No.66(2006年11月号から)

「いじめ問題」の本質は何か?

弱肉強食経済の教育への反映


 教育行政のほころびが表面化している。その1つが「いじめ」を受けていた子供達の自殺が急増していることである。担任教諭が「いじめ」の言動を繰り返していた例や、学校が自殺した子供の遺書を一年間も隠していた例もある。

 また「いじめ」の事実を書いた遺書があるのに、校長が「いじめ」による自殺をテレビカメラの前で否定する例もある。

 このほか校長のパワーハラスメントで自殺した教師や、父母に宿題で文句を言われた若い女性教師が自殺する事例も起きている。

 警察庁のまとめでは「いじめ」(暴行などの事例)の件数が165件にのぼるのに文部科学省の調査では「いじめ」は“ゼロ”だったというのはどういう事か?!それは文部科学省が「いじめ」問題に正面から取り組まず、隠ぺいしていたことを示している。

 北海道教育委員会は、自殺した小学6年生の「いじめの遺書」のコピーがファックスされていたのに、こともあろうに紛失していた。 これでは問題の解明など望むべくもない。

 警察庁は10月19日、自殺統計の原因・動機の分類に「いじめ」や「自殺による保険金支給」の項目を加える集計方法へ改めることを決めた。文部科学省は10月19日都道府県・政令指定市教委の担当者を集め「いじめを隠すな」と繰り返し訴えた。今ごろ「隠すな」と指示を出す文部科学省は“ダメ役所”の最たるものである。安倍首相は「教育改革」の前に「文部科学省改革」をやった方がよい!

  また全国の進学校が地理と歴史等を教えておらず、卒業に必要な科目を履修できていない問題も発覚している。

さらには政府が「教育改革タウンミーティング」で「やらせ」発言を組織していたことが発覚している。これは明らかに政府による世論誘導である。

 政府は、相つぐ教育問題の表面化に対し、教育委員会の権限・機能強化に向けた検討に着手する方向を明らかにしている。

 安倍首相は「教育再生会議」の会合で、教育免許の更新制や学校評価制の導入の必要性を強調した。これは教育の国家統制を強める狙いがあり「愛国心教育」の「教育基本法改正案」とセットになっている。

 現在教育現場で起きている問題と政府・文部科学者などの打ち出す対策が、まったくチグハグなのはどうしてだろうか?それは彼らが教育現場の混乱の原因を正しく把握していないことと、恣意的な狙いからの「教育改革」に原因がある。

 リストラ経営で労働者を退職に追い込む「いじめ」が横行している反映であり、能力主義の差別選別の教育の破産であることは明らかだ。

 したがって「愛国心教育」や教育委員会の「権限・機能の強化」による統制の強化で「いじめ」がなくなるわけがないのである。

 現在起きている教育問題や社会問題(自殺の増加や犯罪の増加)は、アメリカ言いなりの規制緩和・自由化、民営化の政治による“弱肉強食”の経済に原因があることを鮮明にしなければならない。

 必修科目が履修できていない問題は、終身雇用から能力主義の転換で、学歴社会の傾向が一層強まり、その結果高校の予備校化が全国的に進んでいることを示している。

 政府は、“教育の荒廃”の原因が安倍首相が「受け継ぐ」と言っている「改革」が原因であることを認めることになるので、わざとトンチンカンな対策を打ち出しているように見える。「日の丸・君が代」ばかり力を入れてきた文部科学省の責任は重大である。

 アメリカの戦争政策に日本が軍事面で「貢献」するために「日の丸・君が代」や歴史教科書の改悪や愛国心教育を進めてきたのに、歴史が高校で教えられていなかったのであるから“皮肉”としか言いようがない。

 政府や行政や企業は「規制緩和とは法律を守らなくてもよいこと」と解釈している。違法な「偽装請負」や「残業代の未払い」が横行し、「必修科目が履修されていなかったり」「いじめ」の報告がされていなかったりしている。

 法律が大企業や行政に守られていないのだから法治国家は成り立たない。権力者が法律を守らないのだから、犯罪が増えるのは当然と言うほかない。

 日本社会の混乱の原因は、すべて政府の「改革」に原因があることを鮮明にしなければならない。