No.74(2007年7月号から)

危険で高くつく“日米同盟の強化”路線

アラブ人同士を闘わせる米戦略の誤り


 アフガニスタンでタリバンが勢力を回復し、そのタリバンの拠点がパキスタンのモスク(イスラム教寺院)と神学校であった。この拠点に対するアメリカの摘発強化の圧力がかかって、パキスタン国軍は7月11日、イスラマバードのモスクと神学校に突入し制圧した。

 この攻撃での死者は100人以上に達すると報じられている。この直後パキスタン国軍のトラックへの反撃のテロ攻撃が繰り返され、兵士数10人が死亡している。

 最近のイスラム地域の特徴は、各国政府軍とイスラム原理主義勢力を戦わせるというアメリカの政策が反映していることである。

 パレスチナでは穏健派のファタハとイスラム原理主義のハマスが対立し、ハマスがガザ地区を制圧した。レバノンでは政府軍が武装組織ファタハ・イスラムを攻撃し、内戦に突入している。

 パキスタンにおける国軍とイスラム原理主義との衝突も、レバノンやパレスチナと同じくアラブ人同士を戦わせるというアメリカの戦略が背後にあると見なければならない。

 アラブ各国の武装勢力がアメリカとイスラエルの侵略と闘おうとするなら、まず自国の親米派政府と闘わなければならない、という新たな局面が生まれている。したがってこれらアラブ各国の内戦化は避けられず、必然的にアメリカと闘うイスラム原理主義武装勢力の台頭を招くことになる。こうした武装勢力はイランやシリアが軍事支援をしており衰えることはない。つまりアメリカの「アラブ人同士を闘わせる」政策は逆にイスラム原理主義の勢力拡大に加担しているようなものである。

 一般にイスラム原理主義は弾圧を受ければ受けるほど過激化する傾向がある。政教分離をうながすのではなく、武力による攻撃は殉教者を拡大再生産することに実際になっているのである。

 イラクを見ても、増強された米軍によるイスラム教シーア派武装勢力への攻撃はなんの成果も上げていないし、逆に米軍への人々の恨みを拡大し、武装勢力を増強しているのである。

 中東における米軍の存在がイスラム原理主義を拡大再生産している構図が生まれており、このままではアメリカはイスラム原理主義の巨大な勢力を育て上げる結果となりかねないのである。つまりアメリカは対中東政策を根本的に見直す事態に直面しているのである。

 アメリカに協力するこの地域の国家にとって、アメリカの指示に従うかどうかは内戦を招く死活の問題になりつつある。

 アメリカは当面の敵である武装勢力と各国政府軍を戦わせることで各国を動乱に巻き込んでいるのである。しかもパキスタンは核兵器とミサイルを保有しており、パキスタン国内でのイスラム原理主義勢力の台頭は重要な意味を持っている。イスラム地域の動乱は拡大しており、アメリカとイスラエルは巨大な敵を作り出す危険に直面している。アメリカが軍事力を背景に内政干渉すればするほど事態は悪化していく。

 イスラエルがファタハをカイライ化しようとして、ハマスの台頭を招いたように、またレバノンやパキスタンの軍を使って武装勢力を弾圧すればするほどイスラム原理主義勢力の台頭を招く事態はアメリカとイスラエルにとって悪夢の循環なのである。

 またレバノンやパキスタン政府にすればアメリカの摘発強化に従うかどうかは、内戦を招く究極の選択となっている。

 アメリカ軍がイラクから撤兵する時、強大化したイスラム原理主義勢力の矛先がどこに向かうのかを考えるとイスラエルやレバノンやパキスタン政府は国家的危機に直面することになりかねないのである。

 米軍のイラク撤兵は、イラク北部とトルコ東部等を拠点とするクルド族の独立への動きを強めそれがトルコ軍の介入を招く事態もありうるシナリオなのである。

 つまり中東情勢の混迷は、むしろこれから激化するのであり、米軍の撤兵は混乱に拍車をかけかねないのである。アメリカ軍は撤兵したいが撤兵できないという“袋小路”に迷い込んでいる。

 これはブッシュ戦略の破綻であり、この破綻が北朝鮮に対するアメリカの屈辱的な外交的譲歩となって現れている。大国アメリカが北朝鮮になめられ、足元を見られているのである。ブッシュ政権のレイム・ダック化は隠しようもない。