No.76(2007年9月号から)

イラク長期関与めざすブッシュ政権

石油利権の略奪狙う「石油法」制定


 ブッシュ米大統領は8月22日、ミズーリー州での演説で、第2次世界大戦のアジア情勢を引き合いに出して「米国のプレゼンスと忍耐」が日本と韓国などの繁栄をもたらしたことを強調し、イラク問題について長期関与に軸足を置いた発言を行った。

 ブッシュ政権は現在アメリカ議会に対し、イラク・アフガンの戦費約1470億ドルを追加予算として要求しているが、ワシントン・ポスト紙によればこれにさらに約500億ドル(約5兆8千億円)の追加要求を検討中といわれる。

 この戦費の上乗せは、アメリカ軍の増派によるイラクでの武装勢力掃討作戦を08年度まで継続する意図を示している。

 ブッシュ政権は、イラクのかいらい政権の首相であるマリキに「石油法」の制定を強く迫っている。この「石油法」はアメリカの石油会社の権益を今後30年間保証するもので、原油採掘のロイヤリティーのシーア派、スンニ派、クルド族への復興資金として配分するものだが、そのロイヤリティー額もアメリカ石油会社が決定できるようになっていることから、イラクの石油労働者が反対してストライキを闘うなどし、さらにはイラク北部の油田利権に固執するクルド人勢力も「石油法」の修正を求めている。

 イラクのマリキ首相は「石油法」を10月まで凍結して反対運動を抑制しようとしたが、ブッシュ大統領がこのマリキ不満を表明し、更迭もありうるとの考えを表明して「石油法」成立に圧力を加えた。

 現在のイラクはスンニ派とシーア派の宗教戦争に加えて、シーア派内でも米軍のイラク占領に反対するサドル派(5万人)と親米派の抗争が激化し、スンニ派内も反米派と親米派の対立をかかえている。つまり反米の統一戦線は今だ形成されていないが反米闘争は激化している。

 アメリカ軍の約16万人への増強による武装勢力掃討作戦も成果を挙げておらず、9月4日アメリカ議会に出された情勢報告も厳しい評価となっている。

 今のところブッシュ政権は任期いっぱいまで掃討作戦を継続し、米軍のイラクへの長期駐留によって、石油権益を保持し続けることを狙っている。したがって米軍のイラク駐留が続く限り、武装勢力の反米闘争も継続するのは確実である。

 イラクは石油埋蔵量が世界第2位であり、アメリカ石油会社はこの権益を30年間にわたって保持しようと策動している。アメリカ政府によるイラク議会への「石油法」制定の圧力は、法律や契約の形をとったとしても、本質は植民地主義そのものであり、いくら「イラクの民主化のため」とブッシュが主張しても、それは“植民地化”というべきものであり、イラクの労働者・人民の反発を引き起こさざるを得ないものである。

 アメリカ経済はサブプライム債権の崩壊で信用不安が高まり、株価も続落するなど、アメリカ経済が失速過程に入りつつあるため、かつて経済立て直しに導いたクリントン時代への郷愁がヒラリー・クリントンの登場を促す力として作用しつつある。次の大統領選でイラクからの米軍撤退を主張する民主党が勝利する可能性は高くなっている。

 石油産業と軍事産業の利益代表であるブッシュにすれば、何とか自分の任期中にイラクの治安を解決したいところだが、どうあがいても勝利は望めないのである。

 ブッシュ政権は当面イラク派遣を半減した形で、イラクへの長期関与の体制を築き上げたいと考えている。しかし第2次世界大戦時の日本と今のイラクはあまりにも違いすぎる。とても引き合いに出すべきことではないのだが、今のアメリカには巨大な石油権益しか目に入っておらず、結果泥沼は長期化することになる。

 資源と市場をめぐって軍事侵略を行い、失敗を重ねても懲りないのが「帝国主義」「覇権主義」の性(さが)なのである。