No.68(2007年1月号から)

問題先送り姿勢が政権の弛緩招く!

安倍若輩政権の失敗


 道路特定財源の一般財源化の失敗、タウンミーティングのやらせ問題、政府税調会長人事の失敗、佐田行革相の「不適切な会計処理」による辞任、自民党の末松参議院議員の政治資金収支報告書への5000万円もの記載漏れ松岡農水相の「口利き」疑惑と、次々表面化する政府・自民党の不祥事は何を示しているのか?

 安倍政権は自民党の“総主流派体制”として生まれた。したがって党内に強力な批判勢力を持たず、しかも国民の支持率は71%と高かった。就任早々中国・韓国との外交を改善した安倍は、政府税調会長を官僚の押す消費税増税派に代えて、法人税減税と経済成長派の本間正明(阪大教授)を任命したが、その本間が高級官舎に家族ではない女性と入居していた問題で辞任に追い込まれた。

 安倍は本間に法人税を40%から30%へと減税(約4兆円)を発表させ、その減税の財源である消費税増税は、参院選後まで先送りすることを打ち出させていた。企業への減税の大盤振舞で、参院選の政治資金を調達する戦術である。このことは、その後発表された日本経団連の長期ビジョン「希望の国、日本」が2%程度の消費税引き上げと法人税約10%引き下げを掲げていることを見れば明らかである。

 つまり安倍政権の“緩み”は、総与党体制と論功重視の人事(起用する人物の精査を怠っていた)さらには参院選後までの問題の先送り等の政治的弛緩が招いたものである。ブッシュ米政権を真似て、参院選後まで消費税増税はタナ上げし約4兆円の法人税減税と「美しい国、日本」を繰り返せば参院選は勝てるという消極姿勢が“油断”であった。

 安倍政権が長期政権をめざすには、有能な軍師役が不在で、参院選を勝利する政治戦略がない! 「美しい国、日本」では、高負担に苦しむ国民の支持は得られない。

 これから一層小泉「改革」の負の遺産が高負担となって国民にかぶさってくるのである。しかも安倍政権は自民党内に強力な批判勢力を欠いている。つまりこの政権は、安住と弛緩にどっぷりと漬かっているのである。

 国民の多くが望んだのは、右翼政治家の安倍なら、小泉の対米追随一辺倒から転換して、多極外交をやるのではないか?アメリカの言いなりの「改革」による弱者いじめを止めるのではないか?という願望が政権発足直後の71%の高支持率であった。

 しかし今や、小泉と同じことをやっている安倍政権の支持率は40%台まで低下している。安倍が重視する拉致問題もまったく前進せず、国民は明日への希望を持てない状況にある。「景気回復」と言っても人々に生活実感はまったくないし、国の借金は増え続けているのに法人税を約4兆円も減税するのは“説得力”が無い!

 国民の雇用を破壊し、弱者に高負担を強いる“情け無用”の「改革」は、格差社会・犯罪社会・自殺社会を生み出しており、野党が連合して格差是正と高負担に反対して闘えば、参院選で自民の大敗北、安倍政権の退陣もありうる政治局面が生まれている。

 自民党の本来持っている腐敗構造が、小泉の自民党内に敵を創る「改革抵抗勢力」との対立演出時には表面化しなかったのは、政治的緊張があったからである。

 安倍は“総主流派体制”こそもっとも警戒しなければならなかったのである。福田が安部政権の短命を狙って、総裁選に出馬しなかった意図を、安倍は分析すべきであった。

 「日米の蜜月」と言っても、アメリカが日本の右翼的政権を支持しているわけではない。米・中が時間稼ぎの「6ヵ国協議」で朝鮮半島の対立を固定化したのは、日本の対米属国化を“日米同盟の強化”“日米の軍事一体化”として進めるための時間稼ぎであること、したがってアメリカは日本の民族的政権の誕生を最も警戒しているのである。

 先頃ブッシュ元大統領(パパブッシュ)が北京で、日本の首相の靖国参拝を批判し、遊就館の展示を批判したことがそれを示している。「靖国参拝については発表しない」(安倍)などというあいまいなごまかしを許すわけがない。

 安倍首相は「美しい国、日本」の国家像を鮮明にして参院選を闘うべきである。小泉と同じ対米追随なのか、それとも対米自立をめざすのか?をはっきりさせるべきである。「美しい国、日本」という抽象的言辞と、問題の先送りという消極的手法で、自分の右翼政治家としての政治手法を隠すことが政府と自民党内の政治的弛緩を招いていることを知るべきだ。

 政治家が自分の政治信条を隠して、選挙に勝てるわけがない。国民が知りたいのは安倍が売国か愛国か、どちらなのかと言う事である。

 自民党内には「政権支持率が40%を割るようだと、衆参同日選しか活路はない」との論議が出ていると報道されている。安倍が追いつめられて同日選に逃げるのか?それとも、あるべき国家像を掲げて参院選の正面突破をめざすのか、注目される点である。

 安倍が参院選で小泉の応援にたよるようでは、小泉再登板を演出するだけの役回りで終ることになる。国家主義者と言われている安倍は、自身の国家像を打ち出せるのか?まさに正念場を迎えている。