No.82(2008年3月号から)

高齢者大収奪と終末治療の切り捨て狙う!

後期高齢者医療制度の本質


   小泉内閣時に自民・公明が作った後期高齢者医療制度が4月からスタートする。この制度は高齢化の中で今後医療費が膨れ上がることになるので先手を打って、75才以上の人を新しい制度に囲い込むことで、保険料を年金から天引きし、医療費の膨張を抑制することを狙いとしている。

 保険料は所得によって負担する「所得割」と加入者全員が一律に負担する「均等割」を合計した額となる。具体的に見ると大阪の場合所得割率8.68%+均等割額4万7415円となり、東京だと所得割率6.56%+均等割額3万7800円となる。(均等割は所得によって7割、5割、2割と軽減される)年金が月1万5000円以上の人は、これらの保険料が年金から天引きされることになる。年金が月1万5000円以下の人は、約3割の金額を支払うことになる。支払えないと保険証は取り上げられ、代わりに「資格証明書」が発行され、窓口でかかった医療費全額を支払うことになる。

 つまり月額1万5000円以下の年金で暮らしている人が医療費全額を払えるわけがなく、貧乏人は医者にかからず自宅で死ねということである。

 この後期高齢者医療制度の保険料は2年ごとに改定され、75才以上の人が増加し、医療費が増えたら自動的に保険料が上がる仕組みになっている。これまで被扶養者だった高齢者も同制度に入れられ新たに保険料の負担が必要となる。

 06年度の国民医療費は約34兆円で、そのうち高齢者の医療費は推定11兆円で全体の約3分の1を占めている。この高齢者層を現在ある保険制度から追い出し、年金からの天引きで保険料として収奪し、同時に貧困者を治療から締め出し、そのことで治療費の膨張を防ぐ仕組みなのである。

 悪らつなのは、この制度の導入と合せて65才以上の高齢者の国民健康保険料も年金から天引きすることである。こうした天引きは、最もたやすい人民収奪であるが、このために生活ができなくなり自殺したり、医者にかかれずに病死したりする高齢者が出ることは避けられないのである。療養ベッドを大量に削減したことと合せて考えると、国が高齢者の終末医療費を削減したり、切り捨てにしたりすることを狙っていることは明らかである。

 政治には“思いやり”が必要だが、最近の政治は取り易いところから収奪する。弱者・貧困者は踏みつけにする反面、官僚と政治家とゼネコンなどの既得利益集団の権益には手を付けない、というのが特徴である。

 人民の側にすれば、自分達が支払った年金記録は消えてしまい、国家詐欺にやられた結果の小額の年金から、さらに一方的に後期高齢者医療保険の名目で天引きされるのである。わずかな年金でギリギリの生活をしている老人は、保険があっても受診を我慢するしかないのである。こんなひどい医療制度は世界的にも珍しい。

 これは「高齢者収奪・終末治療の切り捨て制度」と呼ぶべきものである。

 見過ごしにできないのは、政府が後期高齢者と、それ以外の世代で診療報酬を別建てにし格差をつけているため、高齢者に手厚い医療をする病院などは経営が悪化し、結果高齢者が不十分な医療しか受けられず、入院も拒否される可能性が高いことである。医療費の窓口負担は変わらないとはいえ、高齢者が医療面で差別を受けることになりかねない。

 世の中には生活保護受給者以下の年金で生活している人がたくさんいる。これらの人の年金から高額の保険料を天引きすることは現状を知らない者が作った過酷で乱暴すぎる制度と言わなければならない。

 保険料の徴収と医療給付の抑制をセットとし、高齢者を差別的に囲い込み、その中の貧困層を医療から締め出す制度を、もはや「国民皆保険」とは呼べない。

 民主党など野党4党が「後期高齢者医療制度」の廃止に動いているのは当然というべきで、支持したい。

 永年日本社会に貢献してきた高齢者を、収奪と医療切り捨ての対象とすることは人々の未来を暗くすることであり、支持することはできない。これは政治の堕落である。自民党政治は「病膏盲(やまいこうもう)に入る」(不治の病にかかっている)と表現すべき状態にある。

 今日本の政治に必要なのは腐敗した既得利益集団の権益に手を付け、庶民・弱者への思いやりであり、「改革」の名で弱者を踏みつけにしたり、福祉の名で人民収奪機構を作ったりすることではない。

 小泉「改革」とは庶民には高負担の反面、金持ちには一層の富をもたらした。“悪政”の見本のような政治であった。真に必要なのは、自民党の一党支配からの転換であり、政権交代によって腐敗の構造を一掃し、庶民に思いやりのある政治を保証することである。