No.62(2006年7月号から)

北朝鮮ミサイル発射の背後にアメリカの陰謀


 現在の北東アジア情勢を分析する上で重要なことは、この地域の各国の戦略関係を見ておくことである。

 アメリカは、イラク戦争の中で自己の戦略的願望(世界制覇)を満たすには力が不足している事に気付いた。ここからブッシュの「世界の中の日米同盟」による日本の戦略的取り込みが出てくる。特にEUが東ヨーロッパへ拡大し、ユーロの地位が上昇している中で、世界第2位の日本経済のドル圏への取り込みによる日本の金融資産と国家予算の略奪が、イラクの油田確保と同様の戦略的価値があるとブッシュ政権は考えている。

 そのためには北東アジアの対立を固定化し、北朝鮮の核とミサイルを対日圧力として利用する必要が出てくる。問題の先送りとしての「6カ国協議」の路線はアメリカの必要から生まれた。

 中国は経済発展を当面の戦略課題としているが、資本主義化を進める中で、党幹部の国家財産の横領と、土地取り上げに対する人民の反抗が高まっており、靖国参拝を利用した反日運動は走資派幹部の唯一の危機乗り切り策となっている。これは韓国も同様で、政府が日本批判をすれば政権支持率が上昇するのである。

 アメリカは“在日米軍は日本軍国主義を封じ込めるビンのふた”論で、日本の属国化についての中国と韓国と北朝鮮の戦略的合意を形成している。つまり反日運動と北の核、ミサイル騒ぎは日米同盟強化に向けた“できレース”なのである。

 1998年の夏、当時の小渕内閣はアメリカが要求していたミサイル防衛への日本の調査費(約10億円)を閣議で供出しないことを決めた。

 同年8月31日に旧ソ連製ミサイルを改造したテポドン1号が発射され日本領空を通過した。驚いた小渕はミサイル防衛への参加を決定し、調査費の拠出を決定(98年9月2日)した。この1年後、北朝鮮はアメリカなどから原油50万トンと軽水炉の支援を受けることになった。

 さて今回北朝鮮が7月5日にミサイル7発を発射した狙いは、アメリカにとって重要な在日米軍再編の3兆円の日本負担とミサイル防衛の配備5兆円の国家承認を確実にすることである。アメリカの高官と北朝鮮の高官はニューヨークで緊密に協議しているのだ。

 精密誘導装置のついていない北朝鮮のボロミサイルの実験を、日本のマスコミが大騒ぎしたのは、日米同盟強化にともなう日本の資金負担を「やむをえない」として日本国民に受け入れさせるためであった。

 こうして日本が米英仏などと共同で国連安保理に提出した制裁決議案は、アメリカの消極姿勢と中国・ロシアの反対で制裁文言を修正した形だけのものとなった。

 北朝鮮は同決議をただちに拒否した。

 ブッシュには当初から日本に強硬派を演じさせながら、アメリカが日本の決議案とはまったく考えを異にしていると表明し、ライス国務長官は「アメリカは北朝鮮に対し武力行使しない」と声明し、国防長官は「北朝鮮のミサイルは脅威ではない」と語った点で“できレース”が表れている。

 こうしてアメリカは引き続き北朝鮮の“脅威”を存続することに成功し、日本の属国化も前進することに成功した。アメリカにとっては北朝鮮のボロミサイルも大きな価値があるのである。

 前回と同じように今後アメリカから北朝鮮に“ごほうび”が送られることになる。それは金融制裁の解除や原油支援が「6カ国協議」復帰への“見返り”として行なわれる可能性が強い。

 アメリカが北朝鮮に対する中国の支援と「太陽政策」による韓国の支援を許容しているのは、金正日政権の存続の戦略的価値(それは日米同盟の敵としての役回り)を認めているからにほかならない。

 小泉がロシア派の鈴木宗男を追い落とし、中国派の田中真紀子を外相から追放し、靖国神社参拝で反日運動に火をつけたのは、日本の周辺国をすべて敵にして“日米同盟の強化”という属国化の道を進めることに狙いがあった。

 自国の周辺国すべてを敵にするような外交が“亡国の道”であることは歴史を学んだことがある人ならわかることである。

 小泉外交とは対米追随一辺倒の“亡国外交”というべきであり、今後日本は多額の国家予算をアメリカに略奪されることになる。

 こうして北朝鮮のボロミサイル発射騒動は、日本外交のお粗末さを際立たせ、アメリカと北朝鮮の外交の凄みとしたたかさに日本政府が“手玉”に取られたのである。

 日本は本当にアメリカに守ってもらう以外の道はないのだろうか。

 明らかに日本のアジアにおける孤立は作られたものであり、日本は平和主義を貫くには多極外交によって対米自立の必要条件を整えるべきである。

 日本民族が戦後60年以上たって今なお、他国の従属国にあることの民族的屈辱と、日米の支配従属関係の及ぼす搾取・収奪を断固拒絶しなければ真の愛国主義とはいえないのである。

 対米追従一辺倒の“ペテンの外交”が日本民族の誇りを奪っているのだ!