No.84(2008年5月号から)

世界的金融不安の懸念強まる

戦後最大の「世界的不況」に政府の無策!


  世界的金融不安の懸念強まる 戦後最大の「世界的不況」に政府の無策!  米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は4月10日バージニア州で公演し、サブプライム問題に端を発した現在の金融危機が「戦後最も深刻な出来事の一つというのは真実だと思う」と語った。また国際通貨基金(IMF)の国際通貨金融委員会(IMFC)は、4月12日「国際金融市場は不安定性を増している」として「世界的な不況」の可能性を警告した。

 世界貿易機関(WTO)が4月17日に発表した2007年の世界貿易統計によると、物価変動と為替相場の影響を除いたモノの実質輸出の伸び率は06年の8.5%から5.5%は減速した。08年度は4.5%まで下がると予測している。この世界の輸出の急減速は原油高騰で一層鈍ると見られている。

 日経新聞によれば企業などの資金調達が世界規模で急減している。債権・株式の発行や協調融資(シンジケートローン)による今年1〜3月期の調達額は前年同期に比べて約1兆3千ドル(130兆円)減少している。

 価格が急落している証券化商品を使った調達額は9割近く落ち込んでいる。深刻化する「カネ詰まり」が実体経済の重しになる恐れが指摘されている。FRBのコーン副議長は4月17日「銀行流動性不足に陥った場合などに備え、危機対応計画を策定する必要がある」と強調した。FRBはアメリカの景気が一段と減速していると指摘している。

 ファンドの巨大な投機資金が商品市場に流れ込み原材料価格を急上昇させ実体経済に打撃を与えている。 戦後で最も深刻な金融危機が現実のものとなりつつあり、しかも貿易の縮小が示しているのは近い将来の「世界的な大不況」である。

 しかし、それでも投機は止むことはない。「われ亡き後に洪水はきたれ!」が投機家達の世界観なのである。

 実体経済指標の悪化の中でアメリカは今大統領選の最中である。つまり、事実上の政治的空白であることが金融危機に対する政治的対応の遅れとなりかねない局面にある。選挙中には巨額の公的資金の注入を決定することは、選挙戦で不利になるので打つべき手が打てない事態を招く可能性は強い。

 すでに市場では公的資金の活用や時価会計の一時的凍結が取りざたされている。その事はとりもなおさず「信用不安」が深刻化しているとの裏返しなのである。

 ニューヨークの原油先物市場の原油価格が120ドルを突破し、今年夏には150ドルもあり得ると言われている。そうなれば実体経済の打撃は、一層大きいものとなる。

 ブッシュ政権が公的資金の注入を選択できない場合、アメリカ経済の不況の長期化は避けられない。 こうした状況の中で日本企業は円高と原油高、アメリカの景気悪化の影響を受けて収益悪化が一段と進んでいる。

 国内大手銀行のサブプライム関連の損失も急速に拡大しており、また株価下落による株式評価損が急拡大している。日本経済の景気後退の可能性も強まっている。

 今後アメリカ市場の不況の影響で北京オリンピック後の中国経済の行方も不安感を増すことは避けられず、世界同時不況の現実的可能性が強まっているのである。

 日本経済の場合もアメリカと同様に政治的対応がねじれ国会の影響と財政危機で思い切った対策が取れない状況にある。自公政権は公共事業による既得権益の確保だけの政治であり、思い切った内需拡大と税金の流れを公共事業(土木資本主義)から環境分野などに転換する政策も取れない。利益誘導型政治は支持基盤との関連で大胆な政策変更ができないのである。

 そもそも日本の議会では世界同時不況とその深刻化に対する政治的対策は議論もされない現実がある。

 アメリカの戦後最大の金融危機と原油高騰が世界同時不況を招きつつあり、日本経済も深刻な打撃を受けることになる。日本の政治がこれに対応できるのか? 不安だけが強まっている。

 日本は今回の不況を機に対米依存の経済から脱却を目指さなければならないが、対米従属を政治信条とする現政権にそれを求めることはできない。

 政権交代の必要性は経済面からもかつてなく強まっているのである。