No.80(2008年1月号から)

経済対策の内容で予備選の行方が決まる

アメリカ大統領選


   アメリカ大統領選の民主・共和両党の予備選挙が始まった。1月3日のアイオワ州で民主党は「変化」を強調した黒人系候補のバラク・オバマが「経験」を強調するヒラリー・クリントンに圧勝した。

 世論調査では民主党候補への投票で最も重要な要素として「変化」をあげた人が圧倒的に多く、ヒラリー陣営の作戦ミスと言われた。

 共和党では牧師出身のハッカビーが勝利した。

 1月8日のニューハンプシャー州の予備選では、直前にヒラリーが異例の戸別訪問を行ない、支持者との集会で目に涙を浮かべた一幕で女性の同情を誘ったことからオバマを制して勝利した。

 共和党ではマケインが「復活」を果たした。しかし共和党の指名争いは混沌としている。

 オバマの予想以上の健闘の裏には「変化」を望む若者がオバマ支持に回っていることも事実だが、ヒラリーが勝利すれば共和党が負ける可能性が強いので、共和党員がオバマへの投票に動いていることが背景にある。

 民主党の党員集会の投票に無党派の人や共和党が投票できるというのが日本人にはよくわからないが、一方では民主的なアメリカの選挙制度が、金のあるほうが勝利できる選挙制度でもあることを見ておく必要がある。

 予備選は今後サウスカロライナ(26日)、フロリダ(29日)を経て2月5日のスーパーチューズデー(22州で予備選)が山場となる。

 アメリカ経済は景気後退が表面化してきており、ドル安が避けられなくなり、原油高騰、株価下落の中で、個人消費が減退し、雇用問題も深刻化し始めている。

 ブッシュ米大統領は1月4日、バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長やポールソン財務長官らと会合を開き、その対策の柱は1000億ドル規模の減税が検討されているようだ。

 ヒラリーは1月11日に大型の景気対策案を発表し、「多くの人達にとって、アメリカ経済は充分機能していない。差し押さえを回避し、燃料高騰で苦しむ家庭を助け、雇用を支える」と強調した。またオバマは賃金税を一人当たり最大500ドル(約6万円)の戻し税実施等を発表した。つまり大統領選の争点が経済対策に移ってきたのである。これが選挙の行方を左右する可能性がある。

 ヒラリーの夫クリントン大統領の時代に、アメリカ経済を建て直し、財政を黒字にした実績がある。しかし共和党にしてみれば、女性のヒラリーよりは黒人系のオバマの方が戦いやすいのである。

 今後も共和党がオバマを勝たせる戦術を続ければ、ヒラリー・オバマの接線は長期化するであろう。

 日本にとってアメリカ大統領選は、首相ポストを決める総裁選より重要な選挙である。首相が誰になっても、政策にさほどの変化はないが、従属国にとって支配者であるアメリカの大統領の政策によって、日本の方向も左右されるのである。それだけにアメリカ人以上に日本にとって重要な大統領選なのである。

 ブッシュ政権は、任期をあと1年残すだけで、支持率も低く、レイムダック化しつつある。したがって次の大統領を民主党が取る可能性が強いのである。

 予備選の論戦の焦点が経済対策に移っていけば、アメリカ国民の現状からの脱却の志向からくるオバマ人気が、一転してヒラリー人気に変わる可能性がある。

 いずれにせよ今年末には次のアメリカ大統領が決まる。日本の解散総選挙も秋になる可能性が強く、場合によっては日米で同時期に政権交代が行なわれるかもしれない。アメリカはブッシュの戦争路線から“息継ぎの平和”へと転ずることになりそうだ。