるチャンスがきていることを認識することが重要である。

 今や日本にとって、日米安保と在日米軍を必要としなくなっている。日本の軍事力は防衛力としては十分強力であり、日本をめぐる情勢は改善している。いつまでも冷戦時代の発想で安全保障を見るのは時代錯誤と言うべきだ。

 アメリカは今、一極支配から転落しかかっており、日米安保は日本の国力をアメリカの戦略に組み込む段階に入っている。アメリカは日本をアメリカの戦争に巻き込むことで不足がちな国力を維持しようとしている。つまり日本が戦後堅持してきた平和主義は、日米安保から脱皮しないかぎり続けることは難しいのである。

 今や在日米軍は日本の防衛にとって不要のものとなっている。アメリカの気まぐれで、北朝鮮のテロ国家指定が解除されたように、日本の安全保障を大国の気まぐれにゆだねることはできないのである。

 日本は“思いやり予算”を負担して、アメリカ本国に基地を置くよりも安上がりにすることで、在日米軍を存続させてきたが、いつまでも他国の軍隊に国の安全保障をゆだねる時代ではないことを知らねばならないのである。

 多極化の時代には、多極外交によって国の安全を保障しつつ、早期に自主防衛の体制を確立すべきであり、アメリカの戦争に巻き込まれない自主外交が必要な時である。日米安保と在日米軍の歴史的役割はすでに終えているのである。