No.76(2007年9月号から)

政権投げ出した“ぼっちゃん政治家”の無責任!

オールキャッチ政党から大資本家政党への脱皮が生む混乱


 「なぜ今なのか」誰もが首を傾ける辞任劇だった。APECの会議に出席し、国際公約をした人物が、また参院選大敗後、強い辞任圧力を拒絶して政権を続投した人物が、国会の所信表明演説が終わり、今日から代表討論が始まるという時に、突然首相が辞任したのであるから、敵前逃亡であり、これ以上の無責任はない。こんな辞任をするならなぜ参院選大敗の責任をとって辞任しなかったのか、続投は混乱を招いただけではないか?という疑問が出てくる。

 今回の自民党の混乱は、小泉「改革」の階級的本質を捉えておかないと理解できなくなる。自民党がなぜ戦後60年以上も政権を担当できたのか?それは自民党が大資本家、中小資本家、農民などの“オールキャッチ政党”だったからである。小泉がかつて「自民党をぶっ潰す」と演説したのは、各階級の既得利益集団を票田とする“オールキャッチ政党”の自民党を、大金持ちと大企業の利益のみ代表する政党に切り換える為であった。つまり「改革」とは本質的に“大ブルジョワ政治”への転換のことであった。

 小泉は金持ちと大企業に減税し、庶民に大増税をやった。この小泉「改革」のツケで安倍は先の参院選で大敗したのである。

 小泉が安倍に、参院選で負けても辞める必要はないと語ったのは、甘い“ぼっちゃん政治家”を利用して、政局が大混乱になれば“小泉再登板”の芽が出てくるからであった。

 事実小泉は、チルドレンを飯島(小泉の秘書)が指導して、小泉再登板の署名集めをおこなっている。

 麻生が“死に体”となった安倍政権を利用して自身の政権継承内閣と位置付けていたことは事実であろう。そのことを見抜けず、人事権までゆだねて、使い捨てにされるのに腹を立て安倍は投げ出したのである。

 安倍が辞任の理由を、民主党の小沢に党首会談を拒否されたことを挙げているのは、子供じみたこじつけである。17回も通常国会で強硬採決しておいて、今さら話し合いもない。ただ安倍は“かっこいい”辞任理由がほしかったにすぎない。テロ特措法を通すための“捨て石”となって辞任する。これが安倍の美学だったのだろう。「美しい国」を掲げる以上辞任も美しく粉飾したかったのである。

 自民党内のドロドロした政争に疲れ果て、自分がブッシュに約束したテロ特措法延長は、帰国すると放棄され、いつのまにか自分の知らない「新法」路線が進んでいたのである。「自分のメンツはどうなるのか?!」これがカイライ化させられた安倍の無責任な辞任につながっていく動機となる。次々と政治と金の不正が出て、あげく自分の遺産相続スキャンダルでは国会の答弁が大変だし耐えられない。元々育ちのいい安部の思考は下々の者には理解できない。“ぼっちゃん”にとっては国民への政治責任より、自分のメンツの方が大事なのだ、とても「闘う政治家」とは言えない。安倍の政権“投げ出し”は麻生にとっての大誤算であった。

 こうしてテロ特措法国会は、冒頭から休会となり、自民党の後継総裁選出に変わってしまった。安倍の辞任会見に国民への謝罪がなかったのは、安部の思考には自分のメンツしかないのだから、それを求める方が無理というものである。

 安倍が書いた「美しい国へ」という本には哲学がない、あるのは自分のおじいさんへの誇り“血筋”だけなのだ。

 こうして自民総裁選の焦点は「改革」を継承するのか、昔のオールキャッチ政党へ回帰するのかに絞られる。福田の打ち出す政策が注目点である。この総裁選で誰が選出されても、内閣の位置付けは選挙管理内閣とならざるを得ない。

 新首相が2代も続いて国民の信任もなしに政権運営をするのは難しい。来年5月には年金5000万件の照合の公約期限が来る。自民党は年金問題で総選挙を争えば勝てないので、解散・総選挙は早めにおこなわれる可能性が高い。

 小泉「改革」のツケで庶民の生活は成り立たなくなっており、したがって小泉再登板は現時点ではあり得ない。小泉チルドレンが総選挙を勝ち抜くのは難しいのである。麻生は政権投げ出しに責任があり、谷垣の消費税大増税では選挙に勝てない。安倍の右翼路線に批判的だった福田しかない状況が生まれた。参院選の敗北を読んで政権から身を引いた福田には戦略眼がある。

 福田がテロ特措法を重視するのか、総選挙重視でいくのかがカギとなる。

 幸いブッシュ政権もレイムダック化しており、日本の政局の流動化は覚悟しているであろうから、テロ特措法が延長できなくとも日米関係が悪化するとも思えない。

 アメリカ経済が信用収縮過程に突入しており、中国経済のバブルのゆくえもあり、日本経済の先行きも、個人消費の伸びが維持できないのであり、総選挙の先延ばしは自民に不利となりかねない。

 軍国主義の安倍から、アジアとの協調の福田へと外交が変わっても国民の生活重視の民主党に、福田自民党が勝てる保障はない。

 自民党一党支配の終わりが近づいている。