No.79(2007年12月号から)

地方分権の姿を示せ

−問われる与野党の具体策−

投稿 文筆家 佐藤 鴻全


21cジャーナル編集部に佐藤 鴻全氏より投稿がありましたのでご紹介します。
佐藤氏のホームページ

◆内政の課題◆

 現状の政局の焦点はテロ対策新法に集中した感があるが、内政にも課題を抱えている事は言うまでもない。

 内政には特に大きな課題が2つある。

 1つは、消費税の福祉目的税化であるが、十数年前に小沢一郎氏が当時の大蔵事務次官斉藤次郎氏と組んで導入を目論み失敗した国民福祉税構想より、増税議論を避けるため基礎年金に特化しスケールダウンしたものの、現在の民主党の中心政策に据えられている。

 また、経団連等も同様の主張をしており、ここに来て自民党内からも消費税増税の下心含みであるが、福祉目的税化が避けられないと語られるように成って来ている。今後数年曲折はあれども、概ね方向は定まったと見てよいだろう。

 さて、もう1つの大きな課題は、地方分権である。政府・自民党は、「ふるさと納税制度」や、地方交付税特別枠の新設と地方法人2税と消費税の一部の税源交換が目玉の「増田プラン」を打ち出しているが、何れも役人の発想を出ず小粒・対処療法的である。地方分権への効果は期待できず、政府・自民党のアリバイ作りと、事務が煩雑になる分役所の焼け太りだけに終わるだろう。

 一方の民主党も、マニフェストに於ける個別補助金の基本的全廃と地方への一括交付化を含む地方固有財源保障の主張はよいとしても、地方への配分計算方式と導入プロセスが語られておらず、地方分権が具体像を結ばない。

◆地方分権の具体像◆

 小泉政権時代の三位一体改革は、国庫補助負担金と地方交付税の削減が行われる一方、税財源の移譲はこれに見合わず不十分である上に、国庫補助負担金はヒモ付き構造が温存された。 当初地方からも賛成の声が上がったが、蓋を開けて見れば地方分権に何一つ役立たず、地域格差の拡大をもたらしただけに終わった。

 地方分権を考える前に、先ずどのような社会を実現したいのかが語られなければならない。

 筆者は、「ナショナル・ミニマムを伴う自立社会」の実現が目指すべきものと考える。消費税の福祉目的税化等によりナショナル・ミニマム(国民全員に保障されるべき最低限の公共サービスの水準)を確保し、国民各員が一定の安心感を得ると共に、それ以上の部分は基本的に自己責任で賄う一種の覚悟を持つ事によって、国家の発展と調和が実現されるものと思う。

 地方分権、即ち国と地方の関係においてこれを当て嵌めれば、地方財源を@自税財源、A恒久的一括地方交付税等(半永久的な下駄)、B当面の財政をAで賄えない自治体への20年程度で漸減させる一括地方交付税等(時限的な下駄)に、どう分けて組み合わせるかがキーポイントとなる。

 これまで、政党、マスコミの議論では、@自主税財源、A及びB地方交付税等の2区分止まりであったため、具体的な配分計算方式と導入プロセスが見えず、地方分権が具体像を結ばなかった観がある。

 この他、地方分権を進めるには、どの税源を国と地方に分けるかの問題と、道州制など国と地方自治体の構造をどうするかの問題等がある。

 私見では、最も安定的な消費税は最も重要な基礎的社会保障に全額充当し、地方自治はその他の税財源で賄うべきと考える。また、国と地方自治体の構造については、地方の主体性をより高めるためると共に下水道や公共交通施設建設等の際の何らかの広域調整機能の確保を考え、数百の権限の強い大規模基礎自治体への再編、財源・権限の弱い調整機関的な道州、国の3階建て構造が望ましいと考える。

 自民、民主を含めた各党は、次期総選挙の最大争点として、これまでの個別散発的な案でなく1つのパッケージに組み上げた地方分権の具体像を示して頂きたい。

(2007年12月9日投稿)