No.58(2006年3月号から)

日本の国益を損なう恐怖の事実 !!

『拒否できない日本――アメリカの日本改造がすすんでいる』を読んで

関岡 英之 著 文春新書


 「小泉内閣の三年間の間に、日本の銀行の90%はアメリカの金融機関に、製造業の70%、東京のホテルのほとんどが米国資本のものとなっている。流通も食糧も、土木建設業すらも米国資本の傘下に組み入れられ、それどころかマスコミまでアメリカに握られてしまった」と政治評論家の森田実さんは1月25日に出版された『小泉政治全面批判』(日本評論社)のなかで述べられています。

 森田さんは、2004年5月3日にたまたま書店で『拒否できない日本』の新書を見つけられ、関岡氏の著書には日本の国を憂う日本人の魂が込められているような気がしたと述べられ、講演会に招かれたときや自分のホームページでも「この本を読んでください」と訴えられています。

 関岡氏は著書のなかで、1993年の宮澤・クリントン首脳会議で合意されて以来、94年から毎年定期的に両国で相互に提出しあってきた『年次改革要望書』という外交文書の存在を明らかにし、小泉政権の「改革」がこの外交文書に示されているアメリカ政府の要求を忠実に反映したものであると暴露されています。多くの公文書を仔細にに検証されるという緻密な作業の積重ねの結果として、関岡氏は結論を引出されています。

 振り返ってみると、1970年前半以降、米国側から対日貿易赤字の責任は日本にあると、度重なる日本叩きがありました。

関税交渉、繊維、半導体、カラーテレビ、牛肉・オレンジ、自動車輸出自主規制など、まさに日米貿易戦争といわれる時代がありましたが、現在では日米貿易戦争・貿易摩擦という言葉すら聞く事もなくなり、問題はいつの間にか消えてしまった感があります。

当時の米国側の強圧的な態度に『「NO」と言える日本』(石原慎太郎・盛田昭夫、光文社)が刊行され話題になりましたが、いったいどうなったのでしょうか。

 米国の対日赤字は一向に減らないのに、現在、ブッシュ大統領は、日米関係について良好な満足する関係であると述べています。

 1989年の「日米構造協議」以降あたりから米国側は対日政策を見直し変更したのです。

過去の「個別の商品」を採り上げて徹底的に叩き追い詰めていくというやり方から、「日本異質論」を理論的根拠に、経済摩擦の原因が「日本的なるもの」「日本的な制度・不公正な取引慣行」や「閉鎖的な市場」といった日本の社会構造そのものにあると言い出してきました。

 「叫ぶのはやめて、ルールを変えよう」(ジェームズ・ファローズ)という考えのもとに、米国の露骨な内政干渉によりアメリカのルールを強制的に押付け、様々な日本社会の構造的な問題、規制・法制を改革していくことによって日本市場に参入していくというやり方に変わってきたのです。

「日米構造協議」にはじまり、1994年から毎年秋に出されている「年次改革要望書」に基づく建設基準法の改正、商法の大改正や保険業法の改正などの日本改造プログラムの実施によって日本の富が奪われ、中流意識という言葉はとっくに過去のものとなり、ニート、下流社会、格差社会という言葉が生み出され、貯金ゼロの人数が倍になるという貧困化がますます進展しています。

 日本経済がなかなか平成バブル不況から立直ることができないでいるなかで、小泉・竹中政権は「規制をなくした自由な競争」(フリー)「公正な競争と取引」(フェア)「国際的資本移動を前提とした法制度、会計制度の整備と通貨当局の協力強化」(グローバル)などの米国の要求を、日本自らの経済再生のプログラムであるかのように演出し、郵政民営化を実施しました。

大正5年に創設の低所得者でも加入できるセーフティーネットであった120兆円の簡保マネー(カナダのGDPよりも大きい)は、様々な手段を弄して米国の保険会社に吸収されていくのです。

関岡氏は、郵政民営化の本質は「改革派」と「守旧派」の争いではなく「対米迎合派」と「国益擁護派」との争いであったと指摘しています。

郵政民営化に反対し、刺客を送られ落選した自民党の旧通産省出身の小林興起前衆議院議員と旧大蔵省出身の小泉龍司前衆議院議員について、『年次改革要望書』を仔細に検証し、その背後にある米国の国家戦略と、日本の国益を損なう危険性を正確に認識していたからだと述べています(文芸春秋12月)。

そして次なる主戦場は国民皆保険制度である健康保険であると指摘され、米国の手垢にまみれていないこの官営保険である健康保険の規制を緩和し、医療分野への市場開放を迫ってきていると述べられています。国民に与える衝撃は郵政民営化の非ではないと指摘されています。

この本について「今日の日米関係の本質を改めて認識し愕然とさせられた」(石原慎太郎)「すべての日本国民に読んで欲しい」(森田実)、「この驚嘆すべき恐怖の事実になぜだれも気づかなかったのか」(関岡氏)とコメントされているように、日本の将来、小泉・竹中政権の正体を知るうえで必読の書であると思います。