No.55(2005年12月号から)

マンションの耐震強度偽装問題

民営化が招く利益第一の無責任


 安さと広さを売りに急成長したマンション建設・販売のヒューザー、工期の短縮とコスト削減を売りにした木村建設、ろくに検査もしていなかった民間検査機関イーホームズ、日本ERI、更には平成設計とその下請けである耐震強度偽造の姉歯建築士等と黒幕と呼ばれる「総合経営研究所」、「民間でできることは民間で」と建設確認検査機関を民営化した政府・自民党、これら無責任な連中が引き起こしたのが今回の騒動である。

 その結果多くの欠陥マンションやホテルであり、多くの住民が立退きを迫られ、ホテルは営業休止に追い込まれた。

 報道によれば、こうした欠陥「姉歯物件」は206件にのぼり、構造計算書を偽造していた物件は12月6日現在で57件と増え続けている。

 倒壊の恐れのあるビルが多数存在していることが人々の恐怖をかきたてている。

 国会でのこの問題についての参考人質疑では、醜い責任逃れと、責任の押付け合いが展開された。

 自民党幹部は「悪者探しに終始するとマンション業界はバタバタとつぶれる」(武部自民党幹事長)と主張して責任追及に反対した。建物の強度偽装が“氷山の一角”で、ほかにも多くあるのではないか?との疑惑を強めている。

 責任の所在ははっきりしている。

 国民の安全を無視した民営化の名で建設基準法を改悪して、利潤追求を優先する企業に建設確認検査を委ねた政府と、それを悪用した先に名前を揚げた企業主にある。これらの一企業の偽造倒産による逃亡を許してはならず、彼らの全責任で建替えさせるべきである。

 グローバル化による自由競争の激化は、安全無視で利潤のためなら何でもやる無責任な経営者を数多く生み出している。家やマンションの買い控えが起こるのは避けられない。

 107人の乗客を死なせたJR西日本の尼崎事故も民営化が原因の根底に存在している。利潤追求で安全が犠牲にされたことになる。

 このことは初めから心配されていたことであった。事故や事件は起こるべくして起きているのでる。

 民間企業がリストラを展開し、労働者の首を切り、いじめで退職に追込み、過労死や過労自殺や工場災害等を生み出していることと、背景には同一の問題が存在している。それは野蛮な資本主義化の産物である。

 民営化、規制緩和、自由化というアメリカに押付けられた政策(ワシントンコンセンサス)を、小泉首相が忠実に実践した結果、日本社会に様々なゆがみやひずみを生み出していることに気づくべきである。

 「悪者探しはやめよ」という自民党幹事長の主張をわれわれは認めることができない。全ての当事者の責任だけでなく事件を生み出した政治責任を明確にすべきである。武部は政治責任に追求が及ぶことを恐れて悪者探しをやめさせようとしているのだ。

 阪神大震災では多くの手抜き工事のビルが倒壊した。しかも特定のゼネコンが建設したビルだけが多く倒壊したが、この企業の刑事責任は追及されたという話は聞かない。

 企業の責任だけはいつも曖昧に処理されるのがこの国の現状なのである。

 ヒューザーや木村建設やイーホームズや姉歯建築士の刑事責任の追及は当然であり、それだけでなく民営化しながらその検査機関の検査・監督をおこなっていた行政の責任も追及されるべきであり、被害住民に対して、無条件に再建保障されるべきであり、同時にこのような耐震強度偽造による手抜き工事が“氷山の一角”でないことを明らかにするための、全てのビル・マンションの再検査を行政の責任で行うべきである。

 無責任な民営化を進めておいて会見で「ひどい話ですね〜」と第3者的に答える小泉は、自分の政治責任については考えてもいないのである。JR西の尼崎事故や耐震偽造の根底にあるのは「小さな政府」の政策は誤りであるということである。

 「耐震偽装は迷惑だが“小さな政府”の政策は正しい」という政府やマスコミの主張は詭弁である。

 その政策の成否は結果によって検証されるべきである。同様に郵政民営化で庶民のなけなしの貯金が(投機=バクチ)につぎ込まれることを許すべきではない。

 郵政民営化会社のトップに就任が決まった西川善文(三井住友銀行特別顧問)は、「郵貯と簡保の廃止」を主張していたのであるが、その西川が「利益のためにリスクがとれるかどうかが公社と民営会社の違い」と述べて国民の金融資産を投機に注ぎ込む意志を表明している。

 耐震強度偽装問題が示した民営化政策の誤りを正さねば、国民のなけなしの貯金が不良債権化し、西川の持論である「郵貯と簡保の廃止」もしくは倒産へと向かうことは避けられない。

 我々は小泉政権の民営化が招く利益第一の無責任を断固糾弾するものである!