No.78(2007年11月号から)

大連立さわぎが示す従属同盟の影

何が小沢を“乱心”させたのか?


  参院選で自民が大敗し、衆参のねじれ国会となったことで、日本の政局は“合従連衡”の局面に入った。だが17回も強硬採決をおこなった安倍首相には野党との話し合いは無理なことであった。

 参院選終了後の動きを見ると、読売新聞の渡辺が「大連立構想」を提起し、その後小沢がたくさんの不動産を所有していることがマスコミで取り上げられるとともに“守屋”への山田洋行の“ゴルフ接待”から、国防予算4兆8000億円をめぐる防衛利権の疑惑が浮上した。

 これらの動きは、テロ特措法の延長が、ねじれ国会で難しいと見たアメリカ国務省が、夏ごろから小沢へのさまざまな圧力を開始していたと報道されていることと符号する。とりわけ、かつての防衛族のドンであった金丸から防衛利権を受け継いだ小沢にとって山田洋行に始まる疑惑追及は、田中角栄を失脚させた「ロッキード事件」を思い起こさせることであった。

 しかし、アメリカの大統領任期があと1年となり、国内で批判にさらされているブッシュを小沢は軽視したと言える。

 小沢の国連重視の国際貢献は、単独行動主義のアメリカ戦略には協力しない、ということであり、日本の軍事力と経済力を自己の覇権戦略に利用しようとするブッシュ政権にとっては、許すはずがなかった。

 8月8日シーファー・アメリカ駐日大使は民主党本部に小沢をたずねた。小沢は同大使と報道陣の前で会見した。アメリカから見れば小沢はシーファーの圧力を拒絶したことになる。アメリカ離れと中国接近の小沢に、ブッシュ政権が不快感を強めていたことは間違いない。

 小沢はその後、自分の所有しているビルの入居者に家賃を返還し、また山田洋行から献金のあった600万円を返還した。しかし守屋前防衛事務次官への証人喚問で、接待への政治家の出席が表面化し、本格的な防衛疑獄への可能性が強まりつつあったことが、小沢をアメリカの狙う大連立に応じさせた圧力となったことは明らかである。

 小沢を大連立へと決意させたもう1つの理由は、衆院は小選挙区が主であり、しかも公明党と共産党が自民党の“安全装置”として存在している下で、次期衆院選勝利の展望が開けないことであった。小沢の大連立の目論見は、自民との政策協議を通じて、民主の公約を実現して政権担当能力を示すことであり、政策協議が決裂すれば福田は解散するしかないことになる。

 小沢の誤算は、民主役員会で大連立を拒絶されたことである。追いつめられていた小沢が“プッツン”したことで辞任表明と続投表明となったのである。アメリカの狙いは給油特措法を通すことだが、大連立が失敗(芽は残っている)したことで、焦点は小沢民主党が衆院での再決議を容認するかどうかである。

 安倍首相(当時)がASEANの会議でブッシュと会談し、その直後辞任をにおわせる発言をし、帰国してすぐ政権を投げ出したこと「私が民主党との会談の障害になっている」との安倍の辞任会見を見ても、今回の大連立さわぎのシナリオの作者はアメリカであることは明らかなのである。

 従属国の政治とは常に「盟主」(宗主国)の意向によって突然に変転するものなのである。

 アメリカ経済が後退局面に入りつつある中で、イラク占領の長期化を決意しているブッシュにとって「特定の国の戦争には協力しない」とする小沢は、大連立に取り込むか、それとも騙してでも政治的打撃を与えるべき対象であった。

 小沢は野党の党首であり、田中角栄のようにアメリカに先んじて中国と国交を回復し、世界各地で日の丸油田の買収を進めて、アメリカの“トラの尾”を踏んだわけではない。しかし毎年大訪中団を組織して親中姿勢を明らかにしている小沢が、アメリカへの軍事貢献を国連の名で拒否しようとしていることはブッシュ政権にとって許せないことである。

 小沢が一度はアメリカへの恐怖からか、大連立に応じ、あげく民主党内で孤立し、辞任と撤回という醜態をさらしたことは、政権交代を願う人々への背信にほかならなかった。しかし小沢は最後の一線で踏みとどまったので、アメリカの狙いは完全には成功したとは言えない。福田の訪米は、次の手を相談に行ったということである。

 戦後60年以上にわたる自民党の一党支配は政・財・官の既得利益集団のゆ着と対米従属を柱にして成り立っている。最近このゆ着構造が腐敗し、財政赤字で自民の支持基盤が細ってきたため、また小泉「改革」の大ブルジョア独裁とも言える政策が、自民党というオールキャッチ政党の存在を難しくしている。

 公明党が政権内で自民を支え、共産党が外から「たしかな野党」路線で野党票を分断する、これが今の日本の硬直した自民党支配の補完構造なのである。

 これを打破するのは対米自立という、民族的課題を正面から掲げる以外にないであろう。歴史が教えているのは、一国の主導権を握るのは、その国の民族的課題を掲げる以外にないのである。

 対米従属一辺倒の自民党売国政治の弱点は、対米自立という民族の悲願を正面から訴える政党の出現なのである。