No.69(2007年2月号から)

北朝鮮に巨額の援助決めた6ヵ国協議の茶番劇!

“盗人に追い銭”で日朝の対立を温存


 北朝鮮の核問題をめぐる6ヵ国協議は2月13日合意がまとまり共同文書を採択した。

 今回の6ヵ国協議は、北朝鮮のミサイル発射と核実験の強行を踏まえ、北朝鮮の核恫喝を受け日本政府がアメリカ依存の国防路線の下で、日米の軍事一体化、米軍再編、在沖縄海兵隊のグアム移転(約3兆円の負担)、さらにはミサイル防衛計画の前倒し発注やイージス艦配備の前倒し(総額10兆円以上かかる)などが決まった事を受けたものであった。

 つまり日本の巨額の負担がアメリカの要求どおり決まったので、「日本敵視」の役回りを受け持った北朝鮮へのアメリカの“報奨”(ほうしょう)が今回の協議だったのである。
 共同文書によれば北朝鮮が寧辺の核関連施設を停止・封印することの見返りに重油5万トンを提供し、北朝鮮が非核化に向け次の段階に進めば、重油95万トンを支援するというものである。

 このほか日朝・米朝の国交正常化に向けた2国間協議等の5分野の作業部会の設置などが盛り込まれている。

 北朝鮮側の報道によれば、北朝鮮が核施設の稼動を「臨時中止」する見返りに、各国が重油100万トン分に当る経済・エネルギー支援を提供することになった、としている。この玉虫色合意では北朝鮮はウラン型核の開発を続けることが可能で、プルトニウム型核兵器も一時中止するにすぎないのである。

 今回の6ヵ国協議に先立つ米朝2国間協議で、アメリカは金融制裁についても30日以内に段階的に解除していくことで合意しており、今回の6ヵ国協議ではアメリカ政府の「テロ支援国家の指定解除の作業開始」まで入っている。これでは北朝鮮への援助も、アメリカへの日本の負担も“盗人に追い銭”と言うほかない。

 日本が主張してきた拉致問題は今後の日朝の2国間協議でやれ、と言うことだが、北朝鮮に巨額の支援を与え、金正日政権の延命を容認したあとでは、拉致問題で北朝鮮が譲歩するわけがない。

 つまり米中は日朝の対立関係を維持し、そのもとで日本の対米属国化に共通の利害を見い出しているのである。

 ロシアのプーチン政権は、朝鮮半島とヨーロッパをシベリア鉄道で結合し、シベリア開発を進め、EUのユーロ圏と東アジアを結合する戦略を持っている。

 アメリカは東アジアをドル圏につなぎ止めるため、朝鮮半島の対立固定化に戦略的利益を見い出している。日本の北方領土問題の解決はアメリカの反対で棚上げとなっている。

 中国は、アメリカがイラクの泥沼化で衰退し、やがてアジアから撤退に追い込まれた時に、アメリカに代わってアジアの覇権を狙っており、その時まで日本をアメリカの従属下に置き、軍事小国にしておくことに、アメリカと利害を等しくしている。

 つまり今回の6ヵ国協議は、米・中・朝が日本外交を虚仮(こけ)にしたことであり、安倍政権が反発を覚えていることはうたがいないことである。

 それは久間防衛大臣が、アメリカのイラク攻撃を「間違い」と批判したり、在沖縄の米軍基地の移転問題の日米合意をくつがえすかの発言をしたこと、さらには麻生外相がアメリカのイラク占領統治を「非常に幼稚」と発言したことに安倍内閣の屈折した反発が反映している。

 日本はアメリカと北朝鮮の結託による“茶番劇”で、対米属国化の下で長期に金を搾り取られる事態に直面しているのである。これはアメリカによる日本の国家予算の略奪である。こんなナメた外交をやる「同盟国」が信用できないことは明らかだ。イラクはフセイン時代アメリカの同盟国だったのに“いけにえ”にされたのである。日本国民はこの事実を絶対に他人事と思ってはいけない!

 アメリカは現在イラクへの米軍の増派を進めており、空母機動部隊などのペルシャ湾への増強から、イラン攻撃の可能性が強まっている。アメリカはユダヤ人国家の安全に関わる時と、油田の争奪に関わる時は“本気”になる。

 米軍のイラク・シーア派の民兵への攻撃とイランへの空爆が、ペルシャ湾の封鎖を招き、日本への原油の90%が一時的に止まる事態もありうるし、そうなれば日本の株価は暴落し、アメリカの“ハゲタカ”が日本企業株買収の最大のチャンスがおとずれる。

 日本国民は、アメリカの狙いがイラクとイランだけではないことを見ておく必要がある。つまり西を攻撃することで東を手に入れる戦略かも知れない?!

 残念なのは安倍首相の外交戦略がわかりにくい事である。

 今世界は多極化に向けた過渡期にある。それなのに日本には戦略を語る政治家がいないこと、「対米自立」を主張する政治家がいないことは情けないことである。

 日本国民は、対米追随一辺倒が“安上がりの安全保障”となる時代がすでに終ったことを知らねばならない。多極化の時代の外交は合従連衡の“多極外交”であり、日本は対米自立の戦略を持つべき時代がきているのである。