No.57(2006年2月号から)

さえないブッシュ一般教書演説

破綻に直面するブッシュ戦略の現状を反映


 今年のブッシュ米大統領の一般教書演説は、イラクの泥沼化とパレスチナ選挙でハマスが勝利したように「中東の民主化」戦略が逆にイスラム原理主義勢力の拡大を招くという混迷の中で、また内政面では、ハリケーン被害の巨額な復興費用、高騰するガソリン、国民の批判に直面する公的年金制度の「改革」、こうした外交・内政面の行き詰まりを反映したものとなった。

 ブッシュは「複雑で困難な時代に孤立主義や保護主義に至る道は危険だ」とし、イラクを「反テロ戦争の最前線」と位置づけ、「世界から退却しない」とし「我々は勝利しつつある」と強弁したが、イラクでは武装勢力の攻撃は続き米兵の死者は増え続けている。

 ブッシュは単独行動主義でイラク戦争を始めたくせに、泥沼化するや身勝手にもイラク戦争での勝利には「友人や同盟国の支援が欠かせない」と国際協調的な姿勢を示している。アメリカは消耗と疲弊を恐れているのである。

 大義なき戦争が明確になる中で高まる国内の撤兵圧力に対しては「米兵の削減は可能だろうが、その決定は米軍の指揮官が下すものであり、ワシントンの政治家が下すものでない」と、ブッシュは詭弁で逃げている。

 ブッシュは、ハマスの指導者たちに「イスラエルを承認し、武装解除を行い、テロリズムを拒絶しなければならない」と語ったが、中東和平については触れることができなかった。

 ブッシュは「イランが核兵器を保有することを許してはならない」と語ったが、すでに核を保有している北朝鮮には圧政を問題にしただけであった。

 今年秋の中間選挙を前にして、支持率の回復をめざすブッシュは、演説で「米国の競争力を維持する」と強調した。また「過去5年間の減税で8800億ドルが労働者・投資家・中小企業家・家族の手に残された、彼らはこれを使うことで4年以上も続く経済成長に貢献している」として「恒久減税措置をとるよう」訴えた。

 ブッシュは国民が不満を持つガソリンの高騰、石油会社のボロもうけについては触れずに「石油依存症からの脱却」としてエタノール燃料をつくる技術開発に取り組むとして「クリーンなエネルギー源の研究費を22%増やす」ことで批判が強い石油業界との癒着批判をかわす姿勢を示した。

 以上が一般教書演説の主な内容だが、莫大なイラク戦費がアメリカの財政赤字を深刻化している中で、この戦争の「出口戦略」を示すことが出来なかったことは、パレスチナ和平に触れられなかったことと同様にブッシュの戦略が破綻に直面していることを示している。

 ブッシュの戦争路線による4年間の好景気の恩恵に浴しているのは石油産業と軍需産業だけであり、圧倒的多数の人民は高いガソリンとハリケーン被害で痛めつけられているのである。貧富の格差拡大はアメリカ社会の階級矛盾を激化させている。

 ブッシュが「中国やインドのような新たな競争相手に直面している」として競争力を維持するために先端研究開発を進めると言っても、産業が空洞化している中で技術開発が進むことはない。

 アメリカは国家も個人も借金まみれなのに、他国に国債を押し売りして、消費に熱中している。この間の個人消費を支えた住宅バブルは終局を迎えており、巨大な“双子の赤字”の下でアメリカ経済は重大な局面を迎えつつあり、とても恒久減税で解決する問題ではない。

 しかもアメリカは、ベビーブーマ世代の退職の時期を迎える、医療・社会保障財政は危機を迎える。アメリカ人民が、石油産業と軍需産業をもうけさせるだけのブッシュ政権の“大きなツケ”に直面する時が近づいていると見なければならない。

 ブッシュが戦争路線からの転換なしに、同盟国にイラク戦争への支援を求めても、それは国際的孤立を解決するものとはならず、アメリカの外交的孤立は続くと見なければならない。

 アメリカが「イラクを対テロ戦争の最前線」と位置づけ、イスラエルの核はいいがイスラムに核は持たせない姿勢をつづけるかぎりイスラム原理主義勢力が伸張しつづける。

 “挑発し、テロを口実に侵略する”という、アメリカとイスラエルの侵略路線が、彼らにとってとんでもない強敵を育成しつつある。このブッシュのジレンマと、そこからくる中東地域の混迷は、ブッシュの戦略の破綻が近いことを示している。

 ブッシュ政権は、秋の中間選挙を前にして戦略転換をおこなうことは選挙の敗北を意味するため、現状維持の消耗と疲弊を続けるしかない。アメリカの“双子の赤字”は深刻化し、アメリカの国際的地位の低下はさけられないのである。