No.6(2006年10月号から)

北朝鮮の核保有で問われる日本の国家戦略

対米自立か属国化か


 北は10月3日に外務省声明で「核実験をすることになる」と公表した上で、10月9日午前には地下核実験が成功したと発表した。これを受けて国連安保理は10月14日対北朝鮮制裁決議を採択した。

 この北朝鮮の核実験は、アメリカの金融制裁に反発して行なわれたものであるが、皮肉なことに11月の中間選挙を前に苦戦しているブッシュと、首相になったばかりの安倍にとって、極めてタイミングの良い核実験となった。

 ブッシュ米政権は、中間選挙に向け北朝鮮の核実験が「クリントン前政権の北朝鮮政策の結果である」として民主党を攻撃し、同時に日本に対し日米同盟の強化とミサイル防衛の前倒し配備を求めた。

 首相に就任したばかりの安倍にとっては、北朝鮮の核実験という北東アジア共通の戦略問題で、訪中・訪韓という外交案件を成功させ、安保理の制裁を有効あるものにする船舶検査(臨検)のための「周辺有事」と集団的自衛権の見直しに公然と乗り出すことになった。

 アメリカは時間稼ぎの北朝鮮問題“棚上げ”のための「6カ国協議」を続けながら、金融制裁で北朝鮮を追い詰め、ミサイル開発と核爆弾開発をうながし、これによる危機を利用して「日米同盟の強化」の下で米軍と自衛隊の一体化を進め、日本の戦略的取り込みを進めている。

 それは日本から見れば、国家の安全保障をアメリカにゆだねる属国化にほかならないのである。

 安倍政権が進めるミサイル防衛の前倒し配備には今後10兆円以上の莫大な資金負担を必要とすることになる。「北朝鮮の核実験」によって、日本は今後アメリカの核の傘の下で莫大な国家予算をアメリカに分捕られることになる。

 核兵器とは相手がそれを保持していれば使えない兵器となる。つまりは「核抑止力」と、費用がミサイル防衛より安いという面から、日本国内で今後「核武装論」や、短期日で核保有ができるよう準備を先行させる「核の潜在的保有能力強化」による「核抑止戦略論」が出てくるのは避けられない。

 世界は観念的な「非武装中立」や「非核三原則」では国防や戦略を論ずることができない時代に突入しているのである。 「9条は日本の宝」などといっている人たちは客観的にはアメリカの手先として日本の属国化に手を貸していることになる。現実に核を持たないイラクは侵略され、核を開発した北朝鮮は“形だけの経済制裁”なら、弱小国が核保有を目指すのは当然である。北朝鮮・パキスタン・インド等の核保有国入りが世界の多極化をうながすのは避けられない。

 すでに発展途上国(第三世界)の反米の炎はかつてない強まりを示しており、アメリカの核恫喝には核開発しかないと考える国が増えている。一国の独立を守るには抑止力としての戦略兵器なしに不可能な時代なのである。戦略兵器の保有は、その国の主権の問題であり、干渉する権利は誰にもないのである。

 北朝鮮の核保有で問われているのは、対米追随か、対米自立かという日本の戦略問題なのである。

 日本が世界の戦争勢力(アメリカ)に追随して戦争路線を行くのか、対米自立によって平和主義を守るのか今問われている。ただし「非武装中立」では他国の侵略を招き平和を守れない。日本は対米自立・武装中立で平和主義を貫く国家戦略を持つべきだ。

 重要なことは、日本の軍国主義化を恐れる周辺国が、日本の自立に反対し、アメリカの属国化を望んでいることである。日本は平和主義を堅持するために自立すること、アメリカの戦争には決して加担しないとする前提に、自立の必要条件を整えるための“多極外交”を展開すべき時である。