No.70(2007年3月号から)

党幹部の横領財産の合法化狙う

―中国全人代=「物権法」―


 中国の第10期全人代が開かれ、最終日の16日党官僚支配層にとっての懸案であった物権法案が採択された。報道によると物権法の骨子は以下のとおりである。

(1)国家、集団、私人の物権は法律の保護を受け、いかなる組織や個人も侵犯してはならない。
(2)農地収用には農民の社会保障費に足りる補償金を支払わなければならない。
(3)農民の耕地等には、当局の許可を得れば満期後も延長可能。
(4)住宅用地の使用も満期後も継続が可能。
(5)国有資産の損失を防ぎ、損害を与えた場合は責任を追及する。

等である。

 中国では、党中央官僚支配層(=走資派指導部)が国有財産を横領し、最近ではそれが地方幹部に波及し、土地取り上げをめぐる動乱が各地で発生している。全人代活動報告によれば、昨年一年間の汚職犯罪は23733件40041人にのぼっている。

 江沢民時代に「三つの代表」論という修正主義理論によって、表向きは新興ブルジョアの入党に道を開くことで、党官僚による「民営化」を口実にした国有財産の横領(=企業経営)が広がり、2004年には憲法が改正され「私有財産の保護」が明記され、その関連法としての「物権法」が中国走資派指導部の懸案となっていたものである。

 毛沢東を裏切った走資派指導部が悪らつなのは、「物権法」であたかも農民の財産を守るかのように装いながら、党幹部が国有財産を強奪して膨れ上がった自分達の「私有財産」を「いかなる組織や個人」の侵犯から守るための法を「物権法」として作ったことである。この法律で中国は1人前の資本主義になったと言える。

 当然にも中国の革命的人々は、今回の走資派指導部の国有財産横領の合法化を狙う「物権法」に強く反対している。

 産経新聞が2月23日に報じたところによれば、中国の「保守派勢力」(社会主義派のこと)は、インターネット上で「物権法反対要望書」を発表している。その骨子は以下のとおりである。

(1)「物権法」は公共財産の不可侵を定めた憲法12条などに違反。
(2)私有化は、貧富の差を広げ、両極分化と社会的危機を招く。
(3)国有企業は全国民の財産、汚職役人や富豪などのウジ虫、国際企業が巧みに強奪し、私有化してよいものではない
(4)指導幹部らの財産申告・公布法を制定せよ。
(5)国有企業の「売り出し」を全面的に停止せよ。
(6)中国政府は公有制経済と私有制経済の比重の計画を示せ。
というものである。

 これらの主張が示しているのは、?小平以来の党幹部が修正主義路線によって所有制(全人民所有と集団所有)を政治権力を利用して変え、公共の財産を横領し、その「私有財産」を保護しようとすることに中国人民の反発が強いことである。あまり表面化していないがこの「党幹部のウジ虫」どもへの反発は広がり、社会主義と資本主義の“道”をめぐる中国社会の対立は激化しているのである。

 今、資本主義化に批判的な人々は、死に直面した毛沢東が、なぜ「文化大革命」で党幹部への大衆の批判運動を展開したか、なぜ「造反有理」(人民の反乱には道理がある)の思想運動を展開したかを身にしみて感じている。

 最近中国・上海発の世界同時株安が発生したが、これは北京オリンピック後に起きるであろう“中国バブルの崩壊”の予兆といえるものであった。

 旧ソ連の崩壊でも解る通り、変質した社会主義国は、その本来持つ矛盾(建前の社会主義と実際の資本主義)から脆弱性を特徴としている。

 中国の走資派指導部が反日教育によって反動的民族主義(大国主義的中華思想)を煽ってきたのは、国内的危機(動乱)を外への戦争で切り抜けようとする打算があってのことである。

 今年の全人代で温家宝首相が、「和諧」(協調のこと)を強調したのは北京オリンピックに向けたものであり、現中国指導部の中華思想を背景とした大国主義と地域覇権主義の野望には変わりがない事を日本の人々は忘れてはならないのである。

 アジアの人々は、中国が脆弱性ゆえに持つ凶暴性への警戒心を高めなければならない。

 中国共産党の党内闘争の特徴は右から左へ、左から右へと極まるたびに反転を繰り返してきたことである。

 腐敗した走資派幹部への革命的奪権闘争の“予行演習”であった「文化大革命」の歴史的意義が問われる時が近づいているのである。