No.68(2007年1月号から)

グローバル化が招く地域紛争の拡大

荒廃する世界市場がもたらす危険


 ソ連が崩壊し、中国が資本主義となり、グローバル化の波が世界中に拡大した。発展途上国は急速に資本主義の商品経済に組み込まれ、富める者と貧しい者へと分化し、世界中で階級対立を背景とした、民族対立と宗派対立や部族対立がからみ合って激化している。

 国際紛争にはパレスチナ紛争やイラク戦争、アフガニスタン紛争のように、アメリカとイスラエルの侵略を原因とするものがあり、またアフリカやアジア、中南米の貧困層と富裕層との内戦に大きくは分けられる。またこれらの対立は民族や部族間の対立や宗教上の対立という“外皮”をまとっている場合が多いのである。

 イラクのように資源に恵まれたがゆえに侵略を招いたり、貧富の格差拡大がさまざまな勢力の内戦を激化させた例など紛争には多くの原因があるが、その真の原因をたどると、グローバル化による自由競争の波が背景に存在している。

 例えばグローバル化と、利子を否定するイスラム法とは矛盾せざるを得ず、対立を激化させることになる。

 アメリカの推進したグローバル化(新自由主義)の経済戦略が、結果として世界の国々を“勝ち組”と“負け組”に分化させ、“負け組”である国々の内部矛盾を激化させているのである。

 最近ではソマリアの内戦にエチオピアが参戦(介入)したりする紛争の国際化の兆しも現れている。

 今世界では約30カ国で内戦が展開され、国連の平和維持活動(PKO)は昨年度で16カ国と地域に拡大し、9万人余りのPKO兵士を派遣するまでになっている。

 アメリカのグローバル化(新自由主義)の政策が世界市場を対立と憎しみ、反米の坩堝(るつぼ)へと変えつつあると言える。

 世界の国々は、それぞれに歴史を異にし文化も異にしている。多民族国家もあれば複数の宗教を持つ国家もある。つまりアメリカが他国の文化や経済や政治上の特殊性を無視して自由化(市場開放)民営化、規制緩和を強要した結果、伝統産業が崩壊し、対立の激化で世界市場は今荒廃しつつあることの意味を理解しておくことが重要なのである。

 とりわけ日本は、労働市場の流動化と規制緩和で搾取を強化し、企業の高収益体質と低賃金化の政策によって格差を拡大し、日本経済は“外の市場へ”と向わざるを得なくなり、侵略性を強めている。“外の市場”とは戦乱で荒廃しつつある世界市場であり、したがって、9条改憲と愛国心教育等の戦争体制の推進が政治上の課題となり、右翼的政治反動化の局面を迎えているのである。

 ところでグローバル化が世界市場を荒廃させ、内戦状態にある国が約30カ国もあるということは、世界の市場が狭隘化していくことである。それはつまり市場と資源の争奪が激化することを意味している。アメリカのイラク占領は資源(石油)の軍事的略奪にほかならないのであり、世界は資源と市場の軍事的分割の段階へ、すなわち“戦争の時代”へと突き進んでいるのである。

 市場の狭隘化は、当面経済のブロック化(市場の政治的囲い込み)を推進する。EUのユーロ圏は4億9千万人の巨大市場であり、北米自由貿易圏に匹敵する。

 中東産油国は、新しい地域通貨をめざし結束しつつあり、アジアにおける共通通貨創出の動きも今後強まってくるであろう。

 つまり経済のブロック化は、ドルの世界通貨の地位を必然的に弱体化させる。しかもアメリカはイラク戦争でドルをタレ流し、経済的に疲弊しつつあり、ドル暴落は遅かれ早かれ世界が直面する事態なのである。

 アメリカの進めたグローバル化が、世界の不均等な発展をうながし、アメリカの一極支配の時代を終らせ、世界が多極化の時代に移行しつつあることは、歴史の皮肉と言わなければならない。断っておくが、多極化は結果であって、アメリカが求めたものではないのである。

 現在の多極化の特徴は、反米色を強めるロシアの国家主義的動きや、中国の経済・軍事的台頭、EUの東への拡大であり、これらがアメリカの相対的衰退をうながしている。

 前世紀の列強が競う多極化の時代、日本はドイツを同盟の相手に選び破滅を招いた。今、日本は世界中の嫌われ者となっているアメリカの数少ない同盟国として再び“孤立の道”を選択している危険を指摘しなければならない。

 アメリカの一極支配の時代なら対米追随一辺倒の外交でよかったのである。しかし時代は“多極化の時代”であり、世界は「合従連衡」の外交の時代に入りつつある。

 日本は多極外交で平和主義を貫くことで、あらゆる経済ブロックと友好関係をめざすべきなのである。対米従属から対米自立へと、日本外交の戦略的転換の時がきている。