No.61(2006年6月号から)

ロシアとの戦略的関係を構築せよ!

世界の多極化に乗り遅れないために


 現在、急速に世界の戦略関係が変化している。EUは東方へと拡大し、国際通貨としてのユーロ圏を拡大し、アメリカを凌駕する人口と経済規模を持つ“ヨーロッパ合衆国”へと進みつつある。

 ドルとユーロの国際通貨の地位をめぐる対立が激化することは避けられないのである。

 旧ソ連が崩壊し、ロシアは東欧諸国と中央アジアをうしなった。しかし現在のロシアは、国家主義者のプーチンの下で、主要企業を国有化するとともに、原油輸出で巨額の外資を手に入れ、今や“強いロシア”の政策を進め、産業と軍事面で多極化の一角を占めつつある。

 非同盟諸国(発展途上国)は一極支配に反対し、多国間主義を強化して、アメリカ覇権主義に反対する中心的力となっている。

 中国・インド・ブラジルは経済の急成長で多極世界の一角を占めつつある。

 アメリカが中心的に進めた市場経済のグローバル化は急速にアメリカ自身の相対的地位を低下させており、ブッシュ路線(反テロ戦争)は軍事力で中東油田地帯を支配することで一極支配を回復しようとするものである。

 しかしアフガンとイラクの泥沼化で、その企みが破綻に直面するや、アメリカは日米同盟の強化(=日本の属国化)で戦略の建て直しを目指している。しかし戦争によるドルたれ流しによって、ドル支配は崩壊しつつあり、ドル安は避けられず、国際通貨としてのユーロの地位が上昇している。

 アメリカは、日本の軍事的・経済的統合(=支配)で覇権の延命を目指すしかないのである。

 日本の戦略的弱点は、アメリカの握る不安定な中東の石油に依存しすぎていることである。石油の輸入先を拡散することは、日本の対米自立の必要条件を整える上で、重要なことである。

 ロシアはNATOとの中間地帯(東欧)を失い、南部の中央アジアをアメリカに侵食され、東方の国境を接する中国は、今や親米派の指導者達が拝金主義に取り付かれて中華民族主義を強めて領土的野心を強めている。

 ロシアを取りまく周辺情勢は厳しく、しかも資源地帯のシベリア開発には、日本の資金と技術と市場を必要としている。

 日本もロシアと同じように周辺国に敵視されており、中国・北朝鮮・韓国は、日本の対米属国化を容認して、反日運動を強めている。

 日本が戦争勢力である、アメリカに追随して亡国を招く失敗を繰り返さないようにするには、ロシアとの戦略関係を強化し、アメリカとロシアと中国との戦略的バランス外交(=多極外交)を目指すべきである。シベリア開発で両国の利害は一致しており、かつての日ソ不可侵条約締結時とは違って、ロシアとの戦略的利害関係は一致しているのである。

 ロシアのプーチン大統領は6月2日にモスクワ郊外の大統領公邸で共同記者会見し「過去から残された日本とのすべての問題を解決したい。そのための道を模索する」と言明し、北方領土問題解決の方策を探る姿勢を表明したことは重要である。

 ロシア国内では「日本はロシアの死活的なパートナーだ」(クリシエフ高等経済研究所研究部長)との主張も出てきている。ロシア国営「文化チャンネル」の討論番組で同部長は「日本は10年後にはロシアにとって地政学的、かつ戦略的にきわめて重要な存在となる。小さな4島の領有にこだわらず返還すべきだ。日本が同盟国となることがロシアの国益につながる」と力説した。

 日本にとってもロシアの戦略的価値は高まっている。ロシアは反日ではないし、アメリカ一辺倒の外交が在日米軍のために3兆円も負担しなければならないのを見てもわかるとおり、アメリカは日本がアジアで孤立している足元を見ているのである。

 日本がロシアと経済関係を強化して、同盟関係へと進めれば、アメリカにも少しは強い態度を取れるであろう。

 今日本に必要なのは、亡びゆく大国(アメリカ)に追随するのではなく、将来の民族的自立のために必要条件を整えて、戦略的地位を強化していく“多極外交”なのである。

 ロシアのプーチン政権の最近の変化を無視すべきではない。