No.65(2006年10月号から)

本音隠す安倍“猫被り政権”

ブッシュの手法まね政権の安定を優先


 発足した安倍内閣の特徴は、日本版国家安全保障会議(NSC)構想に見られるように、アメリカ・ブッシュ政権を手本にしていることである。首相補佐官も定員いっぱいの5人、うち4人は国会議員を充て準閣僚級に位置付け、官僚に依存しないで政策立案能力を持とうとしている。

 安倍の衆参両院の本会議での初の所信表明演説では「美しい国、日本」を連発し、ブッシュ政権発足当初の「思いやりのある保守主義」の連発を思いおこさせた。

 この演説で安倍は、憲法解釈上の集団的自衛権の行使について具体例を研究する考えを表明するとともに、現行憲法の改正手続きを定める国民投票法案の早期成立を主張した。安倍らしさはこれぐらいで、村山談話の「植民地支配と侵略」河野談話の「従軍慰安婦問題」を認め「基本的にその精神を引き継いでいく」と語った。

 つまり安倍は右翼政治家としての持論の歴史認識を一切表明せず、自らの本音を封じ込める戦術をとっている。

 また靖国神社参拝についての中国や韓国、欧米諸国からの厳しい注文に対しても、安倍は“外交と参拝問題を切り離すため”として参拝するかどうか明言しない方針を打ち出している。マスコミはこれを「あいまい戦略」と言っている。

 ごまかしの安倍“猫被り政権”は何を狙っているのか?

 安倍とそのブレーンの頭にあるのは、総裁選の出馬をさけた福田の狙いがある。福田は来年の参院選では、安倍が右翼的持論で敗北し短命政権で終わると読んで身を引いたとみている。したがって安倍は、来年の参院選までは右翼色は出さず「美しい国、日本」を連発して、国民大衆に好印象を与えることを優先し、参院選で過半数を維持して、政権の安定を狙っているのである。

 こんな時に誂えたかのように起きたのが北朝鮮の核実験である。さっそく安倍のNSC構想の生きる場面が現れた。

 この北朝鮮問題もあって安倍の訪中・訪韓も共通議題の出現でスムーズに実現した。

 安倍はこの北朝鮮制裁問題で集団的自衛権の一部合憲への突破口を開き、ミサイル防衛の早期配備でブッシュの期待にこたえ、危機対応能力を示して参院選をのりきり長期政権への道を開く戦略である。
 しかし安倍の右翼政治家としての本音を隠した“猫被り”がいつまで通じるか?という不安がつきまとうし、「イノベーション」などカタカナを並べれば新鮮さが出るというものでもない。

 報道によると塩崎官房長官が語ったところによれば、今年9月に塩崎は、アメリカの前国家安全保障会議アジア上級部長から、日本版NSCについてのアドバイスを受けたという、つまり安倍の日本版NSC構想とは、アメリカの戦略構想とリンクしているのである。

 ブッシュの「反テロ戦争」とは大量破壊兵器を口実に展開されており、日本は「世界の中の日米同盟」として、その軍事的役割を求められ、米戦略に組み込まれている。

 今のところ、アメリカは北朝鮮の核実験に対して「外交的解決」を口にしており、経済制裁と日本に対するミサイル防衛システムの早期配備を求めることになる。つまり北朝鮮の核実験は、アメリカによる日本の国家予算分捕りを早めることになる。

安倍の「日米同盟の強化」が非常に経済的に高いものとなるとわかった時、首相としてのタテ前と国家主義者としての安倍の本音の部分との矛盾が激化することになる。

 安倍新政権が、小泉と同じ対米追随一辺倒となるのか、それとも日本の国益を、アメリカに対して貫けるのか?注目したい。