No.75(2007年8月号から)

自民歴史的大敗に見る安倍内閣のおそまつ

一国の首相としての資質に疑問?


今回の参院選の党派別当選者数は自民37、民主60、公明9、共産3、社民2(その他略)で民主党の1人勝ちで、朝日新聞と毎日新聞は「自民歴史的大敗」と報じた。

 およそ選挙というものは、各党の戦略が人民大衆の要求を正確に捕えているかどうかで勝敗が決まるものである。

 安倍首相の参院選に向けた選挙戦略は、あえて「改憲」を選挙のテーマに掲げることで、改憲派と護憲派が野合する民主党を分断しようとする謀略的なものであった。

 これに対し、小沢民主党は小泉「改革」で人民大衆の生活破壊が進んだことに着目し「生活が第1」として@年金の全額支払いA1人月額2万6000円の「子ども手当」B農業の「戸別所得補償制度」を掲げた。

 安倍首相の選挙戦略は年金問題と政治と金の問題、さらには閣僚の失言であえなく崩壊した。

 安倍のキャッチフレーズである「美しい国へ」も、人々の生活不安に直面する現実とあまりにも乖離した抽象的なもので、発言すればするほど大衆は“白ける”事態となった。

 元々選挙は政権側が有利なものである。それは選挙前に訪朝し、拉致家族を取りもどして選挙に勝利した小泉の例を出すまでもない。

 外交や政権の政策で点数を稼ぎ選挙を有利に戦えるからである。

 ところが安倍首相は、民主党の農業政策や少子化対策への対抗策もなく、「財源の裏付けがない」点だけを指摘したが、マスコミに官僚の天下り先(公益法人)への何十兆円ものムダな補助金や、役立たずの公共事業を指摘されて有効な反撃もできなかった。財源をムダ使いしている者に財源論を主張する資格はないのである。

 倒産が急増しているのに抽象的な「再チャレンジ」を繰り返しても信頼は回復できない。大衆が求めているのは抽象論ではなく具体的政策なのである。

 「政治と金」の問題もキチンと説明せず「適法に処理している」と逃げてばかりでは、この問題をザル法でごまかしてきた体質を自ら宣伝するに等しい。止めが赤城農水相のバンソウコウだった。「何でもない」とこれまた説明責任を果たさなかった。国民をこれだけバカにした話はない。ニキビならニキビと説明し、バンソウコウは不要であった。

  安倍首相は幾多の不祥事にも何ひとつ指導力を示さなかった。小泉に勧められた“鈍感力”を発揮したとでも言うのか!  必要もないのに国会会期を延長し、強硬採決を合計17回も繰り返したことも理解できない。国民は安倍政権にファショ的危険性を見ているのに、本人は「成果」「実績」しか見えていなかったのであるから、安倍も赤城も周囲が見えていないのである。民意を正しく認識できない点に、首相としての資質に欠けている。

 “ぼっちゃん政治家”への必要な助言は“鈍感力の勧め”ではなく“気くばり”と戦略立直しであった。元首相もボケが始まっているのかも知れない。そうでないなら小泉は“再登板”を狙っている。

 無党派層の多くが今回民主支持に回っただけでなく、自民支持層の25%、社民支持層の18%、共産支持層の10%の票が民主党に流れたのも今回の参院選の特徴である。国民が3代目政治家の自民党に愛想尽かしし、政権交代を望んでいる現れなのである。

 政党とは政権を取ることを目標にしているのに、「たしかな野党」などという旗印で勝てるわけがない。自公の悪法成立を阻止するために、共産党が1人区で野党票を分裂させる意味しかない候補をすべて取り下げて、民主党への投票を呼びかけておれば、人民大衆の広範な支持を受けて比例票が多く集まったであろう。統一戦線的発想もなくなった共産党、9条護憲だけの党では「改革」で生活破綻に直面する人々の支持は得られない。共産党と社民党はいいかげんに法的観念論を克服した方がいい。

 共産党は保守2党制を批難する前に、自民の対米追随一辺倒に対し、小沢民主党が国連中心主義を対置している点を評価すべきなのである。着目すべきは自民との同一性ではなく、違いなのである。

 それにしても安倍首相のやることは理解しがたい。育ちがいいと下々の者には理解しがたいことをやる。

 選挙中にあれだけかばい続けたあげく、選挙後の8月1日に赤城に辞表を提出させた。前日に「内閣改造で再任しない」と言っているのだから、今になって「更迭」と言われても、それにどんな政治的意味があると言うのか?  安倍首相は「私が誤りだった」と国民に謝罪すべきだ。問われているのは任命者の政治資質であって、トカゲのシッポ切りではないはずだ!  今後参院が新政治資金規制法案やテロ特措法延長反対や最低賃金の大幅アップの法案を議決すれば自民党は一層追い詰められることになる。

 次の衆院選は、自民圧勝の後を受けてであり誰が首相になっても敗北するので、安倍に代わってドロをかぶる人物がいなければ、自民党は安倍で戦うしかない。自民党は民主議員の“あら探し”しか手が無い状況に追い詰められている。

 自民党の数々の不祥事は、戦後60年以上もの一党支配の産物であると国民は見ている。安倍首相が1年で年金をすべて照合すると公約した以上、衆議院は1年以内に解散となる。1年たてば安倍のウリが明らかになるからである。

 安倍は先の訪米で従軍慰安婦問題についてアメリカに謝罪したが持論を捨てたのかどうかについて未だに国民に説明していない。人々が首相としての資質を疑うのは当然である。

 とにかく参院の主導権が野党にうつったことで、国民は悪法の強硬採決の心配がなくなった。あとは「一度民主党に政権を担当させて公約を守るかどうか見てみよう」というのが国民の考えなのである。

 日本の政治の硬直性が打破されることに期待が集まるのは当然だ!