No.55(2005年12月号から)

フランス若者の大暴動

グローバル化が生み出す大量失業が原因


 10月末パリ郊外の移民街で起きた若者たちの暴動が、パリから地方都市に拡大し、フランス全土数百ヶ所に広がり学校や病院が次々と襲われ、5000台以上の自動車が放火された。非常事態法が発動され、暴動の長期化でそれが3ヶ月延長された。

 フランスは安価な労働力として旧植民地の北アフリカなどから移民を受け入れている。その数は431万人で総人口の7.4%に達し、その2世3世の外国人が51万人いるが、これらのイスラム系・アフリカ系若者たちが職につくのは差別があって難しく植民地域の失業率は40%に達している。

 パリ郊外の移民地域の若者を、治安責任者のサルコジ内相が「社会の屑」呼ばわりしたことが若者達の怒りを、一層かきたてた。

 報道を見るとその多くが今回の暴動を移民問題・西洋とイスラムの価値観の対立としてとらえ「同化の遅れ」が原因としている。

 フランスは移民に対して同化政策を進めており、昨年秋にはイスラム教徒の女性を対象にした「スカーフ禁止法」に象徴されるフランス的文化と価値観を押し付ける政策を取っている。こうした背景もあって移民政策という観点から報道されているが、それは一つの側面にすぎない。

 今回の暴動の本質は、グローバル化・欧州の統合で人と資本の移動が国境を越えて活発におこなわれるようになったこと、資本は東欧に流れているのに、人は西へと流れている。出稼ぎでポーランドからフランスへ7分の1の賃金の熟練労働者が流入していることが、イスラム系若者たちが職を求めるのを不可能にしている。

 つまりグローバル化にともなう雇用問題が根底に存在している。

 ニューズウイーク誌よれば「欧州大陸諸国の失業者数は実に2000万に達している」という。しかもフランスの場合厳格な就業資格制度や強い労働組合によって手厚い労働者保護法制が逆に若者の就職を困難にしていると報じている。

 日本やアメリカは「労働力の流動化」の政策によって派遣やパート・アルバイト等の不安定雇用という広範な半失業者の層が形成されている。フランスは生涯にわたって雇用が保障されている人と失業者の二極に社会階層が固定化しているのが特徴である。また法定最低賃金が高いことが日本やアメリカのように安価な労働力の階層の出現を制限している。

 フランス企業は東欧への投資に力を入れているので新規雇用がフランス国内では生まれなくなっていることもある。

 フランスは労働組合が強力なので日本のように「福祉国家」路線を捨て、社会保障を削減することもできず、したがって野蛮な資本主義化が、イスラム系移民やアフリカ系移民の失業という現れかたをしているのである。

 フランスにも人種差別があり、アラブ系の名前だと就職も難しいという。貧困と就職差別が不満を高め怒りと憎悪を再生産することになる。

 フランス政府は暴動後移民の規制強化に乗り出している。しかし問題がグローバル化にともなう雇用問題である以上移民の規制強化で解決する問題ではない。

 アメリカやイギリスやフランスは移民という安価な労働力を入れることで経済発展を進めたが、今や各国ともそれが暴動や人種の衝突や犯罪の増加となって社会的負担を重いものとしている。

 グローバル化は企業競争を激化させ、安い労働力を求めて資本は国外へ投下され、産業の空洞化が進み、出稼ぎの安価な労働力の海外からの流入で失業者は急増する。規制緩和、民営化、自由化によるグローバル化の政策での勝者は大企業と大金持ちだけなのである。

 日本においても中国から研修名目の労働力が流入し、ペルーなどの日系人労働力も流入している。

 経団連は外国人労働力の解禁を主張している。日本には300万人も失業者がいるのに彼らは目先の利益しか見ないで将来の社会的負担を重いものにしようとしている。

 グローバル化が生み出す野蛮な資本主義化の行きつく先は、失業者の暴動と反乱であることが今回のフランスの暴動で明白となった。フランスの暴動は明日の日本の姿なのである。

 グローバル化は野蛮な資本主義化をうながし、結果として一握りの勝者と大多数の敗者を生み出す、したがってそれは階級対立を激化させずにはおかないのである。