No.86(2008年7月号から)

地球的危機に具体策示せなかった国益政治家 !!

洞爺湖サミットの空虚


   7月7日〜9日の3日間北海道洞爺湖で開かれたサミット(主要国首脳会議)の課題は、まさに地球的危機とも言えるいくつかの重要な議題が関連しあうものであった。

 地球温暖化(気候変動)、原油の高騰、食糧の高騰、サブプライム問題にともなう金融危機、ドル安、インフレ、株価の急落、どの問題も相互に関連し、危機を増幅している。したがって解決が難しい。

 投機資金の規制にいたっては、元々グローバリズムの原則の下ではできる相談ではなかった。

 米石油会社の利益を代表するブッシュ大統領にCO2排出規制はまったく期待できなかった。しかもブッシュの任期はあと6ヶ月しかない。

 「サミットで何か新しいことが決まるとは、元々期待していなかった」と言うのが大方の評価であるらしい。つまり具体的合意を目指すならアメリカの新大統領の就任を待つしかなく、今回のサミットでは決裂を回避するために抽象的宣言でごまかした、ということである。

 地球温暖化問題についての首脳宣言は、CO2排出量を半減させる長期目標について「気候変動枠組み条約(UNFCCC)の全締約国と共有し、採択を求める」ことで合意したが、これは「中国やインドが義務を負わないG8だけの合意は意味がない」というアメリカの主張が通ったということである。

 焦点と見られていた今後10〜20年間の中期目標について具体的な合意はなく「野心的な中期の国別総量目標を実施する」という曖昧な表現となった。

 原油価格と食料価格を上昇させている投機の規制については何も決まらなかった。

 商品相場の主役はヘッジファンドだけでなく、アメリカの年金基金なども投機に加わっていると言われている。年金基金は長期の投機を前提にしており、原油や食料の高騰は長期化すると見られている。

 アメリカの連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の救済を米政府が決断し、ニューヨーク株式市場の株価が低落しているように、アメリカの金融不安が続いている以上、株価の下落やドル安は続くと見られ、その結果マネーは金融市場に戻らないし、原油の高騰も収まらないと見られているのである。

 現在の原油と食糧の高騰、金融危機、ドル安、インフレ、株価の急落などはアメリカの進めたグローバリズムの戦略の結果であり、また単独行動主義に基づくイラク侵略に原因がある。ところがブッシュ大統領は現在北朝鮮問題で成果作りに入っており、あたかも多国間主義になったかのように振舞っている。成果を誇示したい者が自分で招いた危機を認めるわけがない。

 つまり直面する地球的危機は、ブッシュ後の新大統領の下でなければ進めることは不可能なのである。このことはフランスやドイツなどEUの指導者も分かっており、したがって洞爺湖サミットでは抽象的宣言で問題の先送りを計るほかなかったのである。

 中国、インド、ブラジル等を加えて開かれた16ヶ国主要経済国会合(MEM)も温暖化をめぐって先進国との対立を表面化させただけで終わった。

 福田首相の成果らしきものは政治分野の宣言に「拉致」を明記したことぐらいだが、これも成果とは言えない。ブッシュ大統領は「拉致を忘れない」と語ったが、アメリカは北朝鮮の核を事実上容認する形でテロ国家指定を解除したのであり、拉致問題の解決は難しくなった。

 拉致問題を置き去りにしたアメリカの対北朝鮮政策は、イラクとアフガンで手一杯のアメリカが、身勝手にも「拉致はテロだ」と語ったことを都合よく忘れ、北朝鮮に多額の“見返り援助”を与えるものである。したがってこのブッシュの身勝手な成果作りを追認した福田首相の無責任は断じて成果とは言えないのである。

 サミットの議長であった割に福田首相の存在感は希薄で、ただアメリカに追随しただけであった。

 民主党の鳩山由紀夫幹事長は「曖昧な結論で、何のメッセージもない。首相にリーダーシップがあったとは誰一人認められなかった。」と指摘した。

 自民党内にも首相の存在感の乏しさから、サミットに福田政権の浮揚効果を期待できないことに失望感が出ている。

 EUは排出権取引に見られるように温暖化問題を経済戦略と位置付け、他方アメリカは温暖化対策に消極的で、日本はアメリカの顔色を見る、中国やインドは経済成長に負担となる温暖化問題は先進国の責任と考えている。各国が国益を優先する会議に、地球的危機の具体的合意を期待する方が無理というものであった。

 気候変動も世界的経済危機も、その危機の深刻さを自覚できない政治家に、危機回避策で何かを期待することはできない。

 “我亡き後に洪水は来たれ”これがすべての資本家階級の世界観であり、その政治的代理人である国益政治家は、地球的危機への関心も極めて低いのである。

 自然の脅威が指導者達の目を覚ますのを待つしかないのだろうか!