No.67(2006年12月号から)

長期政権めざし財界に大盤振る舞い

法人税減税をめぐる安部政権の動き


 首相の諮問機関である政府税制調査会の2007年度税制改正の答申案が、11月30日付新聞紙上で明らかとなった。その内容は一口で言えば、自民党のスポンサーである大企業と財界には減税の手厚い配慮、その財源である消費税のアップは参院選が終わるまで封印すると言うものである。

 具体的には企業に対して減価償却制度の償却加能限度額を撤廃することで約6000億円〜7500億円の減税、法人課税の税率を約40%から30%に減税することで約4兆円の減税を予定している。

 一方で大企業・財界に大減税、他方で「個人住民税の引き上げを検討すべき」というのはいかにも公平を欠いているし、何よりも富の再分配がなければ景気は後退局面を迎えることになる。

 大企業は1兆円2兆円という空前の利益を上げている。大手銀行も同様だが、それにもかかわらず法人税を何年もまったく支払っていない。「繰越欠損金制度」という優遇措置の結果である。これと比べて対照的なのが労働者・人民への負担の増加である。定率減税の廃止や個人住民税の定額分引き上げは個人消費を一層冷え込ませることになりかねない。すでに個人消費はマイナスなのである。

 つまり税調答申は、日本経団連などの財界の要望をすべて盛り込んで、そのツケ(財源)は選挙の後に大衆課税でまかなうというものである。

 個人消費を冷え込ませて、もうけすぎるほどもうかっている大企業に大減税をやれば、資金は国内に投資されず、海外に流出することになる。これでは「成長路線を税制面で支える」(答申)ことになり得ないことは明らかだ。

 日本は急速に寄生性・腐朽性を強めて侵略国家になりつつあることを知らねばならない。

 政府税調の御用学者どもは「企業の国際競争力」を法人税減税の口実にしている。また企業が減税でもうかれば賃金が上り、個人消費も伸びるかの主張をしている。これは詭弁というべきである。

 最近の企業経営の傾向は、利益を内部留保や株主への配当にあて賃金水準は年々低下していることを見れば、それは明らかではないか!

「企業の国際競争力」は法人税だけで決るわけではない、主要には生産性で決るのであり、近年この国際競争力アップの“企業の論理”で賃上げが抑制されてきた結果、個人消費が低迷し、日本経済の現局面における最大の弱点となっているのではなかったか!?

 大企業・財界に大盤振舞の減税を打ち出し、その財源は選挙が終わってから消費税率を上げると言うのは、いかにも大企業・財界に“媚を売る”見えすいた政治手法である。本来なら消費税増税で衆院を解散し国民に信を問うのが筋ではないか!

 昨年、郵政民営化で解散し、“刺客”をたてて“小泉劇場”を演出したあげく、約1年で党を除名した者を復党させて国民の強い反発をくらったので、今度は参院選が終るまで消費税率アップは言わないと言うのである。これが「美しい国日本」を掲げる安倍の政治手法であり、人民には増税、大企業・財界には減税、これが安倍の税制「改革」の総路線なのである。

 しかし重大なことは、この政府税調の方向では、日本経済は個人消費の落ち込みで“不況”に転落することは避けられないことである。

 日本経済の現局面では、企業の設備投資を誘引するのは、設備投資減税ではなく、個人消費を急伸させることで国内需要を拡大することである。

 拝金思想の広がりが、企業を強欲化させ、違法な偽装請負や賃下げ、リストラで利益を急拡大したために、日本経済の現局面のカナメの問題が賃上げによる個人消費の拡大にあることが理解できなくなっているのが財界と政府の認識なのである。

 大企業・財界と政府の強欲者達は、その強欲ゆえに大損する、あの童話の“よくばりじいさん”を演じているのである。

 需要の60%を占める最終消費(個人消費)の拡大なくして、どうして「成長路線を定着」(津島雄二自民税調会長)させられようか!

 安倍首相の魂胆は、参院選の勝利による長期政権を狙って、スポンサーである財界を「法人税減税」でよろこばせて、来年夏の参院選に勝つための“政治資金を引き出す”という点にあることを見ておかなければならない。

 つまり安倍首相は、長期政権という“私的利益”から、景気対策を展開しようとして、財政再建や景気対策上危険な法人税減税と消費税増税に踏み出そうとしているのである。