No.77(2007年10月号から)

核無力化の実行性薄い妥協の産物

6カ国協議の合意文書


  北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議は、9月30日、非核化に向けた「次の段階の措置」について暫定的に合意した。

  合意の内容は、年内に3つの核施設を無力化するため2週間以内に専門家チームが訪朝し無力化に着手すること、北朝鮮が核を他国に移転しないこと、アメリカは北朝鮮に対するテロ支援国家指定を解除する作業を開始する、また見返りとして北朝鮮に重油100万トン相当の支援をする、等というものである。

  今回の合意の背景にはイラク戦争の泥沼化で外交的成果がほしいブッシュ政権と食糧不足とエネルギー不足に悩み、見返り援助に期待していた北朝鮮の利害が一致したものであるが、それゆえにアメリカの譲歩と双方の妥協からくるあいまいさを残した、いわゆる“玉虫色の合意”となっている。

  例えば

1)核無力化の中身が不明で、原子炉に穴を開け、再使用不可能とするのか、それとも北朝鮮の意図する短期の再稼動できる状態を維持するのか、無力化するといってもその中身があいまいであること

2)三施設以外の、建設中といわれる2基の黒鉛減速炉が対象外であること

3)ウラン濃縮型核開発の扱いが明確でないこと

4)北朝鮮がすべての核計画を年内に「完全かつ正確」に申告する保障がないこと、等である。

  ブッシュ大統領は、「朝鮮戦争に終止符を打ったと」自分の歴史的成果としたいがため、今回の交渉でアメリカ側は譲歩に譲歩を重ねた。このためアメリカ国内にも北朝鮮に多大な“果実”を与えることに反対する勢力がいると言われている。

  最近イスラエルがシリアを空爆したのは、北朝鮮が輸出した核関連施設だという報告が流れたが、これなどは、アメリカの北朝鮮への譲歩に反発する勢力の策動と言われている

  北朝鮮が核兵器を捨てる可能性は低く、ただ見返り援助を何回も引き出すために交渉に応じているだけである。はっきりしているのは、アメリカも中国も韓国も北朝鮮の金正日政権の延命を現状では望んでいるということである。

  北朝鮮の経済政策と治山治水の失敗からくる食糧不足とエネルギー不足は深刻で、この政権崩壊に伴う経済負担は、韓国一国で吸収できるものではなく、周辺国に重大な影響を与える可能性があることから、金正日政権の延命に各国の利害が一致しているということである。

  金正日政権の延命は、アメリカにとって在日米軍が日本に居座る上でも重要であり、世界第2位の経済力を持つ日本を自立させず、日本の軍事的脅威を押さえる“ビンのふた”としての在日米軍の再編費用(約3兆円)を日本に出させる上で、反日の金正日政権の存在意義と、その存続は重要なことなのである。

  イランへの核開発への強硬な態度と比べて対照的に、アメリカが北朝鮮に譲歩しているのは、対日重視のアメリカの戦略からきている。

  イランはユダヤ人国家イスラエルの脅威となるので、アメリカは核保有を北朝鮮のように容認しないのである。このアメリカの核をめぐる“二重基準”は中東が油田地帯であることも関連している。

  中国は、北朝鮮の金正日政権がいかに問題があろうと、この政権を維持しなければ米軍基地が自国のすぐそばに出来る可能性があるので、金正日政権延命を戦略決定としている。

  日本は、反日の金正日政権が続く限り、安保政策は「日米同盟」に頼らざるを得なくなるというのが政府の考え方である。こうして日本は従属国として在日米軍に国防をゆだね、戦後62年の長きにわたり自立の道を封じ込められている。

  つまり6カ国協議とは、北朝鮮の金正日政権の延命であり、裏面では日本の従属国への長期的封じ込めを狙いとしていることを知っておくべきである。

  日本の拉致問題は、金正日政権が続く限り解決は難しいのであり、その政権の延命のための6カ国協議に、日本が参加する意義は何一つとして無いのである。

  アメリカ、中国、ロシアは核保有国であり、自分たちの核保有は問題とせず、他国の非核化を強要する姿勢こそ大国主義と言うべきである。他国に核放棄を迫るなら自己の核放棄のプロセスを明らかにすべきである。
  重ねて言うが、北朝鮮は核を放棄する気はまったく無く、見返り援助欲しさに6ヶ国協議に応じているに過ぎない。

  北朝鮮は、半島国家としての特徴として、外交におけるしたたかさを持っている。この点が島国の日本と違うところである。南北の首脳会談でも、韓国側の選挙対策としての盧武鉉の考えを利用して経済援助をせしめている。つまりブッシュも盧武鉉も金正日に足元を見透かされているのである。