No.81(2008年2月号から)

経済戦略の視点から一般財源化を論議せよ

暫定税率問題


   1月30日与党(自公)は、暫定税率の期限を5月末まで最長2ヶ月間延長する「つなぎ法案」を、衆院総務、財務金融両委員会で可決、さらに同法案を議員立法として衆院本会議で可決し、「60日ルール」を使い衆院の3分の2の再議決で暫定税率の期限切れを防ぐとともに、その間に暫定税率を10年間延長する戦術を組んでいた。

 つまりこの「つなぎ法案」の戦術は、国会で論議もしないうちに国、地方を合わせ5.4兆円もの税収を、今後10年間にわたって道路建設だけに充てる仕組みを作ることを狙いとする“姑息”な戦術であった。

 当然野党は反発を強め、審議拒否の全面対決は避けられなかった。

 与党も野党も“心配”は世論の反発であり、野党の申し入れによって両院議長の斡旋が行われて妥協が成立した。妥協案は(1)徹底した審議を行った上で年度内に結論を得る。(2)各党間で合意が得られたものについては、立法府において修正する。(3)「つなぎ法案」は取り下げる。というものであり、この妥協は対決の先送りといえるものである。

 自民党だけでなく、地方と民主党を含めて「道路利権」の強力な既得利益集団が形成されているため、民主党の小沢は暫定税率撤廃で早期解散を目指す戦略を断念せざるを得なくなっている。戦術的に見れば問題を「ガソリン代値下げ」に矮小化した民主党の戦術に問題があったというべきである。

 暫定税率の一般財源化を日本の長期経済戦略として提起し議論すれば、道路族の反撃で妥協に追い込まれることもなかったのである。

 アメリカは軍需産業を経済戦略の柱にしている。EUはユーロファイターなどの共同開発で軍需産業を育成しながらも、経済戦略を環境分野の開発に重点を移している。

 これに対し、日本は相変わらずの”土木資本主義”で、その道路つくりを財政面で支えているのが、ガソリンの暫定税率であり、この法律の期限が日切れとなることから、今回の与野党の対立が生まれた。

 日本経済の発展から言えば巨額の土地代や、政治家へのワイロ(口利き料)が必要な道路建設は、経済発展の起動力としての力を失っている。毎年5.4兆円のこの財源の何割かを環境分野・先端産業分野につぎ込めば新しい産業が生まれ、日本経済が発展することは解っている。解っているが建設利権に阻まれて実行できないのが自公政権の現状なのである。

 小泉「改革」のときも、暫定税率一般財源化は論議されたが、すでに”建設族”という巨大な集団が中央と地方に形成されているため、普通のやり方では実行不可能なのである。

 かってアメリカが、発展する日本経済をダメにするために「プラザ合意」で円高を押し付け、430兆円の公共事業を要求し、それを受け入れた結果、日本はバブル経済となり崩壊させられた。“道路族”とはこのときの公共事業の“残滓”というべきものであり、この結果日本は「土木資本主義」から転換できないでいる。アメリカのプラザ合意の狙いは、日本経済を遅れたまま硬直化させることであったことを知るべきである。

 日本の対米自立の平和主義を貫く戦略的観点から、暫定税率を一般財源化し、日本経済の長期的発展の観点から、税金を新しい産業分野育成のために変えなければならない。民主党は経済戦略の立場からこの問題を取り組むべきで「ガソリン値下げ隊」などと言って解散総選挙の手段に利用するやり方では政権交代はおぼつかないであろう。

 EUだけでなくアメリカも環境分野への投資を拡大する方向へ動いている。日本は道路利権に群がる既得利益集団と対決し、政権交代を計る以外に暫定税率の一般財源化は不可能となっている。それほど自民党=道路族の利権が巨大に形成されているのである。

 今後10年間も不必要な道路ばかりに税金を使っていては、日本は環境という新しい産業分野形成に立ち遅れてしまうことは明らかである。

 道路利権を打破し「土木資本主義」からの転換を政権交代の経済戦略として提起することを民主党に求めたい。道路族が力を持つ自民党にはこれは絶対にできない改革なのである。そうすることで土木資本主義の自民党に変わって民主党が政権担当能力を国民の前に示すことが重要なのである。