No.67(2007年12月号から)

通商国家としての多極外交を目指せ!

アジアの戦略関係の変化と日本の進路


 今世界の戦略関係が急速に変化している。アメリカの泥沼化したイラク戦争の行き詰まりからくる「単独行動主義」から「国際協調主義」への転換によって、世界の多極化が明確となった。EUのユーロ経済圏の拡大・中南米の反米国家群の誕生によってドル支配のほころびが明確になった。
 とりわけアジアでは、中国やインドの経済的台頭、北朝鮮の核保有国入り、イスラム原理主義の台頭によって、アジアにおいても相対的にアメリカ支配の退潮が明らかとなり、各国は生き残りをかけて戦略外交に鎬(しのぎ)をけずる時代を向えている。

 ロシア・中国・インドを中心とした“三角同盟”(上海協力機構)は日米同盟をにらんだものであり、同時にイランを“三角同盟”に取り込むことで中東をもにらんでいる。アメリカはインドへの接近を試みているが“三角同盟”を解体できるわけではない。

 ロシアが日本との戦略関係を望んでいるのは西でNATOと、南でイスラム勢力との対立を抱えているためであり、プーチンロシア大統領は北方領土2島返還で日本との関係改善で“シベリア開発”にはずみを付けたいと望んでいるが、アメリカ政府の“横やり”で実現不可能となっている。

 アジア各国は靖国参拝などの影響で、日本の軍事的・政治的自立を恐れており、対米従属の日本を望んでいる。中国とアメリカは、北朝鮮の脅威を利用して日本をアメリカの従属国にしておくことで利害を等しくしている。

 6カ国協議は朝鮮半島の対立の固定化(冷戦構造の維持)であり問題の先送りにすぎない。

 小泉政権下で日本の対米追従は一層進んだ。イラク戦争を支持し、自衛隊の海外派兵を進め、アメリカの望みどおり金融自由化など構造改革もすべて受け入れた。

 安倍政権になっても、防衛庁の防衛省への昇格、集団的自衛権をめぐる動き、10兆円以上負担させられる日米のミサイル防衛、自衛隊と米軍の一体化というふうに“日米の蜜月”の名で日本の属国化が進行した。

 この「日米同盟の強化」とは、さしずめ“人食いザメ”(アメリカ)にくっついて生きていく“小判ザメ”(日本)に似ている。

 本来一極支配から多極化への時代の変化は「一辺倒外交」から「多極外交」への転換の時代であり、別な表現をすれば「合従連衡(がっしょうれんこう)の時代」なのである。小国にとって一極支配の時代には不可能だった“自立”が多極化の時代には「多極外交」によって可能となるのである。

 ところが小泉政権も安倍政権も一貫した対米追従一辺倒の外交を展開している。これは自国の運命を他国にゆだねる無責任きわまりない“小判ザメ外交”といわなければならない。

 アメリカがイラク一国の占領統治の力すら失い、中南米と中東は反米の嵐が吹き荒れ、EUは脱ドル体制を追求し、ロシア・中国・インドの三角同盟の中で、日本は衰退するアメリカと運命を共にするのか?進行する経済のブロック化の下で、対米追従一辺倒で通商国家である日本が生き延びられると考えているのか?!

 「美しい国」などと歯の浮くような事を言いながら、教育基本法「改正」案で愛国心教育を注入する体勢を整え、国民投票法案で9条改憲を準備し、ただアメリカの為に戦争体制を進めながら、国民の前には自国の戦略さえ示せず、ただ対米追従一辺倒では話にならないのである。

 世界とアジアの戦略関係がこのように変化しているから、日本はこのような戦略で国の安全保障を進めていく、となぜ説明できないのか?それは日本が従属国だからである。アメリカのように産軍複合体が巨大で、戦争をやることが自国の国益となる軍事国家なら“人食いザメ路線”でもいいのである。しかし日本のような通商国家は、どのような経済圏とも貿易しなければ生きていけないのだから、対米自立を展望した「多極外交」に転換すべき時を見失ってはならないのである。それは一国の死活の問題なのである。

 安倍政権を見ていると、ただ参院選に勝利して自己の政権の長期化だけにしか関心がないように見うけられる。少なくとも日本の国民にあるべき国家像、戦略像を示していない。アジアと世界の戦略的関係の変化の中で日本外交は“小判ザメ”外交のままでよいのか?!が今問われていると思うのである。
 なさけない話だが、日本の議会で戦略が討議される事は一切ない、誰もが対米追従でよいと思っているのだから話にならない。

 大国の属国として生きる国家をめざす者が「愛国心」など語る資格などないのである。

 日本は“血塗られた人食いザメ”(アメリカ)にどこまでも追従する“小判ザメ外交”を転換せよ!と声を大にして叫ばねばならない!