No.71(2007年4月号から)

「年金改革」の口実となった社保庁のズサン管理

人民収奪機構としての年金「改革」


  日経新聞の報道によれば社会保険庁(以下社保庁)が昨年夏に始めた年金加入者からの加入記録の照会が約180万件にのぼり、このうち24万件で本人の申告と社保庁の記録に不一致があったという。

  読売新聞(3月30日付)によれば、01年4月から07年2月までの約6年間で年金支給漏れが21万8474件にのぼるという。これらは社保庁の保険料納付記録がいかにズサンであるかを示している。

  これらの年金支給漏れは、いずれも受給者からの指摘で誤りが見つかっており、しかもまだ支給漏れに気付かずにいる人も多いらしい。しかも未統合の年金番号が5千万件もあり、社保庁はズサンなままにしているのである。

  社会保険庁のズサンな年金業務が国民の不信を呼び、国民年金保険料を支払わない人も増えている。 国民年金保険料の05年度の納付率は61.1%にしかならないのである。悪質な未納者への差し押さえを意味する06年度の保険料強制徴収は35万件である。

  ズサンな年金管理をそのままにしていては納付率は高まるわけがない。失業者が300万人以上いてパートで働く人は1200万人もいる。 年金保険料を払いたくとも払えない人も多数いるのである。

  政府の労働力流動化の政策の結果年金を払えない人を多数作り出し、しかも年金管理は終身雇用時代のままだから、こういうことが起きるのである。

  パート労働者を厚生年金に入れるようにする厚生労働省案によれば、週30時間以上、月収は9万8000円以上、勤務時間は1年以上、当面は従業員300人以上の企業で働く人に限るという。ところがこの厚生労働者案で年金に入れる人はほとんどいないのではと言われている。

  企業は保険料を折半で負担するのが嫌なので、契約を1年以内に変更するので、パートで働く1200万人は結局年金に加入できなくなるというのである。

  社保庁の年金管理がデタラメなので、別の組織(民営化)にしようとする動きも出てきている。 また日本経団連は、消費税率を16%にして、これで年金をまかなうという案を発表している。企業が年金保険料の負担を逃れるための身勝手な案である。こういう報道が流れることも人々の現年金制度への不信が広がり「将来破綻するのなら今から払わない」という身勝手な考えを広げているのである。

  ニートやフリーターといった働く意欲を喪失するか、もしくは正社員になれなかった若者を作り出したのも「規制緩和」による野蛮な資本主義化の“産物”であり、しかも政府は金が無くなると、「年金改革」だ「老人福祉」だといって介護保険制度のように、新しい制度を作り、新たに保険料を徴収する。これは“福祉”ではなく福祉の名を騙る(かたる)新しい人民収奪機構の事である。

  介護保険制度などは実際に金がない人は利用できないのに、保険料だけは取られることになる。

  政府の「年金改革」も結局は新たに人民収奪を強化する口実なのである。日本経団連も消費税の「福祉目的税化」で、消費税率を16%にできると考えている。今や「福祉」とは社会政策としての人民収奪の口実として使用されているのである。

  旧ソ連が崩壊して、主要国首脳会議(サミット)で「平和の配当」が語られた。「平和の配当」とは、つまるところ革命の可能性が無くなったので「労働者の搾取を強化し、人民から大収奪しても大丈夫」ということであった。

  つまり現在先進国で進められている「規制緩和」「自由化」「民営化」とは“野蛮な資本主義化”のことなのである。 したがって先進各国でやられている「年金改革」も、年金保険料を上げ・支給額を下げ・支給年齢を引き上げる、というのが「改革」の中身なのである。

  そういう訳で労働者・人民の側も最近では「学習効果」もあって、政府の年金改悪の狙いを見抜いているので、今から保険料を払わない人が増えているのである。もちろん社保庁のデタラメな年金資金の流用も影響している。しかも消費税を16%にして「福祉目的税」化するのなら、今から払わなくてもいいと考えるのは当然である。

  社保庁のズサンな年金資金流用や管理までもが、人民大収奪機構の整備を意味する「年金改革」の口実となっているのは皮肉なことである。利用できるものは何でも利用するのが政治家や官僚どもの“人民収奪”に対する考え方なのである。