No.58(2006年3月号から)

政権の主導権をめぐる確執

偽メール問題の背景にある“保守大連立構想”


 先の総選挙で自民が大勝したことで小泉内閣にとっての公明党の地位が相対的に低下した。小泉首相が9条改憲に向けて民主党に保守大連立政権樹立を再三呼びかけたのは、教育基本法改正の愛国心教育に反対する公明党を牽制するためであったし、改憲の糸口をつけることで歴史に名前を残したいという“野心”からであった。

 小泉を一貫して支えてきた公明党にすれば保守大連立は、即政権から外れることであり、政権の一角に食い込むことで宗教団体としての創価学会の安泰を確かなものにするという「戦略」の破綻を意味する。

 報道によれば民主党の永田議員に偽メールを渡した人物は、札付きの元記者だそうで、この人物の代理人弁護士が創価学会の弁護士だと言うのだが、これが事実であるなら、偽メールの狙いは“保守大連立潰し”にあったことは間違いない。

 永田議員の処分に対して小泉首相は「除名は死刑宣告と同じ、慎重に」と語り、公明党の幹部が強硬意見であったことも、事が保守大連立がらみであったことを示している。本質は政局の主導権を小泉が握るのか、公明党が握るのかの確執なのである。

 重要法案でたびたび公明党の反対にあって来た小泉首相にとっては、民主党の前原体制を温存することが、公明党対策からも重要であったといえる。

 それにしても民主党のお粗末振りは、あきれるほどで、“裏”も取らずに国会で追求することは、“自爆”と表現されるほどバカバカしいことである。買収資金は証拠の残る銀行振り込みではなく、段ボール箱に現金を入れて運ぶことが常識と言われていることを、元自民党の民主党幹部は知らなかったのであろうか?  耐震強度の偽装問題や米産牛肉問題、ライブドア問題、官製談合、靖国参拝と一方的に批判にさらされていた小泉政権は、民主党のおかげで一転して政局の主導権を回復したのである。

 公明党が陰謀をしかけ、民主党が引っかかり、小泉が得をした、というのが偽メール問題の真相と言えるようだ。

 小泉首相は偽メール問題が片付いた後、参院選に向けて、選挙準備に入ることを指示した。この選挙で過半数を取れば公明党との連立は不要になる、しかし自民党が参院選挙に勝つには公明党の選挙協力がなければ不可能である。

 逆に公明党にすれば、自民党を勝たせないことが政権内で公明党の存在意義を高めることになる。

 民主党執行部が保守大連立へ向けて党内合意を形成できる条件はなく、逆に求心力を失っている。

 議会とは階級間の利害の調整の場なのであるが、その議会で陰謀が展開される局面を迎えていることに注目しなければならない。また小泉の「保守大連合」の構想が自公連立政権の確執を生んでいること、重要法案を成立させたい小泉にすれば、政策の違いのない前原民主党にしっかりしてほしいというのが本音なのである。

 参院選までの焦点は、予算案通過後の重要法案をめぐる連立政権内の調整の行方であり、また沖縄の米軍基地再編と米産牛肉の輸入再開をめぐって、アメリカとの摩擦のゆくえが注目される。またイラクからの自衛隊撤退にアメリカが難色を示しており、対米関係が難しい局面を向かえている。総裁選すなわち“ポスト小泉”をめぐって求心力を低下させている小泉政権は前途多難である。