No.63(2006年8月号から)

イスラエルのレバノン侵略糾弾!

“力の行使”を拡大する愚かなふるまい


 7月12日にレバノン南部でイスラエル兵2名が、イスラム教シーア派民兵組織ヒズボラに拉致されたことで、イスラエルはレバノンへの大規模な空爆を行った。これに対してヒズボラが中距離ミサイルでイスラエル北部に反撃した。この反撃で苦戦となったイスラエルは地上軍を投入、大規模なレバノン侵略戦争となっている。

 イスラエルは、パレスチナ・ガザ地区でも和平を放棄して侵攻している。イスラエル軍の侵略によってレバノン市民約1000名以上が死亡もしくは行方不明になっている。イスラエル軍は7月30日にはカナ村の非難所を空爆し、34人の子供を含む56人を殺して、進行しつつあった和平工作を粉砕した。

 またイスラエル軍は、国連レバノン暫定駐留軍の10施設に対し、146回も空爆し、国連要員4人が死亡するなどその暴虐ぶりが世界中の批判をあびている。

 アメリカ大統領のブッシュは「イスラエルには自衛権がある」とイスラエルの侵略を擁護した。

 イスラエルのレバノン侵攻の狙いは「ヒスボラの武力の解体」といわれるが、ヒズボラは1976年の中東戦争でイスラエルに占領されたシャバア農場の奪還のために闘っている。

 イスラエルは空爆ではヒズボラをせん滅できず、地上軍を投入することになった。地上軍の投入はイスラエル兵の犠牲も増えることになる。この戦争ですでにレバノン市民70万人が新たに難民化した。レバノン人民の怒りはかってなく高まり、犠牲を恐れずイスラエルと闘うヒズボラへの支持が急速に拡大している。

 アメリカは国連安保理での停戦決議と国際部隊派遣に反対して、論議を意識的に長引かせ、イスラエル軍をレバノン攻撃の時間を確保している。

 イスラエルは、問題の根源であるパレスチナ問題を解決せず、利用し、テロを口実に侵略を繰り返し領土を拡大してきた。そのたびにアラブの人々の怒りを高め、テロを誘発し、それをさらに侵略の口実として“大イスラエル主義”を実行してきた。今回のレバノン攻撃は、イスラエルの右派と軍部が占領地からの撤退による和平路線の破壊を狙ったものである。

 アメリカのテロを口実としたアフガニスタン・イラク侵略以降、世界は“力の行使”の傾向を強めて、戦乱が拡大していることに注目しなければならない。

 アフガニスタンではタリバンが力を盛り返し、イラクは宗派対立が内戦化している。“力の行使”が一度行われると、国と国の対立と民族間の憎しみを強め、戦争を拡大再生産することになる。

 その結果、世界の経済市場は乱れ果て、経済の軍事化が世界的規模で進行している。しかも国連が無視されるだけでなく、“力の行使”の対象となっては、もはや世界に“調停者”がいない時代となったことを示している。

 戦乱の拡大が原油高を一層促し、世界経済に重大な打撃を与えようとしている。

 イギリスではブレア首相のブッシュへの無批判な追従に国民の批判が集中しているし、アメリカでもイスラエルの暴挙への批判とイラクからの撤兵の声が出ている。

 ヒズボラはイラン製ミサイルでイスラエルを攻撃しており、ヒズボラを支えているイランやシリアをイスラエルが攻撃する可能性もあり得る局面を迎えている。

 アメリカはイスラエルに爆弾を空輸しており、イラクでは1カ月に80億ドル(9200億円)の戦費を消費し、しかもいつ終わるとも言えない泥沼になっている。

 アメリカが中東で大消耗戦に突入した以上、ブッシュは北朝鮮にも中国にも当面手を出すことができない状況になっている。

 世界は戦争の時代に突入しつつあり、その中心的戦争勢力はアメリカであり、その凶暴性が今や世界の脅威となっている。イスラエルは、このアメリカの凶暴性とイラク占領をたよりとしてレバノン侵略にのり出したのである。

 アメリカの凶暴性は強さの現れではなく、覇権を失いつつある弱さの現れなのである。 見ておかなければならないのは、ロシア・中国・インドの上海協力機構(三角同盟)がイランをオブザーバーとして参加させていることである。同協力機構は、アメリカの一極覇権主義に反対して、多極世界をめざしており、アメリカを中東の泥沼の中で疲弊させることをもくろんでいる。

 アメリカ経済は戦費の重圧と原油高の中で不況に突入しつつあり、この不況がブッシュの戦略に与える可能性を見ておかなければならない。

 アメリカが泥沼からの出口戦略を見い出せるのか、それとも戦火を拡大するのか、秋の米中間選挙を前にアメリカの戦略のゆくえが注目される。つまりイスラエルのレバノン侵略は、ブッシュ政権の今後の戦略を問うものとなっている。

ネオコンが主張していたように反テロ戦争を20年間展開するのか、それとも“息つぎの平和”へと転換するのかは、ヒズボラを支えるシリアとイランを戦火に巻き込む意思があるかどうかで判断できる。